経理の転職市場の最新動向とSaaS・DXの影響
- 更新日:2025.08.22
近年、クラウド会計やRPAなどのSaaS導入が進むことで、経理業務は大きな変革期を迎えています。
単なる記帳・決算作業だけでなく、数値分析や経営企画への貢献が求められるなど、転職市場でも経理人材の需要は高まるばかり。
本記事では、経理の最新動向や求められるスキル、転職成功のポイントを解説します。
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INDEX
経理職の役割と近年の変化
企業活動における経理の重要性
経理は企業において「お金」の流れを正確に管理するための重要な役割を担っています。
仕訳、伝票処理、月次・四半期・年次決算、税務申告など、幅広い業務領域をカバーするため、経理人材には高い専門知識と正確性が求められます。
また、近年では会計や税務の枠を超え、経営企画や財務分析といった経営全体に関わる領域まで期待されるケースが増加傾向にあります。
経理業務を取り巻く環境変化
国際化・グローバル化
多くの日本企業が海外展開を進め、海外子会社の連結決算やIFRS(国際財務報告基準)への対応が求められるようになっています。
そのため、英語力や海外の会計知識、現地税制に関する知見などが経理担当者にも必要となり、従来の経理職以上に幅広い知識が重視されるようになりました。
IT化・DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
昨今の企業ではデータドリブンな経営がキーワードとなり、経理部門においても会計システムや経費精算システム、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールなどの導入が急速に進んでいます。
加えて、クラウド会計サービス(SaaS)の普及により、「経理=手作業の多い仕事」というイメージが変化し、より生産性・戦略性が求められる仕事へと進化しています。
経営に対する貢献度の向上
決算処理や税務申告などのルーチン業務をこなしつつ、経営指標や財務データの分析をもとに経営層へ助言を行う「戦略的経理」の役割が強まっています。
単なる会計知識だけでなく、財務諸表から課題を抽出し、改善策を提案できるコンサルティング能力も経理人材に求められるようになってきました。
経理職の転職市場と需要動向
経理人材の転職市場
経理職は景気に左右されにくい傾向があり、企業にとっては安定的に需要がある職種と言えます。
特に中堅・中小企業では、経理部門の人手不足や業務効率化を推進するための即戦力となる人材を常に求めているケースが多く、転職市場での需要は引き続き高水準です。
一方、上場企業や外資系企業、IPO準備中のベンチャーなどでは、高度な専門知識や多様な業務経験、語学力を備えた人材を優遇する傾向があります。
連結決算や開示資料作成、英語によるレポーティングといったスキルを持つ人材は、非常に重宝されるため、給与水準やポジションの面で好条件が期待できます。
転職の際に評価されるポイント
- 経理実務経験の範囲と年数
月次・四半期・年次決算、原価計算、連結決算、税務申告など、どの業務をどの程度の規模で経験しているかが重要視されます。 - 保有資格や知識
日商簿記2級以上は転職市場での大きなアドバンテージです。さらに、税理士試験科目の合格、USCPA、IFRS対応の知識などがあれば、専門性が一段と高く評価されます。 - ITスキル・システムリテラシー
ERP(Enterprise Resource Planning)やクラウド会計ソフト、RPAツールの運用経験は、近年特に高い評価を得られるポイントです。Excel上級者(マクロ、VBA)やBIツール(Tableau、Power BIなど)の活用経験もプラスになります。 - コミュニケーション能力・マネジメント経験
経理部門内でのチームマネジメントや他部署との折衝・調整経験がある人は、転職市場で重宝されます。特に管理職候補として採用される場合、部下の指導や組織運営のスキルが問われます。
経理SaaS(クラウド会計)の普及と経理業務へのインパクト
経理SaaS(クラウド会計)とは
経理SaaS(クラウド会計サービス)とは、インターネットを通じて提供される会計ソフトウェアを指します。代表的なサービスとしては、freee、マネーフォワード クラウド、弥生会計オンラインなどが挙げられます。これらのサービスは、社内サーバーへのインストールを必要とせず、常に最新バージョンをクラウド上で利用できるというメリットがあります。
■ 主な特徴
- 自動仕訳機能:銀行口座やクレジットカード明細との連携により、仕訳を自動で行う機能を持つ。
- リアルタイム性:インターネットさえあれば場所を問わずにアクセスでき、常に最新データを確認可能。
- コラボレーション:複数の担当者や税理士が同時に同じデータを参照・編集できる。
クラウド会計がもたらす業務効率化
クラウド会計の導入により、従来は手作業で行っていた伝票起票や仕訳登録の手間が大幅に削減されます。銀行口座やクレジットカード明細を自動で取り込むことで、入力ミスのリスクも下がり、より正確かつ迅速な記帳が可能となります。加えて、請求書発行や経費精算などともシームレスに連携できるケースも多く、経理部門全体の業務負担軽減につながります。
RPA・AI活用との組み合わせ
RPA(Robotic Process Automation) や AI(人工知能) との連携が進むことで、定型的なチェックやデータ入力など、人が行う必要のない単純作業が自動化される動きが加速しています。具体的には、社内システムから請求書データを読み取り、自動で仕訳を起こしたり、支払いまで一貫管理したりする仕組みを構築する企業も増えています。
これらのテクノロジーを活用することで、経理担当者はルーチンワークに費やす時間を減らし、財務分析や予算管理など、付加価値の高い業務に注力する方向にシフトしていくことが期待されています。
SaaS導入が経理人材に与える具体的な影響
求められるスキルセットの変化
従来の「経理=簿記知識+手作業による正確性」のみならず、ITリテラシーや業務改善スキルが求められるようになっています。
以下は具体的な例です。
- システム導入・運用スキル
- クラウド会計ソフトの設定、操作、運用フローの設計
- データ連携や権限管理に関する知識
- 業務フローの最適化
- 現状の経理プロセスを分析し、RPAなどの自動化ツールを組み合わせた効率的なフローを構築
- 新しい会計基準や税制改正などに柔軟に対応する仕組みの検討
- データ分析・財務指標の活用
- クラウド会計上に蓄積されるデータを活用し、経営指標やKPIを分析
- 結果をレポーティングし、経営戦略の立案に貢献
経理職の付加価値向上
定型的な記帳や各種書類作成の大部分がシステムによって自動化される中で、経理担当者が果たす役割は戦略性やコミュニケーション能力、問題解決力へと比重が移りつつあります。
たとえば、月次決算の早期化により、役員会議などのタイミングで最新の経営数値を提供できれば、経営判断をサポートする存在として存在感を発揮できます。
また、クラウド会計や周辺システムを横断的に理解することで、社内のIT部門や外部のシステムベンダー、税理士などと連携しながら、社内DXの推進役となることも可能です。
キャリアパスの多様化
SaaSやDXの進展によって、経理職のキャリアパスはさらに多様化しています。
以下のような道が考えられます。
- 経理スペシャリスト
連結決算や国際会計基準対応など、より高度な会計・税務スキルを磨く。税理士資格やUSCPAなどを取得し、専門家としての地位を確立。 - 経営企画・財務部門へ進出
経理で培った数値管理能力や分析力を活かして、経営企画や財務戦略を担う部門へ移行。M&Aや資金調達のプロジェクトに関わる機会も。 - DX推進・システム導入コンサルタント
経理業務のデジタル化を社内外で推進し、クラウド会計やRPAを活用した業務改善の専門家になる。ITコンサルティングファームで活躍するケースも増加中。
経理職の転職で押さえるべきポイント
自己分析とキャリアビジョンの明確化
転職活動を始めるにあたっては、まず以下の項目を整理しましょう。
- 転職理由
- 給与アップ、環境改善、さらなるスキルアップなど、明確な動機を言語化する。なぜ転職したいかは、転職先を選ぶうえでも最も大切です。
- 現在のスキルセットと強み
- 簿記資格、実務経験領域、システムリテラシー、語学力などをリストアップ。
- 将来のキャリア像
- スペシャリストとして極めたいのか、経営企画やDX推進役として成長したいのか、明確に方向性を定める。
求人情報と企業研究
経理職の求人票には、求められる具体的な業務範囲や資格条件が記載されています。
たとえば「上場企業での開示資料作成経験必須」「税務申告書の作成経験歓迎」「クラウド会計の運用経験者優遇」など。これらの要件と自身の経験・スキルを照合し、自分の強みをどのようにアピールできるか考えることが重要です。
また、応募前に企業の財務諸表やIR情報を確認し、その企業のビジネスモデルや強み・弱みを把握するようにしましょう。財務健全性や今後の成長性を見極めることは、長期的なキャリア形成にも大きく影響します。
職務経歴書と面接準備
職務経歴書のポイント
- 数字や具体例で実績を記載
「月次決算を一人で担当し、決算早期化に貢献」「RPA導入プロジェクトで〇〇%の工数削減を実現」など、定量的な成果を盛り込みましょう。 - システムやツールの活用経験を明確化
使用していたクラウド会計ソフト、ERP、BIツールなどの名称と、具体的な業務内容(債権管理や在庫管理、レポート作成など)を記載すると、企業にとってイメージしやすくなります。
面接でのアピールポイント
- 専門知識・実務経験
- 仕訳や決算処理、連結会計など、担当してきた業務をどのように行い、どんな成果を出したか具体的に述べる。
- 問題解決力・コミュニケーション力
- 他部署や外部の税理士、公認会計士と連携して問題解決にあたった事例を挙げ、実践的なスキルをアピール。
- SaaSやDXに対する理解度
- クラウド会計やRPAなどをどのように導入・運用し、業務改善に活かしたか。学びたい・活用したい姿勢も重要。
転職エージェントの活用
経理・財務分野に特化した転職エージェントを活用することで、自分では探しきれない非公開求人や専門性の高いポジションを紹介してもらえる可能性があります。
また、職務経歴書の添削や面接対策など、プロの目線でアドバイスを受けられる点も大きなメリットです。
参考:経理・財務専門の転職エージェント「アガルートキャリア」
転職後のキャリアアップと継続学習
さらなる資格取得・専門性の強化
転職後は、実務と並行して資格取得やセミナー、オンライン講座などを通じて専門知識を深めることがキャリアアップに繋がります。
具体的には以下のような資格・知識がキャリアアップに有効です。
- 日商簿記1級
日本国内での会計知識の最高峰とされ、財務会計や管理会計の深い理解を示すことができる。 - 税理士試験(科目合格)
法人税、消費税、所得税など実務に直結する科目を合格すれば、税務の専門家としての評価が高まる。 - USCPA(米国公認会計士)
グローバル企業や外資系企業への転職、海外子会社管理を視野に入れる際に強みとなる。 - IFRS関連の知識
国際会計基準を導入している企業や連結範囲がグローバルな企業では、IFRS対応経験が重宝される。
マネジメントや関連領域へのチャレンジ
経理の実務経験を積んだ後は、チームリーダーや管理職としてメンバー育成・組織運営に関わることも一つのキャリアパスです。
また、財務分析や経営企画へステップアップすることで、より戦略的な役割を担うことができます。
最近では、経理とITの両方に精通する人材が特に注目されており、ERP導入プロジェクトのリーダーや社内システム改善のPMO(プロジェクト管理オフィス)を務めるケースも増えています。
幅広いスキルセットを身につけるほど、キャリアの選択肢は広がるでしょう。
業界の特徴を理解した上での専門化
- 製造業の経理
原価計算や在庫管理が重要。原材料のコストや工場別のコスト分析に強い人材は製造業で高く評価される。 - 商社の経理
輸出入や為替リスク管理など、国際取引に精通していることがアドバンテージ。 - IT・ベンチャー企業の経理
IPO準備やスタートアップ特有のスピード感に対応し、資本政策や資金繰りを柔軟にサポートする能力が求められる。 - 外資系企業の経理
US GAAPやIFRSへの対応、英語によるレポーティング、海外拠点との連携などが日常的に発生。
自分が興味のある業界・業種を深掘りし、その分野の専門家としての地位を確立することもキャリアアップの大きな鍵となります。
経理SaaS時代を見据えた転職成功のためのヒント
- 常に最新のツールやシステム情報をキャッチアップ
クラウド会計、RPA、AIに関する情報を定期的に収集し、導入事例や機能アップデートを学びましょう。転職面接では、「具体的にどのように業務に活用できるか」「改善の余地は何か」を語れると強いです。 - 実務経験+αを意識してポートフォリオ化
数字・成果が見える形でまとめ、「どのような課題に対して、どんなソリューションを提供したか」を整理します。RPA導入の成功事例やクラウド会計導入時のプロジェクトリーダーとしての実績などは大きな強みになります。 - ネットワーキングと情報共有の重要性
経理や会計に特化したコミュニティに参加し、他社事例や最新技術の情報を交換することは、常に最前線の知識を得る手段として非常に有効です。SNSや勉強会、セミナーなどを積極的に活用すると良いでしょう。 - 自己研鑽を継続し、学習意欲をアピール
テクノロジーは日進月歩で進化します。学び続ける姿勢は企業からも高く評価され、長期的なキャリア形成につながります。
まとめ
経理職は企業において欠かせない存在でありながら、近年のSaaSやDXの進展によって業務内容や求められるスキルセットが大きく変化しています。
単に数字を処理するだけでなく、クラウド会計やRPAを活用した業務効率化、データ分析からの経営支援など、より付加価値の高い業務が求められる時代となりました。
- 経理SaaS(クラウド会計)の普及
従来の手作業中心のプロセスが自動化され、経理担当者は戦略的業務へシフト可能に。 - RPA・AIとの連携
定型作業を効率化し、コンサルティング的な役割や経営企画との連携機会が増大。 - 必要となるスキルの変化
簿記や会計・税務の専門知識に加え、ITリテラシー、システム運用スキル、分析力、コミュニケーション力が不可欠。 - 転職市場での評価ポイント
実務経験の幅・深さ、保有資格、システム活用の実績、英語力、マネジメント能力など。 - キャリアパスの多様化
経理スペシャリスト、マネジメント、経営企画、ITコンサルタントなど、複数の道が開かれている。
こうした背景を踏まえ、経理職として転職を検討している方は自分自身のキャリアビジョンを明確にし、求められる新しいスキルや専門性を高める学習を続けることが成功への近道となります。自社が目指す方向性や業界のトレンドを理解しながら、クラウド会計やRPAなどのテクノロジーを積極的に取り入れていく姿勢が評価されるでしょう。
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この記事の監修者
経理を主軸とした管理部門の方のキャリア支援を専門としており、特に伝統的な日系大手企業への転職に強みを持つ。その他にも国内外の会計事務所や、メーカー、商社、金融、IT、医薬ヘルスケア、消費財等々、多岐に渡る業界の企業との深いコネクションを有しており、会社規模もスタートアップから上場企業まで幅広く対応。
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