弁護士と司法書士の違い
- 更新日:2025.07.09
テレビやインターネットで「過払い金返還請求」などの広告を見かけると、弁護士と司法書士の業務範囲の違いがわかりにくいと感じる方も多いでしょう。
本記事では、両者の基本的な役割や業務範囲、さらに「認定司法書士」や「法律事務所と法務事務所の違い」などについて詳しく解説します。
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INDEX
弁護士と司法書士の最大の違いは「扱える法律業務の範囲」
弁護士と司法書士はいずれも法律の専門家ですが、その活動範囲には大きな違いがあります。
- 弁護士
- 法律事務全般を扱うことができる
- 刑事事件や民事・家事事件における代理人活動(訴訟や交渉など)も可能
- 司法書士
- 登記や供託などの手続き業務が中心
- 原則として法律行為の代理はできないが、認定司法書士になることで140万円以下の簡易裁判所管轄事件(民事)に限り代理業務が可能
つまり、「事件全般を取り扱える弁護士」と「特定の範囲に限り代理権を持つ司法書士」という構図が基本的な違いです。
司法書士と認定司法書士の違い
司法書士は、法務省が実施する**「司法書士試験」に合格し、資格登録をした法律専門家です。そのうち、法務大臣による所定の研修・考査を修了し認定を受けた者だけが「認定司法書士」**として活動できます。
1.1 司法書士が行える業務
司法書士は、以下の業務を行うことができます(司法書士法3条1項1~5号)。
- 登記または供託に関する手続の代理
- 法務局・地方法務局に提出または提供する書類・電磁的記録の作成
- 登記や供託に関する審査請求手続の代理
- 裁判所や検察庁、筆界特定手続における書類の作成
- 上記の業務に関する相談
1.2 認定司法書士が追加で行える業務
認定司法書士(法務大臣の認定を受けた司法書士)は、上記に加えて以下の業務が可能となります(司法書士法3条1項6~8号)。
- 簡易裁判所で扱う以下の手続の代理(※上訴の提起や再審、強制執行の一部などは除く)
- 訴額140万円を超えない民事訴訟
- 支払督促、和解、少額訴訟債権執行など
- 訴額140万円以内の民事紛争に関する相談や仲裁・裁判外和解の代理
- 対象土地の価額が140万円を超えない場合の筆界特定手続の代理
認定司法書士になるための要件
- 「特別研修」を修了
- 法務大臣が実施する「簡易訴訟代理等能力認定考査」に合格
法律事務所と法務事務所の違いは「弁護士の有無」
街中やウェブサイトで「〇〇法律事務所」「〇〇法務事務所」の表記を見かけることがあります。
一見すると似ていますが、次の点で異なります。
- 法律事務所
- 弁護士事務所の正式名称(弁護士法20条1項)
- 弁護士または弁護士法人のみが「法律事務所」の標示・記載が可能
- 法務事務所
- 弁護士ではない士業(司法書士や行政書士など)が使用する名称
- 日本司法書士連合会によれば、法律事務所と誤認されないよう「司法書士」の文言を必ず明記する必要がある
つまり、「法律事務所」は弁護士がいる事務所であり、「法務事務所」は弁護士以外の士業事務所となります。
分野別:弁護士と司法書士の役割の違い
ここでは一般的な民事事件を例に、弁護士と司法書士の対応範囲をまとめました。
分野 | 内容 | 弁護士 | 司法書士 |
---|---|---|---|
離婚問題 | 養育費・財産分与・慰謝料などの訴訟資料作成、交渉代理 | 〇 | × |
家事調停・離婚請求訴訟での訴訟代理 | 〇 | × | |
離婚協議書の作成 | 〇 | △(書類作成のみ可能) | |
遺言・相続分野 | 遺産分割協議書、遺産分割調停申立書の作成 | 〇 | △(書類作成のみ可能) |
遺言書作成の相談 | 〇 | × | |
遺産分割審判・遺留分侵害請求調停などの訴訟代理 | 〇 | × | |
債務整理分野 | 自己破産・個人再生申立ての代理(申立代理人) | 〇 | × |
申立書類の作成や相談 | 〇 | △(書類作成・手続支援は可能) | |
過払い金返還請求 | 〇 | △(140万円以下のみ代理可) | |
交通事故分野 | 自賠責保険金の請求 | 〇 | △(書類作成・相談は可能) |
加害者への損害賠償請求(示談交渉・訴訟代理) | 〇 | △(140万円以下のみ簡易裁判所で代理可) |
- 〇:可能 / △:一部可能 / ×:不可能
弁護士の強み
- 訴額や裁判所の種類を問わず、すべての法律業務を代理できる
- 刑事事件や家事事件(離婚、相続など)も含め、幅広く対応可能
- 交渉や訴訟での代理権が制限されない
司法書士の強み
- 不動産や商業登記、供託手続きに精通
- 認定司法書士であれば、簡易裁判所管轄(140万円以下)の民事事件について代理可能
- 弁護士に比べて依頼費用が抑えられるケースもある
弁護士の業務範囲
弁護士は、「民事事件」「刑事事件」「家事事件」「行政事件」などを含む法律事務全般」を扱うことができます(弁護士法3条1項、2項)。
- 刑事事件
- 被疑者・被告人の弁護
- 警察や検察から取り調べを受ける段階(捜査段階)から関与が可能
- 民事・家事事件
- 各種訴訟代理(離婚、相続、債務整理、交通事故など)
- 交渉代理、和解、調停、審判、訴訟すべてに対応
また、他の士業(弁理士、税理士、行政書士等)の業務も「一般の法律事務」として範囲に含まれます。
そのため、1つの事務所でワンストップの支援が必要な場合は、弁護士へ依頼するのが適切なケースも多いです。
司法書士の業務範囲
司法書士が主に取り扱うのは、登記・供託に関する書類作成や手続代理です。
たとえば、不動産の売買や相続時の名義変更、商業登記などは司法書士に依頼するケースが多いでしょう。
認定司法書士の民事事件対応
- 過払い金返還請求(不当利得返還請求)
- 140万円以下なら簡易裁判所での代理が可能
- ただし、相手方や訴訟額によっては地方裁判所に移る可能性があり、その場合は代理できない
- 債務整理全般
- 自己破産や個人再生の申立書類の作成は可能
- しかし「申立代理人」として手続きに同行することはできないため、裁判所に本人が出頭する必要がある
過払い金請求の注意点
- 訴額が140万円を超える場合には、認定司法書士では訴訟代理ができなくなる
- 相手方が控訴・上告すると、地方裁判所や高等裁判所に移り、司法書士だけでは対応できない
もし140万円を超える債権回収が見込まれるときは、最初から弁護士に依頼するほうがスムーズに進むケースも多々あります。
まとめ:弁護士と司法書士の違いは業務範囲と専門性
- 弁護士
- すべての法律事件を取り扱える
- 交渉・訴訟代理から刑事弁護まで幅広く対応可能
- 司法書士
- 主に登記・供託に強みを持つ
- 認定司法書士なら簡易裁判所案件(140万円以下)で代理可能
法律トラブルは内容や規模、将来的な訴訟リスクによって、どちらに依頼したほうがスムーズかが変わります。
すべての手続を一括で依頼したいなら弁護士、登記・供託が中心なら司法書士など、状況に応じて上手に使い分けましょう。
特に大きな金額が絡む訴訟や離婚・相続問題、刑事事件に発展しそうなケースでは、最初から弁護士に相談すると安心です。
一方、登記や140万円以下の訴額に関する業務であれば、司法書士への依頼も選択肢の一つとなります。
まずは「どの専門家に相談すればよいか」判断がつかない場合は、最寄りの法律事務所や司法書士事務所で無料相談を行っているところを探してみることをおすすめします。
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この記事の監修者
リーガル専門コンサルタントとして、弁護士・法務人材を中心に転職支援を行う。中国発大手テクノロジー企業の日本法人にて創業メンバーとして事業開発・推進に従事。スタートアップ〜大手事業会社での事業開発、マネジメント経験を有していることから、様々な角度からの俯瞰したアドバイスを強みとする。
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