
トップに訊く
あらゆるフェーズのベンチャー・スタートアップを支援するAZX Professionals Group
AZX Professionals group
マネージングパートナー COO
菅原 稔
今回は、スタートアップやベンチャーを中心に、法務・税務・会計・労務・特許など幅広い領域でサービスを提供しているAZX Professionals Groupにうかがい、インタビューを実施しました。
前半ではマネージングパートナー COOの菅原先生より、グループの特色や業務の内容、今後の展望などについてお話をお聞きしました。転職をご検討中の弁護士・法務関係の方、またAZX Professionals Groupにご興味のある方はぜひご覧ください。
※インタビュー内容は取材当時のものです。
菅原弁護士の自己紹介
自己紹介をお願いします。
AZX Professionals Group(以下、AZX)マネージングパートナーCOOを務める菅原と申します。弁護士としては今年で13年目、修習期は65期です。
東北大学法学部を卒業後、一橋大学のロースクールに進学し、新卒でAZXに入所しました。アソシエイトとしてキャリアを積み、4年目にベンチャーキャピタルへ出向、その後6年目でパートナーに就任し、現在はマネージングパートナーCOOとして事務所の経営を担当しています。
AZX Professionals Groupの概要

AZX マネージングパートナー COO 菅原 稔様
AZX総合法律事務所が含まれている、AZX全体の概要を教えてください。
AZXには、法務・税務会計・労務・特許の4つの事務所があり、これらで一つのグループを構成しています。4事務所が一つにまとまっているのは、ベンチャーやスタートアップの皆様にワンストップでサービスを提供するための形態です。
多くのベンチャー、スタートアップは弁護士と税理士などをそれぞれ別の事務所に相談しているケースが多々あります。
そのような企業では、ある案件について弁護士に尋ねると「これは税理士の担当だから」と言われ、税理士に尋ねると「この部分は弁護士の担当だから」とまた戻され……とたらいまわしになってしまうこともあります。
その点、AZXであればグループ内にすべての専門家がそろっています。当グループに依頼していただければ「これはどの専門家の担当だろうか」と悩んだり、専門家間でボールの投げ合いをしたりすることなく、スムーズなサービス提供が可能です。
当事務所の大きな特徴の一つが、「ワンストップファーム」を掲げている点です。他の法律事務所にも税理士や社労士が所属するケースはありますが、ビルや場所が分かれていることが多いと思います。
一方、当事務所は同じ半蔵門のオフィスの同一フロアにすべての機能が集まっているので、たとえば税務的に不明な点があれば、すぐに「この件は税務上どうでしょうか」と確認できる環境です。弁護士にとっても非常に助かる仕組みだと思っています。
新卒でAZXに入所した理由
菅原先生は現在マネージングパートナーCOOを務めていらっしゃいますが、AZXには新卒で入所されたのでしょうか。
はい、新卒で入所しました。
なぜ新卒で入所を決めたのか、お聞かせいただけますか。
私は大学生の頃から、ベンチャーで経営者の方々と一緒に仕事をすることに興味がありました。弁護士になるよりも先に「起業家の皆さんと働くにはどうすればいいか」を考えていました。
今でこそ弁護士かつ起業家の方もいますが、当時はあまり考えられない道でした。起業家のマインドを理解できる弁護士は価値があると考えていたので、弁護士になれば長く彼らと仕事ができそうだと考えたんです。
当時ベンチャー支援を行う法律事務所は非常に少なく、AZXともうひとつかふたつほどしかありませんでした。その中で、2001年から長くベンチャー支援を続ける当事務所を選んだというわけです。
2001年は「スタートアップ」という言葉すら浸透していなかった頃ですが、AZXはスタートアップ支援に相当早くから取り組んでいたのですね。
当事務所は2001年に代表の後藤が、長島・大野・常松法律事務所を退所して立ち上げた事務所です。
当時、大手事務所は料金体系などの面からベンチャーやスタートアップが利用しづらい環境でした。後藤はそれに対応するため独立して事務所を設立しました。当時はかなり珍しい存在でしたね。
菅原先生のご志向にもかなり合致する事もあり、AZXに入所されたのですね。
そうですね、ほかに選択肢が少なかったという面もありましたが(笑)。
当初は企業の法務部でM&Aなどを担当することも考え、インハウスの就職活動をしていた時期もありました。ただ最終的には、AZXへの入所を決意しました。
自らベンチャーキャピタルへの出向を希望した
入所後しばらくして株式会社ジャフコ(現 ジャフコグループ株式会社)に出向されたそうですが、どのような経緯で出向が決まったのでしょうか。
入所当時、ベンチャーキャピタルという言葉はあまり一般的でなかったと思います。私自身も「いわゆるハゲタカファンドとの違いがわからない」といったレベルでした。
1~3年目まで事務所で業務を経験しているうちに、ベンチャーキャピタルは単に資金を出すだけではなく、人的・物的リソースを提供し、起業家と一緒に成長を目指す熱い存在だとわかりました。
そこで「もっと内部で彼らの仕事を知りたい」と思い、後藤に「ぜひ出向させてください」と伝えたという経緯です。
ご自身で希望を出されたのですね。
そうです。当時は出向の制度がなかったのですが、「もっと理解を深めたいので出向させてほしい」と自分から申し出ました。
ジャフコグループ株式会社は以前から当事務所と取引がある、日本最大級の老舗ベンチャーキャピタルです。
今のベンチャーキャピタル業界には、元ジャフコグループ株式会社の方が数多くいらっしゃいます。そのため彼らの考え方ややり方を学ぶことは、ベンチャーキャピタル業界全体を理解するうえで大きな意味があると思い、ぜひ行きたいと思っていました。
現在は出向制度が整備されているのでしょうか。
現在も厳密に「出向制度」と呼べる形があるわけではありませんが、実際にデジタル庁へ出向していたり、経産省に行っているメンバーもいます。本人が行って帰ってくることで得られるものが大きいので、事務所としてサポートしています。
スタートアップ経営者と近い年代のパートナー弁護士が必要
菅原先生は2018年頃、弁護士6年目でパートナーになったと伺いました。比較的早い印象がありますが、その点についてはいかがでしょうか。
今のところ6年目でのパートナー就任は最速かと思います。ただ当事務所では「6年目から10年目くらいの間にパートナーになってほしい」とアソシエイトに伝えています。他のいわゆる大手事務所よりパートナーになる時期は早いと思いますね。
私たちのクライアントは主にスタートアップで、20代から30代の若い経営者の方が多いです。彼らと同世代の弁護士がパートナーを務めることで、より近い目線で事業を理解し、必要とされるアドバイスを提供できると考えています。
特にベンチャーやスタートアップには権威や実績よりも、今の事業を深く理解し共感してくれる弁護士を求める経営者が多いので、若い世代のうちにパートナーになっていただくことは大切です。
AZXの規模・組織・業務体制

スタートアップ業界全体の盛り上がりに対応するマンパワーを確保するため、新卒採用を含めた採用活動を活発に行うAZX。
在籍している弁護士の人数や男女比などを教えていただけますか。
弁護士は全体で約45名で、そのうち男性が8割ほどでやや高めです。ただ、グループ全体では150名ほどおり、そのうち女性が半数以上を占めています。
近年、新卒採用も活発に行っているようですが、その背景や理由は何かあるのでしょうか。
むやみに数を増やしたいわけではありません。ただ、スタートアップ業界の成長が著しく、当事務所に依頼いただく案件数も非常に増えています。そのため一定数の弁護士がいないと対応しきれない状況になっています。数年先の成長を見越して採用し、育成することが大切です。
私が弁護士になった頃に比べると、ベンチャー・スタートアップ業界への投資額は十倍以上に増えており、市場も1兆円に達する水準です。市場規模が高まれば弁護士などの専門家も潤沢に利用できますから、案件量も大幅に増えました。
チーム制なのか、案件ごとにチームを組成するのかなど、案件対応の体制はどのように進めているのでしょうか。
スタートアップの場合、クライアント単位で動くケースが多いです。パートナーとアソシエイトが二人一組で担当し、クライアントごとの案件を継続的にサポートします。
毎回同じメンバーが関わるため、クライアントとの関係を深めながら、事業とともに成長していける点が魅力です。
あらゆるステージのスタートアップを一貫して支援可能
クライアント企業はさまざまなステージにあると思いますが、どのようなステージでも幅広く対応しているのでしょうか。
当事務所はシード、アーリー段階からミドル、レイター、さらにIPOやその後の段階まで、あらゆるステージを一貫して支援しています。初期から成長を続ける企業と長くお付き合いできるのが強みです。
ベンチャーやスタートアップ以外の支援、例えばVCや証券会社への対応も行っているのでしょうか。
はい。伝統的にベンチャーキャピタルの案件も多く取り扱っています。
ベンチャーキャピタルの主な業務は、まずファンドを組成し、スタートアップに投資を行い、投資先の成長をサポートしながら最終的に株式を売却してリターンを得るという流れです。
当事務所ではファンド組成時の書類作成や投資契約、投資先スタートアップへのアドバイスなど、一連のプロセスに対応しています。
投資する側、される側両方の支援を経験しているので、たとえば「VCはこう考える」という視点から投資を受ける企業に助言することもできますし、その逆も可能です。
業界全体への理解が深まるメリットは大きいですね。
スタートアップ業界のトレンド
スタートアップ全般についてですが、最近の特徴やトレンド、増えている相談などはありますか。
ここ数年、ベンチャー・スタートアップ業界は急速に拡大しており、数十億~100億円規模の資金調達も珍しくなくなりました。企業規模も非常に大きくなり、すでに上場企業をしのぐスタートアップも存在します。
スタートアップは新しいビジネスを生み出すことが多いですし、法律が追いついていない分野に取り組むケースもありますよね?
たとえば一時期のビットコインや、現在のAI分野などが当てはまります。世間一般に認知される前の段階で法的なリスクや対応策を相談されるのは、非常に興味深くやりがいのある業務です。
中途採用に求めるスキルとキャリア支援制度

菅原さんは「AZXには税理士・弁護士が揃っており、案件をたらいまわしにされることがない」と語る。
中途採用の場合、企業法務の経験の有無によって採用が難しいことはあるのでしょうか。
企業法務経験があるに越したことはありませんが、訴訟や労働紛争など他分野の経験も大いに役立ちます。
スタートアップの業務は特殊と見られがちですが、実際は通常の企業と同様に、労働紛争や訴訟リスクなどが起こりえます。ですからこれまでの経験を活かしていただければ、十分対応が可能ではないかなと思います。
貴所が提供しているスキル構築やキャリアアップの支援制度や仕組みがあれば教えてください。
アソシエイトには「アソシエイトカルテ」を個別に作成し、毎月更新します。これまでどのような業務に携わったか、どんな分野に興味があるかを本人が記入し、パートナー全員で共有する仕組みです。
たとえば当事務所には農学部出身でアグリテックに興味があるアソシエイトがいるのですが、その分野の案件を優先的にアサインし、専門性を深める機会を増やしています。そのため、アソシエイトであってもおそらく事務所の中で最もアグリテック関連に詳しい弁護士に成長しているはずです。
こういった弁護士がアソシエイトの中にも存在するというのが、当事務所の強みになっています。案件の数は年間数百件あるので、個々の希望をなるべく反映しながら対応しています。
逆にまだ特定の専門分野がない方には、幅広く案件を経験してもらい、興味のある分野を見つけていただければと思っています。
AZXの報酬体系
個人差はあると思いますが、報酬制度について大まかな目安を教えていただけますか。
中途で入所した弁護士は、最初は固定報酬としておよそ800~1,000万円ほどを想定しています。その後、事務所で一定の経験を積んだ段階で歩合報酬に切り替えていきます。
入所直後から歩合報酬にしても構わないのですが、対応件数や効率に応じて収入が変動するため、多くの場合、固定報酬より下がってしまうんです。
仕事の進め方が確立され、案件数も安定してくると固定報酬を上回ってくるため、その段階で歩合報酬に切り替える形です。この方式で、多くの方が1,000万~2,000万円のレンジで収入を得ています。
働き方の希望に応じて稼働量を調整するなどの対応は行っているのでしょうか。
はい、ある程度は調整しています。希望通りにならないケースもありますが、プライベートを重視したい時期や、逆に仕事に集中して取り組みたい時期など、それぞれの状況に応じて案件の割り振りを工夫しています。
AZXで得られる経験と働く魅力

起業間もないスタートアップ企業が、大きく羽ばたく様子を間近で見られるのがAZXの魅力のひとつだという。
AZXで働くからこそ得られる経験や、魅力はどのような点にあるでしょうか。
やはり、起業家の方々と一緒に成長できる点が大きな魅力です。当事務所はベンチャーやスタートアップのインフラとして、会社設立当初からIPO後まで長期にわたりサポートできる事務所を目指しています。
シードやアーリーの段階から企業と関わり、資金調達をしてプロダクトのプロトタイプを作っていた企業が、その後数年でテレビCMが流れたり、都心に本社を移転したり、上場を果たしたりする様子を最前線で見られるのは非常に刺激的です。
その過程で次第に高度になっていく相談に応じているうちに、弁護士としても一緒に成長できるところが面白いと思っています。
最近ではシリアルアントレプレナー(連続起業家)も増えており、一度成功した方がまた起業する際に「次もAZXで」とご依頼いただくケースもあります。
私自身、10年以上お付き合いしている経営者がいるので、当時お互いが新人同士だった頃の話をすることもあります。そういった距離感の近さや、クライアントとの一体感がこの業界の面白さだと思います。
菅原先生ご自身、とても楽しそうに感じます。
よく言われます。実際、当事務所のメンバーの多くが同じように感じていると思います。
AZXの今後の展望
今後の事務所としての展望を、もう少し詳しく教えていただけますか。
大きく2点あります。ひとつはインフラとしての基盤強化、もうひとつは専門性の確立です。
まず、スタートアップ業界が急速に伸びているので、我々もその成長に見合う組織づくりが必要です。今は弁護士が約50名ですが、将来的には100名以上になる可能性もあります。ただし、それは利益追求だけが目的ではなく、業界全体のインフラとして機能するために十分な人数を確保するためです。
もう1点は専門性の確立です。スタートアップの領域は非常に広く、多岐にわたっています。単に「スタートアップの法務全般対応できます」ではなく、個々の弁護士が何らかの専門領域に強みを持つことで、より質の高いサービスを提供できると考えています。
現役の弁護士でキャリア情報を収集されている方へ、メッセージをお願いします。
ベンチャー・スタートアップ業界は非常に伸び代が大きい市場ですが、そこに対応できる弁護士はまだまだ少ないと感じています。
中途の方がこれまで培ってこられたスキルや経験は、必ずこの業界で活かせる部分があるはずです。ぜひ、一緒にチャレンジしていただきたいと思います。
動画:スタートアップのインフラを目指すプロフェッショナルファーム

-
2009年東北大学法学部 卒業
-
2011年一橋大学法科大学院 卒業・司法試験合格 司法研修所 入所
-
2013年AZX Professionals Group 入所
-
2016年株式会社ジャフコ(現 ジャフコ グループ株式会社) 出向(2016年1月~2016年12月)
-
2018年AZX Professionals Group パートナー 就任・株式会社サイダス 監査役 就任(2024年 退任)
-
2019年AZX Professionals Group マネージングパートナー COO 就任
-
2020年東北大学特任教授(客員) 就任
-
2024年仙台スタートアップスタジオ メンターズボックス メンバー 就任
-
2024年株式会社eiicon 社外監査役 就任
Recommend
おすすめ記事
-
- 法務部インサイド
法務のスペシャリストの存在が、事業成長の力になる
レバレジーズ株式会社 執行役員
森口 敬
- M&A
- 企業内弁護士
- スタートアップ
- 企業法務
-
- 法務部インサイド
「チームだから強い」2人1組で戦うコロプラ流「事業法務」の魅力
株式会社コロプラ 法務知財部
清水 康太/中條 秋子
- ゲーム
- エンタメ
- 企業内弁護士
- 企業法務
-
- トップに訊く
アジア案件を軸に急成長するスフィア法律事務所の「強み」とは
弁護士法人スフィア東京 代表弁護士・通知弁護士
小堀 光一
- パートナー・代表
- M&A
- グローバル
- 企業法務
-
- インハウスの実態
自分の仕事が「スタンダード」になる モビリティ業界をリードするパーク24法務が取り組む「正解のない課題」
株式会社パーク24 グループ法務・知的財産部 次長
堀 真知子
- コンプライアンス
- 企業内弁護士
-
- 事務所を知る
クライアントのビジネス成長に真に貢献できる弁護士へ
弁護士法人スフィア東京 弁護士、日本プロ野球(NPB)選手会公認選手代理人
久世 圭之介
- M&A
- グローバル
- 若手弁護士
- 企業法務
-
- トップに訊く
四大法律事務所弁護士が選んだLegalOn Technologiesでの「法務開発」という道
株式会社LegalOn Technologies 執行役員 CCO
奥村 友宏
- 留学
- SaaS
- リーガルテック
- 企業内弁護士
- 四大法律事務所
- スタートアップ