四大法律事務所からスタートアップのインハウスローヤーへ【転職体験談/後編】
- 更新日:2025.01.29
前編の記事では、金子弁護士(仮名)に四大法律事務所に就職した理由や働き方、そもそも弁護士を志した理由などを伺いました。
四大法律事務所の弁護士の年収や働き方をインタビュー【転職体験談/前編】
インタビューの後編では、
- 四大法律事務所から転職を考えたきっかけ
- 転職活動や情報収集の方法
- スタートアップのインハウスローヤーの仕事内容
- 転職して年収や働き方はどう変化したか
等について伺っています。
四大法律事務所、企業法務系の弁護士事務所からの転職を考える方、インハウスローヤーのキャリア、スタートアップやベンチャーに関心のある方には参考になるのではないでしょうか。
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INDEX
四大法律事務所から転職を考えた理由
--1年余り法律事務所で勤務されて、転職をしようと思われたきっかけは何ですか?
スタートアップで頑張っている友人らの力になりたいという思いが1年間でかなり強まってきた一方、事務所で得られる経験と自分の目指す方向性にギャップを感じ始めていました。
前職で得られる経験はどれも貴重ですし、学ぶことは無限にありましたが、自分の目指す方向性との関係では近道ではないかなと思うようになりました。これがきっかけの1つですね。
--スタートアップへの関心が大きな要因の1つだったんですね。
前職の事務所に在籍し続けたら、どこかの分野の専門性を身に着けていくことになっていたと思います。
他方で、私が目指す方向性には、「分野を問わず幅広い経験を積んできた人」「ビジネスの全体像が分かる人」「ひとまずは全部自分で受け止めることができる人」といった要素が必要になると思っています。
そうなると、会社の中にインハウスとして飛び込んで、法律の枠にとらわれず、ビジネス全体を見渡した上で、その企業の様々な課題を解決するという経験をする方が近いのかなと感じました。
--転職を考え始めた時からインハウスに転職しようと思っていたんですか?
初めて転職エージェントに相談したときはインハウスに限らず、広く見ていました。
まず、自分が転職市場でどのような価値を持っているのかを把握したかったのと、1回目の就職活動の際には幅広く比較検討して職場を決められた自負がなかったので、改めて広く見てみようと思っていました。
なので、マチ弁も他の企業法務の法律事務所もインハウスも、全部見るつもりで転職活動を始めました。
転職活動の進め方
--最初は広く見ていらっしゃったんですね。転職を考え始えたとき、情報収集はどのようにやられたんですか?
「アガルートキャリア」(運営:ファンオブライフ)からはかなり情報を提供していただきました。
あとは、Twitterで多くの弁護士の先生方が発信されており、これも貴重な情報源となっていました。
法令の最新情報等をかなり早い段階で発信してくださったり、様々な意見の交換が行われていたりするので、それらを見ることができる点でTwitterはかなり有り難い存在です。
--転職エージェントは何社か使っていましたか?
継続的にお話しをしていたのはアガルートキャリアのみです。
稀に、前職の事務所に、ヘッドハンターから電話やメールが来ることがあったので、それぞれ1回はお話しを聞いたりはしました。
--転職エージェントはたくさんあると思いますがどうやって選びましたか?
最初の一歩の踏み出し易さが決め手です。大手の転職エージェントに登録しようとしたこともありましたが、登録を完了するまでに延々と情報を入力する必要があり、途中で面倒になってしまいました。
転職活動は、現職での目の前の仕事をこなしながら進めて行く必要があるので、勢いやタイミングが重要だと感じており、最初の一歩の踏み出しやすさが私にとっての決め手でした。
ある日、アガルートキャリアに関するツイートがパッと目に入り、リンクを踏んでみると、少ない手数で面談の日程調整にまで進むことができたため、利用を決めさせていただきました。
--転職活動をされてみてのお話しを伺います。選考に進んだのはどのくらいあったんですか?
現職の1社のみです。
いろいろ情報収集はしていましたが、絶対に今転職しなければならないとは思っていなかったので、本当にいいところがあればというスタンスでした。その中で目に留まったのが、今回転職を決めた会社です。
先程も申し上げたとおり、時間は有限だったので、無理に手を広げるつもりはありませんでしたね。
スタートアップへ入社を決めた理由
--さまざまな求人を見ていたと思いますが、今の勤務先はどういった点が目に止まったのですか?
インハウスに限る話ですが、その会社の法務部の体制はかなり気にしていました。
求人によっては1人目の法務部員として、法務部の立ち上げメンバーを探しているもの等がありましたが、私の経験年数からするとこれは厳しいと思っていました。他方で、大手企業で既に多くのメンバーが在籍する法務部にプラスワンで入るのも違うと思っていました。
ビジネスの中身自体に対する魅力はもちろんですが、法務部の体制・規模感が私のイメージと合致していたのが、今の勤務先に魅かれた大きな理由です。
--それで話を聞いてみようと思われたんですね。最初カジュアル面談だったと思いますが、面談をして印象は変わりましたか?
ガラッと変わるというよりは、安心感が増した印象でした。
入社したら一緒に働くことになるであろう方と面談をさせていただき、この人とだったら波長が合いそうだということを確認できました。
また、普段どのような案件を担当することになるのか、法務部内での仕事の割り振りはどうなっているのかという点も確認でき、実際にそこで働くイメージを持つことができました。
--四大法律事務所にいらっしゃって、ベンチャー企業に転職することに不安はありませんでしたか?
本当にこのタイミングでの転職で良いのか、自分自身でもかなり悩みましたし、周りからも指摘・アドバイスを受けました。
もう数年、前の事務所で経験を積んでから転職した方が良いのではないか、まだ経験の浅い私がベンチャー企業に転職して、その会社に貢献することはできるのか、という不安はありましたね。
ですが、如何に自分を厳しい状況の中に置いて、負荷をかけながら自分を成長させていくかという話だと思うので、転職のタイミングが早ければ早い分、転職先での負荷は大きく、その分成長する伸び代も大きくなるのではないかという考えが私の中にはあり、いつ転職したとしても結局はなるようになるのかなと今は思っています。
--タイミングの部分で不安はありながらも、最終的に前に一歩踏み出せたのは何が大きかったですか?
縁が大きいと思います。
基本的に私は腰が重いタイプなので、現職の仕事にも追われ、限りのある時間の中で、「これは!」とビビッとくる企業を見つけ、自分が実際に行動に移すことができ、かつ、企業側も私のことを評価してくれた、という縁は貴重なものだと感じました。
また、ベンチャー企業への転職はリスクのある選択だと理解していたので、なるべく若い今こそが、リスクのある選択・挑戦をする最善のタイミングであると考えたのも決め手の1つです。
スタートアップのインハウスローヤーの働き方
--転職されて数か月が経ち、少し慣れてきた頃かなと思います。事務所からインハウスに転職されて、いろいろな違いがあると思いますが、1番の違いはどんなところでしょうか?
自分の成果物に対するフィードバックの有無・責任感の違いが大きいと思います。
事務所では、同じ案件に上の期の先生方が複数いらっしゃる中で、私がファーストドラフトを作成し、それを色々とレビューしてもらって、最終的にほぼ原型を留めない形で外部に出ていくということもざらにありました。これは、当時は辛い経験ではありましたが、百戦錬磨の先生方のスタイルを直接見ることができ、かつ、その背景にある考え方を伺うこと等もできて、今思えば、なんて贅沢な環境にいたのだろうと思います。
他方で、今のベンチャー企業での状況はというと、外部の弁護士に依頼する金銭的・時間的な余裕がない中で私を雇ってくれているということもあり、私が作った書面が基本的にそのまま完成物として流れていきます。
得られる経験値の話をすると、基本的には、その書面を作るまでに私が自力で調べ、学んだ内容がその案件を通じて得られる経験値の上限となるのであって、他の弁護士(前職で言えば先輩弁護士ら)が持つ知識・経験を吸収する機会というのはあまりありません。
もちろん、得られる経験に上下関係があるわけではなく、インハウスとして働いてみて初めて見ることができた景色、得ることができたモノの考え方もあります。また、前職でも当たり前に必要でしたが、私が作ったものがそのまま出ていってしまうからこそ、緊張感というか、絶対失敗できないという気持ちはより一層高まりました。
あと、インハウスの場合、会社の中にある情報は全て自分が知るべき情報であって、誰かが教えてくれなくても、私が能動的に集めた上で、判断の前提としていかなければいけないと感じています。そんな情報は知らなかった、聞いていない、というのは通用しないです。そこのところの責任感は、事務所にいた時以上に強く感じています。
--現状では主にどのような業務を担当されているんですか?
新しいプロジェクトの立ち上げ、ファイナンス、M&A、紛争といった大きな話が動きつつ、これと並行して、各部署からの契約書レビューや法的な相談を受けています。
居場所は違えど、弁護士としてやるべき仕事はあまり変わらないと感じています。
--働き方は変わりましたか?
前職と異なり、労働者になったので、良くも悪くも管理されています。
今までみたいに自由に時間を決めて働くというのはやや難しくなりましたが、定時・残業代といった概念があるので、変に夜遅くなったりはしないです。
前と比べたら過ごしやすい働き方にはなったと思います。
他方で、早く業務が終わったりすると、「この時間も事務所の同期は仕事をして、どんどん先に進んでいっているんだろうな」、「負けられないな」と思うこともあります。
--自由に使える時間は増えたようですね。その時間で最近は何かされているんですか?
日々の業務を進める中で、自分に足りない知識、興味のある分野等が無限に出てくるので、それらに関する書籍を読むことが多いです。
前の職場では、自分に足りない知識を自覚しながらも、自学自習する時間を捻出することができない、ということがあったので、このような時間の使い方ができるのは非常に良いことだと感じています。
また、プライベート面では、旅行やスポーツ等をする機会が増えましたね。
--新型コロナウイルスの感染拡大の影響で働き方も変化していると思います。リモートでの勤務もされているのでしょうか?
リモート勤務もあります。出社とリモートがだいたい半分ずつくらいの割合です。
--四大法律事務所からインハウスへの転職で年収を気にされる方も多いです。会社により全然違うとは思いますが、金子さんはどうでしたか?
年収は下がりましたが、当初想定していた水準と比べると、高めのオファーをいただけました。
インハウスで活躍されている先生のお話を伺う機会等があり、インハウスとして採用される場合の相場観はある程度心得ていました。
場合によっては前職の年収(1200万円)の半分や、半分以下になる覚悟はしていました。
--年収が半分になるということも覚悟されていたんですね。
年収も大事な要素ではあるので、あまりに低すぎたら、年収を理由に断念することもありえたと思います。ですが、ある程度下がっても仕方ないとは思っていました。
--インハウスで働いてみて良いところがあればぜひ教えてください。
1つは、弁護士とか法律家という枠組みにとらわれずに、会社のことを何でも知れるということです。会社とは何かという根本的な部分を改めて考えるきっかけにもなりました。
会社法にせよ何にせよ、法律のことだけを勉強していたら理解できないことはたくさんあると思います。会社のこと、ビジネスのことを知った上で、改めて法的な議論に戻ってくると、今まで見えていなかった側面、腑に落ちていなかった事柄がすっと頭に入ってくるようになりました。
あと、会社の事業内容・目指している方向性等を深く知ることにより、今自分がとても面白いことに関わっているんだなという実感・ワクワク感を感じています。自分の仕事が何のためにあるのかという点をより強く意識できるのは、大きなメリットだと思います。
--事務所からインハウスに転職された方々に聞くと、ビジネスの一員、当事者として関わることのやりがいや実感値の高さが良いところだとよく伺います。金子さんも入ってみてそう感じましたか?
はい、それはとても思いますね。
外部の法律事務所に仕事が依頼される前の段階にも、様々な検討が行われていたことを知りました。
法律事務所に依頼するよりも前の段階で固まってしまう事項やそこに潜むリスクもあるので、その段階から案件に関われるのはかなり有意義だと思います。
インハウスでのキャリアを考えている方へのアドバイス
--実際働かれてみて「こういう方はインハウスに向いている」と思う方の特徴などはありますか?
法律に限らず、新しいことを何でも吸収したいという思いがあれば毎日が楽しいと思います。そのような思いを持っている方は向いているのではないでしょうか。
特にベンチャー企業のインハウスの守備範囲はかなり広く、各種法令はもちろん、税務、会計、登記といった、事務所時代にはその分野の専門家の力を借りていた事項についても、自分で考えて方向性を示さなければいけないことがあります。
そのためには、全く土地勘のない分野についても自力で勉強する必要があり、大変なことですが、日々新たな学びがあります。
--逆に四大事務所とインハウスを経験したからこそ「事務所はここがよかった」と思う部分はありますか?
1番感じているのは、トップを走る物凄い先生方と一緒に仕事ができて、それらの先生方から直接フィードバックが受けられるという点です。
--弁護士としての成長で考えると四大法律事務所はとても良い環境だったのですね。最後に、転職を考えている方にアドバイスやもう一度転職活動するならこういう点に気を付けるということがあれば教えてください。
絶対転職するという気持ちで転職活動をする必要は全くないという点は強調したいです。
私は今回の転職活動を通じて、どういうスキルや経験を持っていれば、採用する側から評価をしてもらえるのかを知ることができました。
市場が求めるスキル・経験を知ることによって、「こういう経験をすれば後で生きる」「この案件を通じて、●ができるようになろう」という目的意識を持ちながら目の前の業務に取り組むことができるようになりました。
今の自分の状態と目指すべき状態を把握するという意味で、外部に目を向けてみるのはいいことだと思います。
次、仮に転職活動をするにしても、「この会社でこういう経験をして、こういうスキルを身に着けました」と胸を張って言えるようになってからにしたいと思います。
最終的に転職してもしなくても、転職活動で得られることは大きいと思いました。
--何をやりたいかを考えて、その機会が今いる組織の中にあるのか、組織の外だったらあるのかは観点として大事だと思います。ただ外にそういう機会があるのか、自分のスキルでできるのかはご自身ではわからないことも多いので、実際に転職活動をしてみることで、体感として得られることは大きいですよね。貴重なお話しをありがとうございました。
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この記事の監修者
2016年創業期の株式会社ファンオブライフに参画し、人材紹介サービス立ち上げ・拡大に従事。現在はリーガル専門のエグゼクティブコンサルタントとして、弁護士・法務パーソンのキャリア支援を行う。国内外の法律事務所や、メーカー・商社・金融・IT業界等の企業法務部とのネットワークが強み。
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