弁護士が社外取締役に就任する方法と報酬水準
- 更新日:2025.03.05
会社法の改正により、一定の企業は社外取締役の設置が義務付けられています。
社外取締役は会社との利害関係がなく、他の取締役との人間関係のしがらみもないことから、客観的な立場から会社や取締役の問題点を指摘する役割が期待されています。
そんな社外取締役の候補者として、弁護士が選出されることがあります。
実際に2020年に経産省によるCGS研究会が行ったアンケート調査によると、社外取締役の約1割は弁護士となっています。
この記事では、社外取締役に弁護士が求められるようになった背景や、社外取締役の役割、報酬、弁護士が社外取締役に就任する方法などを解説します。
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INDEX
社外取締役に弁護士が求められるようになった背景
最初に社外取締役に弁護士が求められるようになった背景として、
- 会社法改正
- コーポレートガバナンス
- 利益相反
- 多様性のアピール
の4点をここでは取り上げて解説します。
会社法改正
2019年の会社法改正により、有価証券報告書の提出義務を有する監査役設置会社は社外取締役の設置が義務付けされました(会社法327条の2)。
社外取締役の適任者を求める、社会的ニーズは高まっていると言えます。
コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンスとは「企業統治」のことで、特にコンプライアンス(法令遵守)を目的とした企業原則や企業規律を指します。
社外取締役はコーポレートガバナンスの構築や運用を通じて、企業の不祥事を予防する役割が求められます。
しかし会社の不祥事の予防には、常勤取締役の監督や監視をし得るだけの法的知識や企業法務に関する知識が必要です。
かかる知識を有する弁護士が社外取締役としての役割を期待されるようになっています。
利益相反の回避
社会取締役には一般株主の利益を保護する役割も求められます。
社外取締役が取引先の役員であったりすると、当該企業との取引において廉価な取引をする等、適正な企業利益を確保できず、ひいては一般株主の利益を害することになります。
弁護士が社外取締役に就任することには、利益相反の回避という役割も期待されます。
多様性のアピール
社外取締役は一般に取引先や関連会社の役員等が多く、しかも男性がほとんどです。
2011年に女性社外取締役を選任している企業は60社、約4%のみでした。
そのような中で社会取締役に弁護士がいる企業は、コーポレートガバナンスに対する意識の高さと共に人材多様性をアピールできます。
女性弁護士であれば、性別の観点からも人材の多様性をアピールできます。
2011年以降、女性社外取締役を専任する企業は年々数、割合共に増え続けており、2020年には927社、約44%となっています。
しかし、未だ選任企業の割合が50%に至っていないことから、女性の社外取締役を選任することにより人材多様性をアピールすることはできるでしょう。
弁護士が社外取締役に就任した際の報酬
社外取締役の報酬は、企業や役割などで大きく変わります。
東証一部上場企業の報酬水準だけをみても、数十万~数千万円とかなりの差があるようです。
平均的な金額の参考としては、2019年2月の朝日新聞の記事で
東京証券取引所第1部に上場する企業の社外取締役が、平均で年663万円の報酬を受けている
と発表されています。
特に日経平均株価に採用される225社の社外取締役の報酬は高い傾向にあるようです。
※東証一部の社外取締役は約5,000人で、このうち弁護士は約730人です。
とはいえ、この新聞記事は、
- 対象は東証一部上場企業に限定されている
- 2019年2月14日に公開、法改正(2019年)前の数値である
ため、あくまで参考の数値としてご理解ください。
弁護士が社外取締役に就任するには
弁護士が社外取締役にするには、
- 紹介
- オファーや逆オファー
- エージェントやヘッドハンターを活用する
といったルートがあります。
紹介
社外取締役を探している企業に関連する人物からの紹介です。
次に述べるオファーや逆オファーと重複するかもしれませんが、現時点での自分のコネクションから直接声がかかるかと、自分のコネクション経由で声がかかるかの違いがあります。
オファーや逆オファー
企業からの直接のオファーや企業への逆オファーです。
弁護士が社外取締役に就任するにあたり、最も現実的な例は顧問先企業からのオファーや逆オファーと言えます。
特定の業務等に精通している場合、HPや執筆活動等の弁護士活動を評価して企業からオファーが来ることもあるでしょう。
弁護士自身のスキルが活かせるような企業に弁護士からアプローチするといった逆オファーも考えられます。
顧問弁護士が社外取締役に就任する場合、顧問弁護士が顧問先企業の意向に沿って業務を行う反面、社外取締役は企業の問題点を指摘・改善する業務であるため、利益相反となってしまう可能性があります。
社外取締役に就任する場合、顧問弁護士としての契約をどうするかは検討すべき事項です。
エージェントやヘッドハンターを活用する
社外取締役の就任ポジションを転職エージェントやヘッドハンターが扱うことは、他のポジションに比べ多くはありません。
とはいえ、エージェントやヘッドハンターが保有する社外取締役募集もあることは事実です。幅広く機会を検討したい場合、転職エージェントやヘッドハンターを活用するのも一つの方法です。
社外取締役に就任している弁護士の例
最後に社外取締役に就任している弁護士の例として、大手事務所から各1名ずつ、
- 川村明氏
- 原壽氏
- 松井秀樹氏
- 三村 まり子氏
の4名を紹介します(あいうえお順)。
川村明氏
川村明氏は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の弁護士(パートナー)です。
2002年3月に日本マクドナルドホールディングス株式会社の社外取締役に就任し、2021年6月時点で現任です。
原壽氏
原壽氏は長島・大野・常松法律事務所の元代表弁護士であり、現顧問弁護士です。
2018年3月に日本ペイントホールディングス株式会社の社外取締役に就任し、2021年6月時点で現任です。
松井秀樹氏
松井秀樹氏は森・濱田松本法律事務所所属の弁護士(パートナー)です。
2020年12月に株式会社日本共創プラットフォームの社外取締役に就任し、2021年6月時点で現任です。
三村 まり子氏
三村まり子氏は西村あさひ法律事務所所属の弁護士(オブカウンセル)です。
2018年6月に株式会社タカラトミーの社外取締役に就任後、2020年6月にTANAKAホールディングス株式会社の社外取締役に就任しています。
2021年6月時点でいずれも現任です。
▼参考文献
・経産省によるCGS研究会「社外取締役の現状について」
・日経EGS「女性社外取締役が増加 上場企業の4割が選任」
・朝日新聞「社外取締役、報酬は年平均663万円 兼務で高額報酬も」
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この記事の監修者
リーガル専門コンサルタントとして、弁護士・法務人材を中心に転職支援を行う。中国発大手テクノロジー企業の日本法人にて創業メンバーとして事業開発・推進に従事。スタートアップ〜大手事業会社での事業開発、マネジメント経験を有していることから、様々な角度からの俯瞰したアドバイスを強みとする。
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