
法務部インサイド
監査法人から「成長産業支援事業」を支えるコーポレート部門へ
フォースタートアップス株式会社
執行役員 コーポレート本部長
菊池 烈
監査法人で培った経験を糧に、代表の「熱量」に惹かれて入社したという、フォースタートアップス株式会社の執行役員兼コーポレート本部長・菊池烈(いさお)氏。
菊池氏が率いるコーポレート本部は、同社の主な事業である「成長産業支援」を推進すべく、「攻め」と「守り」のスタンスの両立を追求しています。上場企業ならではのリスクマネジメント体制や、事業部門と密に連携する法務の魅力はどこにあるのでしょうか。
菊池氏の転職理由から組織づくりのポイントまで、その核心に迫ります。
「監査法人から若きベンチャーへ」代表の熱量が転職の決め手

フォースタートアップス株式会社 執行役員 コーポレート本部長 菊池 烈様
自己紹介をお願いいたします。
フォースタートアップス株式会社 執行役員 兼 コーポレート本部長を務める菊池烈です。
私は大学卒業後、監査法人に8年ほど勤めていました。その後現職に入社し、現在は在籍してから約7年が経ちます。どうぞよろしくお願いいたします。
監査法人から現職に転職した理由を教えてください。
一言で申し上げますと「熱量」です。
当時、深くキャリアを考えていたわけではありませんでしたが、7~8年監査法人で働いている間にある種の「踊り場感」を覚え、もっと若い企業で働きたいと思うようになりました。
そのような中で転職活動を行っていた際、代表の志水と出会ったことが大きなきっかけとなりました。
代表の志水様のお話を聞いて熱量を感じられたと。
そうですね。スケールがまったく異なると申しますか、「日本に対して大きなインパクトを与えたい」という思いを、初対面にもかかわらず非常に熱く語っていました。「これまで会ったことのないタイプの方だな」という印象を受けました。
その後オフィスを見学させていただいた際、自分より若い社員の皆さんが高い熱量を持って求職者のキャリアを考え、人材支援に取り組んでいる姿を見て「ここは面白そうだ」と思ったのです。
当時は社員数が30~40名ほどでしたが、この会社が1,000名~2,000名規模になれば、日本により大きなインパクトを与えられる可能性があるのではないかと感じて入社を決めました。
ご入社当時、菊池様は何歳くらいだったのですか
ちょうど30歳くらいでした。
20代の社員が数多く在籍しており、非常に大きな熱量で仕事に取り組んでいる様子を目の当たりにして衝撃を受けました。
前職の監査法人は、社員の属性がある程度同質的だったということもあり、よりインパクトが大きかったのかもしれませんね。
「成長産業支援」の旗手が挑む事業とミッション
フォースタートアップス株式会社の主な事業や、どのようなミッションを掲げて運営しているのかをお聞かせください。
社内では「成長産業支援」という言葉を使っています。
具体的には、日本国内のスタートアップを中心とする上場・未上場を問わず成長企業に対し、主に人材紹介の事業を展開しています。また、そうした企業へ投資を行うベンチャーキャピタル事業も手掛けています。
さらに、日本国内のスタートアップを取り巻くエコシステムを支援するため、公共政策に関わるパブリックアフェアーズや、上場企業などの定量データを取りまとめた「STARTUP DB」(スタートアップデータベース)の運営なども行っています。
従業員数はどのくらいでしょうか。
現在は約200名ほど在籍しています。
4月からは新卒の社員も入社予定です。数年前から新卒採用を本格的に始め、毎年10名から20名程度を採用しています。
コーポレート本部の多彩な役割と組織づくりのポイント

バックオフィス業務を一手に担うコーポレート本部だが、チームは20名に満たない少数精鋭だ。
菊池様が管掌されているコーポレート本部は、どのような役割や業務範囲を担っているのでしょうか。
私が担当しているのは、財務経理、法務、情報システム、広報、IRといった領域です。
人事を除く、いわゆるバックオフィス業務を一括して担っています。組織としては15~16名ほどで、20名には満たない規模です。
さまざまなバックボーンの方が在籍されているのでしょうか。
そうですね、日系の大企業出身の方やベンチャー企業出身の方など、本当に多様な経歴のメンバーが集まっています。
共通しているのは、当社の事業目的である成長産業支援に共感しているという点です。採用時にも重要視しています。
年代はどのような構成でしょうか。
20代前半の若手から40代のベテランまで在籍していますが、平均すると30歳前後くらいではないかと思います。
その中で法務を担当されている方は何名いらっしゃるのですか。
アシスタントも含めて3名です。
“攻め”と“守り”を同時に実現 フォースタートアップス流・法務のスタンス
法務担当の業務範囲は企業によって異なりますが、貴社の場合はどこまでを担当されていますか。
フェーズによっても変動があり、5~6年前は法務と総務がひとまとめになっていました。
当時は株主総会の運営や許認可、知的財産管理などにも関わっていましたが、現在は総務を別部門とし、法務で主に担っているのは大きく2点です。
1つは契約のリーガルチェックや社内からの相談対応、もう1つは全社リスクマネジメント機能の運営です。リスク評価委員会という組織があり、そこでは事務局を運営し全社的なリスクの棚卸しを行っています。
従来の守りの法務だけでなく、近年は「攻めの法務」が求められるケースも増えてきています。貴社における法務のスタンスはいかがでしょうか。
コーポレート部門全般で大切にしているのは、営業や開発といった前線の社員が成長産業支援に専念できる環境をどれほど整備できるかという点です。
あれは駄目、これも駄目と単に制限をかけるだけでは、何も生まれません。
まずは従業員から信頼を得ることを重視し、寄り添って支援しながらも、リスクがあるものはしっかりとラインを示す。とるべきリスクはしっかりと取り除く。このように、常にバランスを意識しています。
リスクを取りすぎるのも好ましくない一方で、事業の成長のためにはある程度のチャレンジも必要だと思います。そのバランスを保つために何を大切にされているのでしょうか。
多角的な観点から物事を検討することです。
営業部門は売上を上げるという重要な使命がありますが、目先の売上だけを追っていたのでは後々問題となる場合もあります。それに気付けるような視点を法務やコーポレート側からどれだけ提供できるかが大切です。
また、リスクマネジメントを強化し、毎年総点検を行う仕組みを整備している点も大きいです。前年と同じやり方が本年度に適さないこともありますので、その都度見直すことが必要です。
現場とのコミュニケーションはどのように行われていますか。
社内コミュニケーションツールとしてSlackなどを用いてもいますが、基本的に全員がオフィスに出社しているため、対面でやり取りする機会が非常に多いです。
直接会話をすることで、メンバーが抱えている課題や悩みを表情や雰囲気から察知しやすく、すぐにフォローできる点が大きな利点だと感じています。
オンライン会議でのやり取りも可能ではありますが、日々の細かいコミュニケーションにおいてはオフィスで顔を合わせるほうがスムーズだと思っています。
決算訂正を契機に、リスクマネジメント体制を変革
菊池様がご入社されてから現在に至るまで、法務の面で特に困難や壁に直面した事例があれば教えてください。また、それをいかに乗り越えたのかも伺いたいです。
過去に決算訂正を行ったことがあり、その際にリスクマネジメント体制を大きく整備しました。
若い企業はどうしても売上や成長を最優先しがちで、コーポレート部門のリソースも限られがちです。その結果、細部まで検討が及ばない場合があります。
しかしリスクマネジメントを手厚く導入したことで、「以前は問題ないと考えていた事項も、今はそうではない」といった見直しが機能するようになりました。
企業の規模が小さい段階ほどコーポレート部門は少数派になりがちで、意見が通りにくいこともあります。
それでも粘り強く取り組んだ結果、事業部門から法務部門への信頼が非常に高まり、私たち自身のやりがいにもつながっています。
リスクマネジメント体制の強化については、代表の志水様やボードメンバーとも連携して進められたのですか。
そうですね。私からも代表に提案しましたが、最終的にはボードメンバー全員で協議し、会社として方針を決定しました。結果的に会社にとって良い転機になったと思います。
スピード感と提案力が鍵 スタートアップ法務ならではの面白さ

事業部のチャレンジに「NO」を言うだけではなく、どうすれば「YES」にできるかを探るのも重要な役目。
貴社の事業は、人材紹介やVC事業、スタートアップエコシステム全体への支援など多岐にわたり、非常に幅広い印象を受けます。こうしたビジネスを行うからこそ得られる法務の面白さはどのような点にあるのでしょうか。
主に国内のスタートアップ企業を相手にしているため、カウンターパートとなる企業には限られたリソースの中で懸命に事業を展開されている企業が多くあります。
そうした背景もあって、契約書をチェックするだけでなく、「こういう書き方はいかがでしょうか」「こうした進め方がよいのではないでしょうか」といった提案を積極的に行わないとスケジュールが進まないこともあります。
相手方の状況を想像しつつ調整を行う点が、この領域ならではの面白さだと感じています。企業規模が比較的小さいからこそ、スピード感が求められる場面も多いです。
筋肉質な組織運営を目指すコーポレート本部のこれから
コーポレート本部をこれからどのように成長させていきたいとお考えでしょうか。
やはり主役はあくまでも事業部門の社員だというスタンスで進めたいと考えています。
法務であればトラブルが起きないよう契約書で手当てを行う、財務経理であれば正確かつ迅速なレポーティングを行う、情報システムなら利便性が高くセキュリティもしっかりと担保された環境を整備するといった形で、事業部門が本業に集中できる土台を提供したいと考えています。
また、コストセンターとしての側面もあるため、組織を筋肉質に保ちつつも優先度を見極め、業務の属人化をできるだけ防ぎたいという思いがあります。
採用面で中途入社の方をお迎えする可能性もあるかと思いますが、特に法務領域でどのような資質を求めていらっしゃいますか。
最も大切なのは、当社のミッションやビジョン、バリューに深く共感していただけることです。「事業をより良くしたい」「成長を後押ししたい」という意志を持った方と、共に働きたいと思っています。
事業部門と常にコミュニケーションを取りながら、新規事業の立ち上げ時には積極的にリスクを取り、一方で守るべきラインはしっかりと守るというスタンスです。このような価値観に共感できなければ、長く続けることは難しいかもしれません。
ある程度の時間をかけて信頼を築く必要がありますので、まずはミッション、ビジョン、バリューへの共感が最重要となります。
法務の専門性もさることながら、企業のバリューや事業成長に寄与するマインドを重視されているのですね。
そうですね。もちろん専門知識や経験は重要ですが、それ以上に強い思いがないと壁に直面した際に早期離職につながるなど、乗り越えられなくなる可能性があると考えています。
フォースタートアップス株式会社が求める人物像

採用においては、フォースタートアップス株式会社のミッション「(共に)進化の中心へ」、ビジョン「for Startups」、バリュー「Startups First」「Be a Talent」「The Team」に共感できることが重要だと語る。
法務的なスキル以外で必要とされる資質にはどのような面がありますか?
当社の社内的にもマーケットの動向的にも変化が激しい環境ですから、一度決めたことがその後合わなくなってくることも珍しくありません。
そのため、変化に柔軟に対応できるマインドが重要です。
法務パーソンとして中途採用で入社された方には、どのような成長機会があるのでしょうか。
当社は社員数が200名ほどで拠点も1つ、事業そのものも比較的シンプルです。
そのため、全体像を早い段階で把握しやすいですし、上場企業としての動きも同時に学べる環境が整っています。
コーポレート本部全体でも20名弱という少人数ですので、取り扱いの難しい情報や多様な相談が集まりやすく、担当の幅も自然と広がります。
大企業のように縦割りが厳しく、自分の担当分野しか分からないといった状況とは異なり、事業部門と密接に連携しながら進める面白さがあります。
最後に、今後法務として活躍する上で必要とされる資質は何だとお考えでしょうか。
知識量だけでは優位性を保ちづらくなると感じています。
調べれば分かることが多くなりましたし、専門性がさらに必要であれば社外の専門家に依頼することもできます。
そう考えると、より重要なのは人間性やコミュニケーション能力など、人と人とのつながりを構築する力だと思います。
動画:コーポレート本部長が語る|法務の重要性とリスクマネジメント体制強化の裏側

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