CLO(チーフリーガルオフィサー)とは企業法務の責任者のこと
- 更新日:2025.07.09
企業にお勤めの方は「CLO」という単語を耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。
CLOは多義で、意味する内容は場合により異なります。
今回はChief leagal officer(チーフ・リーガル・オフィサー)の略称で最高法務責任者を意味する「CLO」について、仕事内容などを解説します。
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CLOとは企業法務の責任者のこと
CLOとはChief leagal officer(チーフ・リーガル・オフィサー)の略称で、最高法務責任者を意味します。
CLOはGeneral Counsel(ゼネラルカウンセル)と呼ばれることもあります。
主に外資系企業では、CLOよりGeneral Counsel(ゼネラルカウンセル)が定着しています。
また、CLOは最高人材教育責任者(Chief Learning Officer)・ローン担保証券(Collateralized Loan Obligation)の略称としても、用いられることがあります。
このように、CLOは多義的に用いられています。
ここでは、最高法務責任者であるCLOについて紹介します。
「CxO」の肩書の1つ
CxOとは、Chief x Officer(チーフ・オフィサー)です。
Chiefは組織の長や責任者、「 Officer」は役員・責任者を意味し、「x」には担当する業務や機能の頭文字が入ります。
例えば、CEOはChief Executive Officer、すなわち最高経営責任者を意味することになります。
その他のCxOの具体例として
- CFO:Chief Financial Officer=最高財務責任者
- COO:Chief operating officer=最高執行責任者
などが挙げられます。
CxOは、欧米型の企業で発展したものです。
欧米型の企業の特徴は、責任と役割の明確化が求められている点にあります。
近年経済の分業化が進み、日本でも責任と役割の明確化が要求されるようになりました。
そのため、日本でも責任と役割の所在が不明瞭な「代表取締役社長」などの表記を避け、CxOに基づく役職名が用いられるようになってきています。
企業によって意味が異なる
CLOは、
- Chief Learning Officer=最高人材教育責任者
- Collateralized Loan Obligation=ローン担保証券
としても用いられることがあります。
最高人材教育責任者(Chief Learning Officer)は、経営目標を達成するための人材開発や学習プログラムなど「教育」に特化した責任を負います。
ローン担保証券(Collateralized Loan Obligation)は、金融機関が事業会社などに対して貸し出している貸付債権(ローン)を証券化したもので、ローンの元利金を担保にして発行される債券(資産担保証券)のことを意味します。
このように、CLOは多義的に用いられています。
CLOという語を耳にした際には、最高法務責任者としてのCLOを指しているのか、最高人材教育責任者としてのCLOを指しているのか、はたまたローン担保証券としてのCLOを指しているのかを見極める必要があります。
※この記事ではChief legal officer(チーフ・リーガル・オフィサー)の略称で最高法務責任者を意味する「CLO」について解説します。
CLOの仕事内容
CLOは全ての法務に関する業務責任を負います。
従来、日本の法務といえば、契約書のレビューや紛争の事前予防的な観点に基づく契約書の作成等が主な仕事内容でした。
これらの仕事内容はCLOのような会社内部の責任者によって行われるのではなく、顧問先の弁護士等に外部委託することによってなされていました。
したがって、従来型の日本の法務は、企業の成長を促すオフェンス的な印象ではなく、企業を紛争から守るというディフェンス的な印象が強いといえます。
しかし、日本企業の国際競争の強化が喫緊の課題である昨今において、従来型の「守る」法務に加え、「攻める」法務であることが求められつつあります。
そこで、CLOには、契約書のレビューや紛争の事前予防的な観点に基づく契約書の作成だけでなく、ガバナンス体制の強化について CEOに提言すること、企業戦略について法務の観点から意見を述べることまで、幅広い役割が求められるようになっています。
CLOの代表的な業務には、
- コンプライアンスの強化についてCEOに提言する
- 法律の改正や新たな制定に伴う規制対応
- 企業法務に関する法的アドバイス
- 内部統制システムの構築
- 契約書のレビュー・作成
- 労務・倒産等の法律問題の処理
などがあります。
さらに、近年ではリーガルテックの発達により、リーガルテックの活用に向けた制度づくりもCLOの業務内容の一つとなりつつあります。
法務部員との違い
社内の立場 | 業務内容 | |
CLO | 役員 | 法務に関する全ての業務責任を負う |
法務部員 | 社員 | 指揮監督命令に基づく |
CLOは法務部員と異なり、自らの判断に基づいて経営戦略を企画することができ、企業の成長に大きく貢献します。
CLOはCEOやCFOと同じく経営責任者です。
法務部員はあくまで指示監督者の指揮監督命令を受けて業務を遂行する一社員で、仕事内容は上司からの指揮命令に基づく契約書の修正や現地調査です。
法律顧問や役員との違い
経営責任 | 企業方針の決定権限 | |
CLO | 負う | 有り |
法律顧問 | 負わない | 無し |
法律顧問とCLOは共に契約書のレビューや作成をするという点で同じです。
しかし、CLOは社内の人間であり経営責任を負いますが、法律顧問は社外の人間であり原則として経営責任を負いません。
CLOや法律顧問と異なり、企業の経営方針に意見をすることができます。
そのため、CLOは企業を成長させるべく、一経営者としてリーダーシップの役割を果たすことが求められます。
また、CLOは一経営者であるため会社役員の中に含まれます。そして、CLOは他の役員と異なり法的観点から企業成長を促進させるためのアドバイスをします。
具体的には、コーポレート機能の強化や規制対応について、他の役員に対して意見を提言します。
欧米系と日系の違い
CLOの仕事内容は、欧米型の企業と日本の企業で異なります。
先程CLOは欧米型の企業で発達したと紹介しました。
欧米の企業では、法律顧問などの外部の人間から専門的な情報を得た上で、CLOやCEOがかかる情報に基づいて経営判断を行う形がとられていました。
欧米のCLOは法務の責任を負うのはもちろんのこと、法律的なリスクの明示にとどまらず、その解決策やその後の企業戦略を他の役員に提示します。
欧米型の企業にとって法律顧問の外部委託先は、あくまで経営判断の一助をするという関係性であるといえます。
日本のCLOは、欧米型のCLOの文化を取り入れ発達したものの、法律顧問の法的アドバイスを全面的に受け入れてしまう傾向があります。
この背景は、日本企業が兼ねてから法的な判断が伴う経営判断について外部の弁護士に委ねていたという従来の日本の企業法務のモデルです。
欧米型のCLOは、法律顧問が積極的なアドバイスをしても「NO」と断ることがあります。
このように、日本のCLOも会社の役員である以上、経営リスクを考慮しつつ決断力と勇気を持って決断する必要があります。
しかし日本のCLOは欧米のCLOと比べて、経営判断を積極的に行わず、依然として法的リスクの提示などのデフェンス面に偏る傾向にあります。
CLOは最高法務責任者である以上、法的なアドバイスを超えてCEOとともに意思決定をしていかなければなりません。
日本のCLOの課題として、名実ともに法務組織のトップという自覚と責任を持ち、役員のなかに入り込み、ダイレクトにアドバイスしていくことが挙げられます。
CLOに必要な資格・経験
CLOに必要な資格はありません。
しかしCLOには高度な法律知識と経験が要求されるので、弁護士資格保有者が多いとされています。
アメリカでは、法務のトップであるCLOは弁護士資格を有していることが当然となっているようです。
CLOには受け身の法務から脱却し、リスクを解決の手段を提案し、さらには、会社として経営リスクを取れるか、取るべきではないかなど、一歩踏み込んだ提案ができる法務であることが求められます。
したがって、弁護士として株主総会等の議会対応の経験やコーポレートガバナンスについての知識に富んだ人材が、CLOになりやすいといえます。
また、CLOは役員である以上、当該企業に関する業務知識や高いコミュニケーション能力、国際化するビジネスの世界でも通用する高い語学力が要求されるでしょう。
まとめ
- CLO(Chief leagal officer)とは最高法務責任者のこと
- CLOの仕事内容は法務の責任を負うことに加え、法的リスク管理及びそれを踏まえた戦略の提示
- CLOに必要な資格はないが弁護士資格保有者が多い傾向にある
以上、CLOについて解説しました。
CLOは日本ではまだまだCxOの中での知名度があまり高くなく、複数の意味を持つため使い分けが難しいです。
場面に応じて正しく意味を理解し使い分けてください。
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この記事の監修者
経理を主軸とした管理部門の方のキャリア支援を専門としており、特に伝統的な日系大手企業への転職に強みを持つ。その他にも国内外の会計事務所や、メーカー、商社、金融、IT、医薬ヘルスケア、消費財等々、多岐に渡る業界の企業との深いコネクションを有しており、会社規模もスタートアップから上場企業まで幅広く対応。
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