経験1年の若手弁護士が複数社内定を受けてインハウスローヤーに転職できた理由
- 更新日:2025.10.31
 
弁護士としてのキャリアをスタートさせたばかりの段階で、インハウスローヤー(企業内弁護士)への転職は可能なのでしょうか。
一般的には「経験が浅い」「専門分野が企業法務ではない」といった理由から、転職が難しいのではないかと諦めてしまう方が少なくありません。
今回は、一般民事系の事務所で1年間の経験を積んだ若手弁護士が複数の企業から内定を獲得した成功事例について、担当キャリアアドバイザーの森に詳しく話を聞きました。
一般民事系法律事務所で1年勤務後、インハウスローヤーに転身
今回転職された方についてご紹介をお願いします。
森 はい。この方は、一般民事系の事務所で丸1年間ご経験を積まれた方です。地方の大都市にある事務所にお勤めでした。
担当されていた案件は、一般民事の中でも交通事故や財務整理の案件が中心でした。中小企業からの契約法務のご相談も稀にありましたが、ほぼ一般民事系の弁護士の方と認識していただいて差し支えありません。
なるほど。そういったご経験の方が、最終的にどのような企業に転職されたのでしょうか。
森 この方は実は複数企業から「ぜひうちに来ないか」というお誘いがありました。最終的にご本人が選ばれたのは、某大手金融のグループ会社になります。
IT、金融業界、その他の業界など、いくつか並行して選考を受ける中で、カルチャーフィット感と経営が安定している企業という点が最も魅力的に映ったようです。
さらに、先輩弁護士が既にいる環境の中で、成長環境が整っているであろうという点を軸に意思決定されました。
ファーストキャリアで民事中心の事務所を選ばれたとのことですが、なぜ1年という早いタイミングで転職をしようと思われたのでしょうか。
森 ポジティブな理由とネガティブな理由の両方があると考えています。ポジティブな面から言えば、やはり「自分の可能性を知る」という点です。
一般民事だけでなく企業法務にも興味を持っていらっしゃったため、将来のキャリアを考えるために両方を経験して自身の適性をしっかりと見極めたい、というのがポジティブな理由です。
一方で、現職へのネガティブな理由も正直ありました。一般民事の方が転職をされる際におっしゃられることとして、案件で精神的に疲れてしまうという点があります。
クライアントである依頼者の方が興奮状態にあることも多々あるようで、クライアントの感情的な部分を自身の中で受け止め続けることで、弁護士に精神的なダメージを与えてしまうのですね。これはこの方特有の事情ではないと思いますし、個人によって向き不向きがあるとは思います。
実際にやってみないと適性は分からないとはいえ、1年で転職というのは早すぎるのではないかという考え方もあると思います。弁護士のキャリアとして、このような早期の転職をどう考えていくべきでしょうか。
森 これも本当にケースバイケースですが、法曹資格を持たれている方のニーズは非常に高いことは間違いありません。
一般職に就かれている方であれば新卒で入社してすぐの転職は成功しにくいケースが多々ありますが、やはり弁護士資格はかなり強いカードですね。
コストを抑えてジュニア層を採用し、専門職を育てたいという企業側の思惑も
しかし弁護士経験1年ほどで、一般民事の経験しかないとなると企業側の採用ニーズは実際にあるものなのでしょうか。
森 タイミング次第だとも言えますが、弁護士資格さえあれば応募できる求人は常にあります。
そういった求人を出している企業は、若手のうちに採用しておいて、その後、自社に必要な専門分野の能力を育てる余力がある大きな会社が中心です。
逆に今すぐ力になる即戦力が欲しいという会社もあるわけですよね。
森 はい。即戦力を求めている求人に関しては、確かに1年の経験では通りません。
世の中の求人は、「即戦力を求めているもの」「責任者あるいは責任者候補を求めているもの」「これから自分たちで育てていくもの」という3段階ぐらいに分かれています。
求人票を見ただけではどのレベル感に該当するのか分かりにくいのですが、グラデーションはしっかり分かれていて、このポジションであれば逆に若手が欲しいという求人が世の中に存在しているのです。
ですので、闇雲にどこでも応募するということではなく、その企業側のニーズに合わせて、ジュニアな方を採用して育てていきたいという案件をしっかり選べるかどうかが、転職成功の鍵になります。
今回の方の応募先は、どのように選定されたのでしょうか。
森 若手を取って育成をしていきたいという人事側からのリクエストが入っている求人をメインにピックアップしました。
業界も会社も少し広めに抽出をしました。若手を育成したいとは言っていても「1年の経験で本当に大丈夫なのか」という企業側の懸念がないわけではありません。確実に内定を取っていくことを考え、業界の幅は広めに受けていったという経緯がありました。
若手弁護士の転職は「学びへの姿勢」で差別化する
実際、面接に進まれた会社はどのくらいあったのでしょうか。
森 大体10社ぐらいに推薦の作業を行い、その半分ぐらいから内定が出ました。しかも、いずれもある程度の知名度のある会社でした。
法曹資格という点以外で見た時に、この方がこれほど内定が取れた理由は何でしょうか。
森 実務経験では大きなバリューが出せませんから、ほぼ人物的な評価です。弁護士に限らずジュニアクラスの方が転職面接を受ける際のポイントですが、傾聴力や、柔軟性、そして素直さが特に20代の若手に最も求められる性格的な部分になります。
20代は経験に大きな差がないため、伸び代を判断する材料として柔軟性や素直さを見られていると考えておくとよいでしょう。
柔軟性や素直さがあることをどのように伝えるべきでしょうか。
森 例えば経験がないことに対して、素直に「自分は経験がこれだけなんです」と伝えることです。
過度に誇張することなく、純粋に「学びたいんだ」ということを素直に伝えましょう。学びといってもただ待っているだけの姿勢ではなく、積極的に「こういう風に自分はキャリアアップをしていきたい」「こういう風に情報を取りに行って成長していきたい」というところを伝える必要があります。
また、相手の返してくれる言葉に対して、しっかりと相手の目を見ながらリアクションを取っていくことも重要です。
最終的にどのような観点で入社先を決められたのでしょうか。
森 弁護士の先輩がすでにその会社にいるかどうかと、どれぐらい教育に力を入れてくれそうかどうかといった点を軸に選びました。
内定が出た企業にはベンチャー企業も含まれていましたが、そういった企業にはまだ先輩弁護士がいませんでした。元弁護士の方が法務部にいるケースもありましたが、やはり現役の弁護士がいた方が、自分のことを理解してくれやすいというところがあります。
一緒になって成長の計画を考えてくれる兄弁あるいは姉弁がいるかどうかといった環境を非常に気にされていました。
報酬についてはいかがでしたか。年収は変わりましたか。
森 報酬は、1年目なのでそこまでは大きくは変わりませんでした。ご本人もまだ1年なので、年収はそこまで優先度は高くなかったんですね。
受け入れ側である企業の方にはメリットがあったのでしょうか。
森 はい、受け入れ側にもメリットがあったと考えています。
例えば、企業法務の事務所にいて、3年、5年と経験を積んでいる人材を取るとすれば、予算的に800万円や1000万円、あるいはそれ以上のコストがかかります。
そのコストを払うよりも、ある程度安い金額で採用して育成をしていくという戦略を取る企業もあるということですね。
動画:経験1年の弁護士が大手金融数社のインハウスで内定を獲得|企業内弁護士への転職事例
この記事の監修者
リーガル専門コンサルタントとして、弁護士・法務人材を中心に転職支援を行う。中国発大手テクノロジー企業の日本法人にて創業メンバーとして事業開発・推進に従事。スタートアップ〜大手事業会社での事業開発、マネジメント経験を有していることから、様々な角度からの俯瞰したアドバイスを強みとする。
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