- 作成日:2023.09.11
- 更新日:2023.10.19
FP&Aとは|転職で求められるスキル、キャリアパスについて解説
事務系職種の中には、経理、財務といった会計やお金に関連する職種がありますが、それらとは区別される、FP&Aという職種があります。
FP&Aは日本の会社にはあまりなく、外資系企業に多く見られる職種です。
この記事では、FP&Aの仕事内容、求められるスキル、キャリアパスなどを詳しく解説します。FP&Aへの転職をお考えの方には、ぜひ参考にしてください。
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FP&Aとは
FP&Aという言葉を初めて聞く方も多いと思います。経理や財務と違い、日本語名称でないからです。
FP&Aは、Financial Planning & Analysisの略称です。
名称の大まかな意味は、Financial、つまり売上やコスト、経費、利益、利益率などの会計的な数値指標に関連して、PlanningしてAnalysisする、つまり予算を決め、結果の予測をし、実際の結果を確認して評価し、結果の原因分析をする、という仕事です。
FP&Aの仕事は、その対象が事業部門であれば、事業部長に対して、会社全体を対象とすれば、社長に対して、数値指標を分析評価した結果やアドバイスを伝えることで、事業部長や社長の経営判断、意思決定のサポートをする事です。
FP&Aは外資系企業に多くある職種で、日本企業では、経営企画や経理、財務といった職種の中の一部業務のような形でなされる、またはまったく存在しないことも多いです。日本企業のグローバル化に伴い、今後、需要が増えていく職種になります。
FP&Aの仕事内容
FP&Aの具体的な仕事としては、おおまかに次のようなものがあります。
- 過去の業績分析(Actual Analysis)
- 将来の業績予測(Forecasting)
- 業績の締め(Actual Closing)
- 中長期業績計画(Budgeting)
これらの前提となる管理会計をまず解説し、それぞれの業務について解説していきます。そして最後にFP&Aと似た職種の経営企画についても解説します。
管理会計と財務会計の違い
財務会計とは、社外の利害関係者向けに決められた条件のもとに会社の財務状況を報告するための会計になります。通常であれば、損益計算書や貸借対照表などを1年に一度、または半年に一度などに作成して開示するというもので、決められた会計基準に基づいて、決められたフォームで作成します。これはあくまで過去の業績を示すものであり、経理が作成します。
一方、FP&Aの業務の元になる管理会計とは、経営者が会社を経営するために必要な情報をまとめた会計と言えます。あくまで社内向けの資料であり、どのような形式で作成してもかまいません。社内のニーズにより、対象項目、対象の期間、セグメントの種類など、任意に設定できます。対象項目の単なる過去の業績だけでなく、将来の業績予測、目標値、目標値との乖離など、将来のための経営判断に有用な情報が網羅され、FP&Aが作成します。同じ売上高であっても、財務会計で認識できる過去の業績を管理会計では認識しつつ、その分析や将来予測など、より有用な情報に作成される点で、財務会計と管理会計は関連しつつ、異なるものと理解できます。
過去の業績分析(Actual Analysis)
FP&Aでは、まず会社業績の現状把握として、過去、直近の業績の把握を行います。売上高であれば、過去の1年分の業績は前年、過去と比較して、どう増減しているのか、月ごとに見たら、どう増減しているのか、セグメントごと、お客様業界別では、どの業界が伸びているのか、マーケットの中では、相対的にどう評価されるのか、など把握します。社内の情報データベースの明細情報をまとめたり、期間やセグメントに分割したりして、表計算ソフトにまとめたり、システム上で作業して、アウトプットを抽出します。
将来の業績予測(Forecasting)
直近の業績を把握した後、今後、どのようになるのかが、経営者にとっては重要です。将来の予測の答えはシステムにはありません。そこでFP&Aは、社内の関連部署にヒアリングします。売上高であれば、営業部門に営業活動状況、どんなお客様にいくらの売上をいつまでに契約できそうか、利益率であれば、支払、経費の管理部門にいつ経費の支払いが発生するのか、といった情報を把握します。もちろん、過去からの流れで増減を雰囲気で理解することもできますが、より正確に把握するために、生の情報を得て、裏付け確認をします。
また、単に、今のまま、特別なことをしない状況で、どのくらいの数字になりそうか、を把握するだけでは、不十分です。増えるのか、減るのかの増減、増減率だけではなく、会社には目標数値があります。その達成に向けて、会社としてどうするか、が大事です。そのためには、今のままでの把握した数値と目標値との乖離を把握します。その乖離をどうするのか、どのような追加施策を講じるのか、責任担当部門に作成依頼します。そうして、少しでも目標達成を目指す流れを作り、経営者にその経営方針でいいのか、定期的に確認させるのがFP&Aの業務の1つです。
業績の締め(Actual Closing)
通常、経理の財務会計の締めは毎月行われますが、管理会計においても、通常、業績の締めは毎月行います。管理会計固有の情報については、その使用システムに対して、実績情報を足しこむことで締めになりますが、財務会計と重なる情報については、経理とFP&Aの間で整合性、認識の一致が必要になります。
例えば、売上高においては、ある契約について、その契約金額を一時的に全額計上するのか、ある期間で月ごとに按分して計上するのか、取り扱いに判断が求められることがあります(Revenue Recognition)。そうした場合にどういう理由でどちらの売上基準を採用するのか、両者ですり合わせます。
また経理は全社の情報を元に財務会計をまとめますから、システム上の情報をなるべく生かして手作業少なく締日までに作業を完了させようとします。一方、FP&Aは、会社目標に対して、業績をよりよくする使命を持ちますから、業績の情報において、より正確に、より多く業績を上げられないのかを考え、経理では認識できない情報を見つけた場合には、経理と確認し、経理の締めに反映させることも行います。
それらを総称して、業績の締め、Actual Closingといいます。通常、業績の締め、業績分析、業績予測の3つセットで、順に毎月、1ヶ月サイクルで行い、月初の締め期間から業績予測の業務が終わるまで、FP&Aの業務は忙しいと言われます。
中長期業績計画(Budgeting)
前項までの3つの業務とは異なり、FP&Aには中長期業績計画(Budgeting)の業務があります。会社経営では、短期的に毎月業績を確認するだけではなく、中長期的にどうなるのか、どう経営していくのか、まず来年どうするのか、考える必要があります。経営者が考える将来の業績目標に従って、FP&Aは管理会計情報の目標値を作成します。
まず今年度の業績予測を元に翌年度以降の業績予測を作成し、経営者の目指したい目標とすり合わせ、整合性を確認します。売上高だけではなく、利益率の計画もあれば、営業状況だけではなく、経費についても確認しないといけません。乖離があれば、どのような理由、施策で乖離を埋められるのか、経営者と確認し、最終的には経営者の経営判断で、会社の中長期の業績計画を作成します。
翌年度の業績計画については、さらにその業績を担う責任部門に対して、業績目標、年間予算として配賦しないといけません。そのため、責任部門ごとに業績目標を分割して用意するのも通常、FP&Aで行います。
FP&Aと経営企画の違い
経営企画は、通常、社長や役員直下に置かれ、会社の中長期的な経営の視点で、会社全体の経営施策を推進していく役割を担います。中長期の成長戦略を考え、具体的な施策を考えます。マーケティング戦略や、人材や資金などの経営資源の再配分を考え、関連部門を巻き込み、より実務的に必要な施策を主導していく役割を担っていることが多いです。
一方、FP&Aはファイナンス組織として、通常、CFOの下に置かれます。FP&Aの業務は経営判断に近いため、経営企画の要素も持ち合わせていますが、経営企画のような全社を網羅する主体的役割ではなく、会計、ファイナンスのプロフェッショナルの一員としての位置づけで、管理会計の観点、数値を中心にした専門的な経営判断のアドバイザーとしての役割を担っていると言えます。
FP&Aの年収
FP&Aの年収は、その業界や会社ごと、その人のキャリアやスキルにより異なり、一律ではありません。
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FP&Aに求められるスキル・経験
FP&Aの業務には、次のようなスキル・経験が求められます。
- 管理会計に関する知識、関連する業務経験
- データ分析力
- ITスキル
- コミュニケーション能力
- プレゼンテーション能力
管理会計に関する知識、関連する業務経験
管理会計を元に業務を行うので、数字が嫌いでないことは大前提になりますが、まずは管理会計の知識が必要になります。項目の意味合い、数字の計上の仕方など、を知る必要があります。その対象項目は会社ごとに異なりますが、財務会計と重なる要素も多く、経理の実務経験はスキルとして役立ちますし、営業や業務など、契約金額、経費の直接処理を担う経験も数字把握、数字の理解のためにも重要な経験です。
データ分析力
管理会計における数値をデータとして分析するスキルが必要です。状況の良し悪しを伝えるために、適切な手法を選ぶことも重要です。前年同期比較、対目標比較、セグメントごとに分解して強弱を示すなど、的確に状況を把握し、示すための分析力が必要です。
ITスキル
管理会計では、その元となるデータに直接アクセスして、抽出し、自分でまとめる場面も多数あります。表計算ソフトで大量のデータを加工、まとめるスキルも必要ですし、それ以前にデータの存在するデータベースにアクセスし、必要な情報を必要な形で抽出するスキルも必要な場合もあります。総じて、限られた時間で的確な回答を求められるので、大量データを効率的にさばけるITスキルが必要になると言えます。
コミュニケーション能力
業績把握において、その理由の把握のために明細を確認すると、通常のデータとは異なるもの、異常値に見えるものは、その担当者に確認する必要があります。また業績予測においても、例えば、営業状況を把握しないといけません。そうした手元の数値だけでは把握できない、必要な情報について、関係者に確認するケースが多々あります。どんな状況において何を知りたいのか、適切に確認するためには、コミュニケーション能力が不可欠です。
プレゼンテーション能力
FP&Aは通常、社長や事業部長など、経営者に報告することが多く、限られた時間、タイミングで正確に効率よく、適切に情報を伝え、経営判断を得ないといけません。そのためには、適切な量のわかりやすい資料を作成し、その場で適切な時間配分のもと、FP&Aからの指摘、経営者との議論、経営判断としての結論を導くプレゼンテーション能力が必要になります。
FP&Aの仕事に役立つ資格
FP&Aは管理会計を元にした職種であり、その対象項目が各社により、それぞれ異なることから、スキルに直結するとは限りませんが、役立つと言える資格はいくつかあります。例えば、MBAやUSCPAなどです。FP&Aが外資系に多いということもあり、外資系企業に勤務する場合には、英語ができる前提ですが、MBAやUSCPAでは、会計に関する知識、会計を元にした経営の知識を持つという資格により、管理会計のための基本知識を持ち合わせていると評価されます。日本企業であれば、同様に公認会計士の資格は評価されます。
FP&Aのキャリアパス
FP&Aの組織は経理と並列してCFO傘下に置かれることが多いです。大きな会社になると、CFOの下にFP&AやFinance全体を統括するFinance Directorや経理を統括するFinance Controllerが置かれたりします。
FP&Aの担当者、Analystからキャリアをスタートすると、大きな会社では、担当分野をいくつか経験し、その中でも損益計算書全体を束ねるConsolidationが担当者としての頂点で、その後、FP&A Manager、Finance Director、CFOなどとキャリアアップを目指すことができます。ファイナンス組織の小さい会社では、Finance Directorがファイナンスのトップの組織もあります。
また会社によっては、ファイナンスの組織自体が経理オペレーションに重点が置かれ、CFOの下がControllerになっていて、FP&Aの経験だけでなく、経理の経験を求められる組織もあります。ご自身のこれまでの経験を考慮し、転職先のファイナンス組織を把握した上で転職希望先を選択しましょう。
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