
インハウスの実態
自分の仕事が「スタンダード」になる モビリティ業界をリードするパーク24法務が取り組む「正解のない課題」
株式会社パーク24
グループ法務・知的財産部 次長
堀 真知子
駐車場やカーシェアなどのモビリティ領域で業界をリードするパーク24株式会社では、「先例がなく、正解を自ら作る」課題に取り組むこともしばしばだといいます。
今回お話を伺ったのは、パーク24 グループ法務・知的財産部の次長を務める堀様。システムエンジニア、専業主婦、弁護士、企業内法務……さまざまなキャリアを経て、現在は同社で15名のチームをまとめる立場にあります。
常に新しい挑戦を続けるパーク24の法務だからこそ得られるやりがいとは、一体どこにあるのでしょうか?
ITエンジニアから弁護士へ 異色のキャリアチェンジ

株式会社パーク24 グループ法務・知的財産部 次長 堀 真知子様
まずは簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか
グループ法務・知的財産部の堀と申します。
私は大学卒業後、IT会社にシステムエンジニアとして入社してそこで働いた後、一旦家庭に入り、その後弁護士になって2つの会社を経た後、2017年に当社に入社して法務の仕事に携わっています。
現在はグループ法務・知的財産部の部長の下、法務部においては11名、知的財産部においては4名を統括する立場です。本日はよろしくお願いいたします。
堀様は修習期は何期でしょうか。
61期です。
弁護士の資格を取られた後、インハウスとして2社経験されたということですが、どういった業界にいらっしゃったんですか。
はい。最初の会社は、もともと自身がSEでITの方の土地勘があったということもあり、ITベンダーに就職しました。
そちらはわりと大きめの法務部で、そこで下積みというか経験を積んだ後、「少し自分の裁量で仕事をしたいな」ということを感じ始めて、ちょっと小規模な証券会社に行きました。
ほぼ一人法務に近いような形で6年ほど仕事をし、やりたいことはやり尽くしたかなと感じました。もっと大きな会社で大きな規模の仕事をしたいと思い、当社に転職した次第です。
「挑戦」を求めてパーク24へ
貴社の魅力や、転職の決め手はどのようなことだったのでしょうか。
「営業が強く非常に成長している会社が、管理部門強化の文脈で法務を募集していますよ」と紹介を受けました。
実際パーク24の方にお会いしてみたところ非常に手広く事業を展開していて、業界内でしっかり地位を作っているところと、新しいことにどんどんチャレンジする勢いが感じられました。
非常に業績のよい会社で雰囲気も明るく元気があり、様々な新しいチャレンジをしたい欲求を満たしてくれそうな印象を受けたんです。
2017年の時点でトップクラスの駐車場サービス企業だったものの、成長を続けている状況だったのですね。
その当時、オーストラリアなど海外進出をかなり積極的に推進していた時期でもありました。
海外の大きな駐車場運営企業をM&Aしたと伺っています。
そうですね。2016、17年ごろのことです。
現在はグループ法務・知的財産部の次長として、何名ほどのチームをまとめているのでしょうか。
部長と私のほか、15名所属しています。
前職がほぼ一人法務だったことと比べるとまったく違いますね。
そうですね、全然違います。私が入社した当時でも7、8名ほどの組織でした。
海外展開も順調にモビリティ領域を牽引する
ここで改めて、貴社がどのような事業を展開しているかご説明をお願いします。
当社は1971年に創立しました。現在の従業員はパーク24だけで700名、グループ連結で5,500名程度の規模に成長しています。(2024年10月末現在)
パーキング、カーシェア、それらをつなぐ会員サービスなど、モビリティに関する広範な領域に関してビジネスを展開している企業です。
オーストラリアや英国、マレーシアとシンガポール、台湾にも駐車場ビジネスで進出されているのですね。
はい。台湾はだいぶ前から展開していますね。
グループ全体の法務・知財マターを一手に引き受ける
堀様が所属する「グループ法務・知的財産部」は、年齢層・男女比・有資格者の割合はどのような構成でしょうか。
有資格者が4名です。4名のうち1人が部長の佐藤で、あとの3名は私を含めて全員女性です。部内の構成としても女性の方が多いですね。
年代は30代~50代までいますが、中でも30~40代が多めです。
グループ法務・知的財産部内で、さらにチームが分かれているのでしょうか。
業務で分かれているというより、マネジメントのためのグループを作っています。法務知財部の下には法務の2グループと知財の1グループ、合わせて3グループがあります。
法務部の中ではグループ法務・知的財産部はどのような業務を担当しているのですか。
当社グループ企業の法務に関する問合せは全部ここに集まります。
駐車場、カーシェア、駐車場の保守、コールセンター業務、会員組織などの契約審査やトラブル対応といった当グループの事業法務が主です。
また、株主総会の事務局運営などいわゆる機関法務や、海外子会社の統制も法務が担当しています。
知財はグループ全体の特許・実用新案・意匠・商標の管理ですね。最近は特許にかなり力を入れています。
先例のない領域への挑戦…急成長ビジネスを支える法務の醍醐味

「知財領域は非常に専門的」と語る堀様。しかし、業務を通じて少しずつ経験を積むことも可能だという。
一人の方が一般法務から知財法務まで横断的に担当することもあるのでしょうか。
知財はかなり専門的な領域ですから、最近は経験者を積極的に登用して集中的に担当を割り振っています。
一方、一般的な法務は誰でもどんな内容でも行える体制を理想として進めています。
たとえば入社してから知財領域の経験を積みたい方がチャレンジしていくことはできるのでしょうか。
そうですね。やる気さえあれば、そういった機会は提供できると思います。
特許に特化した知財の領域はハードルが高い面もあると思いますが、知財にも商標や不競法、契約の中で知財をどう守るかなど、他領域にまたがっている部分もあります。
そのような部分は知財と法務とが協働して対応していますから、業務の中で知財領域のキャリアを積むこともできるかなと思います。
タイムズカーのように急成長するビジネスを持つ会社の法務ならではの大変さや面白さは、どのような部分で感じますか。
当社では、どこかに正解が用意されているわけではない、世間的にも初めての取り組みを行うことが多いです。それでいてスピード感を持って実現していきたいという社風でもあります。もちろん、それは適法に、社会に認められる内容で行わなければいけません。
そのためには自分でも一生懸命考えなければいけないし、さまざまな本を読んだり、さまざまな資料を調べたり、さまざまな弁護士の話を聞いたりして、可能なラインを探って提案していくことが求められます。
そのように、かなりビジネスに直結した立ち位置で仕事ができる点が、当社ならではかと思います。
そういった新しい取り組みやチャレンジは、入社前からイメージをお持ちでしたか。
イメージはしていましたが、はるかに多かった気がしますね(笑)。
法を巡る関心事はどんどん変わってきていて、最近だと個人情報やセキュリティといったデータガバナンスへの関心が高まってきています。
たとえばカーシェアなら、車載機器によっては個人の位置情報が分かる場合もあります。また会員情報であったり、駐車場の利用情報だったり、個人情報がどんどん集まってきます。
これらの管理をどのように行うかはこれからも大きな課題となるでしょうし、その他にも新しい課題がどんどん出てきて、入社前に思っていたよりも手広く対応しているなと感じています。
新しい技術でできることが増えれば対応範囲も広がりますよね。
そうですね。最近の駐車場はロック板などでクルマを物理的にとめておくものではなく、クルマのナンバーを認識して入出庫の管理をするものも増えてきています。
料金の支払いも現金からアプリ精算になっていますし、利用の仕方が変化するにつれて、法的に問題となる部分も変化します。そこをめぐる規制も動きが激しいですから、情報のキャッチアップも欠かせません。
知財の「発明」は現場の課題感から生まれる
知的財産の取り扱いに関して、会社としてかなり強化をしているようですね。
今まで当社に関わる特許って、精算機の箱の形がどうなっているとか、そういうハードウェアの世界でした。しかし現在はソフトウェアだったり駐車場管理システムを用いる時代です。
特許としてそれらの権利を保護することで競争優位性を保てると考え、特許についてもっと強化していこうという動きがあります。
そのために、まずは知財の経験が豊かな人を採用し、法務知財部の中の知財の体制を整えるとともに、社内でも関連する発明を発掘して特許として育て、正しく権利化していく動きを進めています。
知財のメンバーはメーカー出身の方が多いのですか。
今、知財グループにいるメンバーは、やはり特許の経験を積んだ方たちです。
具体的に、知財強化のために行っている取り組みなどがあれば教えてください。
知財グループは発明そのものではなく発明を権利化する仕事をしているので、発明をしてくれる現場の人たちからいかに良いアイデアをもらい、良い発明にして、良い特許にしていくかが問われます。
また、当社のビジネスを強化するために分析した特許調査の結果を生かしていくのも知財グループの役目です。
そのため、開発部門や事業拠点の営業とのミーティングを開き、早い段階から発明のアイデアを出してもらって知財グループからアドバイスする機会を設けています。
これまでやっぱり発明というと「発明をする部門」というか、システム部門など発明者が出やすい限られた部門のものでしたよね。
しかし実際は何らかの解決すべき課題があって、その解決方法を考え出すのが発明の最初のきっかけですから、やはり課題を抱えている部門に発明の種が眠っていると思います。
また、課題があるところには解決するためにいろいろ考えている方が必ずいるはずですから、各部門への働きかけを地道に続けています。
フルフレックス×リモートの活用でプライベートも充実

ラウンジはまるで街角のカフェ。穏やかな時間の流れる空間で、業務の合間の疲れを癒す。
貴社では子育て世代の方も多く活躍されているんですよね。
はい。私自身はもうだいぶ子どもが大きいのですが、チームの有資格者の2名は、1人はまだ3歳くらい、もう1人は生まれたばかりの赤ちゃんのお母さんです。
当社はリモートワークでも出社しても働けますが、やはりフルフレックスでコアタイムがないのが助かります。
たとえば朝8時から16時までは会社でみんなと働いて、いったん帰って子どもの世話をした後、メールのチェックや契約チェックを何通かだけ夜の20時から21時くらいの間にやる、といった働き方も可能です。
フルフレックスとリモートを組み合わせて、自分に合った働き方をしているのですね。
大体半数ぐらいは出社しており、全員がオフィスにいないということはありません。
コアタイムがないとはいえ、9時半から18時くらいまで働いている人が多いですね。しかし、15時くらいに帰ってあとは家でやるという人もいれば、すごく朝早く来る人もいます。
チームはどんな雰囲気でしょうか。
今いるメンバーは、みんな人当たりが良いというか穏やかですね。
業務内容が挑戦的なので、前向きで明るい姿勢を保つことはとても大事だと思うんです。「できないかも」と思ったときに落ち込むのではなく、「どうやったら実現できるか」を前向きにアイデアを出して考えていく素質が求められます。
そういう意味で、みんな自分の意見だけを押しつけず、周りの意見を聞きながらうまくやっていく人が多いかなという気がします。おかげでチーム全体が穏やかで、ギスギスしていません。
私もお話を伺うまでは、もうちょっと硬い組織かなと勝手に想像していたんですが、思ったよりフラットでスピード感がありました。堀様は入社当時、どのような印象でしたか。
若々しい会社という印象でした。「今までこうやってきたから」といった慣習にとらわれず、新しいことを考えていこうよという社風があります。
本社の11階にあるラウンジもとてもおしゃれですよね。
そうですね。これを聞いたらいろいろ揃えた総務の人が喜ぶと思います(笑)。
「業界スタンダード」を作る法務の楽しさ
堀様が仕事の上で「ここが一番楽しい」「面白い」と思えるのはどんなときでしょうか。
新しい課題に取り組んで一生懸命頑張っているとき、そしてそれに何らかの道筋が見えてきたときですね。
今、特に「タイムズプラットフォームサービス」という新しいビジネスを生み出そうとしているところで、いろんな切り口に法務が入り込んで検討している段階です。
既存の考え方を一度見直して、ビッグデータや個人情報といった観点からいろいろな提案もしていかなければなりません。
プレッシャーは大きいですが、チームで協力しながら「これならいけそう」と先が見える瞬間はやりがいを感じます。
世界に通じる法務人材育成 海外でのスキルアップ支援も
グループ法務・知的財産部で働く魅力や「ここでしか得られない経験」があれば教えてください。
当社で働くと、カーシェアでも駐車場でも、業界のリーディングカンパニーとして、いち早く新しいことに挑戦して、それが業界のスタンダードになっていくことが多いと思います。
その仕組みづくりに携われるのが当社の法務の醍醐味です。やる気のある方であれば、すごくフィットするのではないでしょうか。
あとは、やる気のある方のスキルアップを支援する制度もそろっていますので、そういう意味でも楽しんでいただけると思います。
スキルアップ支援制度とはどのようなものですか。
法務部員の育成のために、年次ごとに「これくらいの業務をこなせるようになってほしい」というスキルマップを作り、それに基づいて育成しています。
たとえば語学の面では、海外法務ができる人材が社内にまだ少ないので、英語学習の補助制度を作っています。
また海外法務を担ってほしいメンバーを、東京大学のロースクールが毎年開いているサマースクールや、子会社があるイギリスの大学のサマースクールに派遣することがあります。
おととしはイギリスの大学のサマースクールでコモンローを学んだ後、2か月ほど現地の子会社で実務を経験してもらう企画を、法務の方で立てて実行しました。
もちろん元々スキルを持っている方を採用できるのが一番ですが、現実的ではありません。それよりは既にいるメンバーにスキルアップの機会を提供し、身につけたスキルで長く働いてもらうほうが良いというスタンスですね。
海外の子会社があるということで、将来的に法務部員として駐在するケースなどはあるのでしょうか。
今のところ駐在はありません。
海外の事業会社にはそれぞれ現地の法務があり、そこに出向している社員もいるので、情報連携はできます。ただ、留学や自己研鑽で海外に行くことはありますね。
コツコツ積み上げた経験が、現在のキャリアにつながった

グループ法務・知的財産部の皆様。事業拡大を続けるパーク24では、これからを支えるメンバーに広く門戸を開いている。
堀様が法務・知財の専門家として「一番成長した」「大きなターニングポイントになった」と思えたのはどのようなタイミングでしたか。
一般的には大学卒業後にストレートで弁護士になり、家族や育児といったしがらみもなく100%仕事に注力し、負荷の高い業務をやり遂げて大きく成長する、というキャリアが多いのでしょうね。
ただ、子どもがいたり介護があったり家庭の事情があったり、いろいろな状況でそういう働き方ができない人もいます。私もどちらかというと、その場その場でコツコツと積み重ねてきたタイプです。
そのため「これを機に一皮むけました」というエピソードは正直ありません。ですが、少し背伸びをしないと解決できないような仕事を常に与えられる環境という点で、この会社に来てからの日々が自分を成長させているという気がします。
現在の業務に関連して、「もっとやっておけばよかった」と思うことはありますか。
社内弁護士として働くには法律だけ分かっていてもダメで、経営・ファイナンスの知識が必要です。ビジネス的な観点が常に求められるので、経営やファイナンスに関する勉強をもっとやっておけばよかったと、折に触れて思います。
あとは実践的な英語力ですね。読み書きはできても、いざ「明日から海外出張ね」と言われたときに何のためらいもなく行けるかというと、やはりそこは難しい。英語力も一朝一夕には身につかないので、もっとやっておけばよかったなと思うことはあります。
社内で「このスキルがあると重宝される」と思うものはありますか。
年々、個人情報の取り扱いなどの重要性が増しています。
国内だけのつもりでもデータセンターが海外にあったり、そもそもビジネスが海外に広がっていたりするので、各国の個人情報保護の扱いを把握しなければいけません。
データガバナンスについてのリテラシーが高い人は非常に必要とされています。
自動運転もそうですしAIのさらなる発展もそうですが、社会の発展に対し法規制が追いついていない部分も目立ちます。
そういった情勢に興味を持って追いかけ続けられる法務パーソンであれば、今は引く手あまただと思います。当社だけでなくどの企業からも求められる存在になるでしょう。
法の先の「正しさ」を見据え、新たな価値を生む法務人材が必要
こちらの記事を読んでいる方は法務パーソンでキャリアを検討している方が多いと思います。最後にメッセージをお願いできますでしょうか。
パーク24グループの法務知財部では原則を掲げており、その1つが「法の先にある正しさを追い求める」というものです。
単に適法かどうかというだけでなく、社会に求められる形として正しいかどうかまで考えることを重視しています。そして、パーク24は、常に新しいことに挑戦できる環境で、そのための成長支援が整っています。
そういったところに飛び込んで、一緒にやってみたいという方がいれば、最適な環境だと思います。
動画:企業内弁護士が挑む駐車場・モビリティ業界のデジタル・グローバル対応

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