「弁護士はクライアントのために」新時代を生き残る新しい弁護士像とは【東京スタートアップ法律事務所 代表弁護士インタビュー(前編)】

北海道から九州まで全国に展開し、今まさに成長中の東京スタートアップ法律事務所。今回アガルートキャリアは代表弁護士の中川先生をお迎えし、前後編に分けてインタビューを行いました。

前編では次のようなお話をお聞きしました。

  • 中川先生が弁護士になるまでの経緯
  • 東京スタートアップ法律事務所が抱える主な案件
  • お客様の悩みに真剣に向き合う姿勢の重要性 など

他事務所への移籍を考えている弁護士の方や、東京スタートアップ法律事務所がどのような事務所か気になる弁護士の方は、ぜひ後編とあわせ本記事をお読みください。

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弁護士よりバスケットボール選手になりたかった学生時代

まずは中川先生の自己紹介と、事務所のご紹介をお願いします。

東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士の中川浩秀と申します。修習期は64期です。法律事務所は設立して6年が経ちました。当事務所は北海道から宮崎まで国内で19拠点展開し、弁護士は33名所属しています。

ありがとうございます。6年でほぼ20拠点というのはなかなか早いですよね。

もうちょっと早く成長させられたんじゃないかとも思うのですが、やってみたら結構難しかったですね。

そのあたりもぜひ伺いたいです。中川先生が弁護士を目指したのはどのような理由でしょうか。

あまり人に誇れるような理由は実はありません。僕、学生時代はずっとバスケットボールの選手になりたくて競技を続けてきたのですが、そこまですごい選手ではなかったんです。

20歳ぐらいのときにさすがに「このままじゃまずい」と気づいて。このままだとバスケットボールの選手にもなれないし、何者にもなれないんじゃないかと感じたんです。

それから自分の人生を見つめなおして、このままバスケットボールを続けるか、もしくは他の何になるかを考えました。内部進学でたまたま法学部だったこともあり、一番最初に弁護士が浮かびました。

内部進学だった分あまりしっかり勉強をしたことがなかったので、一度真剣にやってみようかと。ですから、一言で言うなら何者かになりたかった。それが弁護士だったということです。

就職氷河期の64期。初入所先は半年でクビに…

中川先生の弁護士としてのファーストキャリアはどんなところからスタートされたのですか?

ファーストキャリアはつまずきっぱなしでした。64期はおそらく一番就職氷河期で、あまり弁護士の求人がなくて、皆就職するのにすごく苦労していたタイミングでした。

僕は決して優秀な方ではなかったので、なんとか大阪の小さな事務所に滑り込みで採用してもらい、いわゆる「町弁」業務的な仕事をしていました。でも、その事務所は半年くらいでクビになりました。

えっ、そうなんですか? 理由を聞いてもよいですか?

直接的に言われた理由としては「女性が欲しかったんだ」ということでしたが。半年経ってからですかという(笑)。

先に言ってほしいですよね(笑)。

他にも理由はあったと思うのですが、直接言われたのはそういうことでしたね。

その後は別の事務所に移られたのですか?

友人が働いていたアディーレ法律事務所に入れてもらっていました。

アディーレ法律事務所でも民事事件を中心に扱っていたのでしょうか。

実は当時は弁護士をずっとやっていく覚悟が特になくて、「なんか弁護士何年かやったら別のことやりたいな」と思っていました。

しかも「過払い請求案件はあと数年で終わるよ」と当時から言われていたので、あと数年で終わるなら、今は過払いに乗っかってあとはまた違うことをやればいいかと、そんな風に思っていたんですよね。

参考:弁護士の転職・求人の市場、中途採用の動向を専門エージェントが解説

フラフラしていた20代「いい加減にしろ」友人の喝 3ヶ月で事務所設立

それからどういった経緯で自分で事務所設立するに至ったのですか?

当時はなんというか「あれもこれもやりたい!」という思いが強かったんです。実はバスケットボールもまだあきらめきれていませんでしたし。

まだ戻ってくるんですね、その話(笑)。

そうですよね(笑)。

弁護士になって3年目ぐらいのときに、1年ほどバスケットボールをすごく練習して、過去最高の自分を作ってチームのトライアウトを受けたんですよ。

すごいですね。

29歳になる歳に受けまして。当然ダメだったんですけど。

またそのころ起業ブームみたいな風潮があり、「なんか自分もITで起業したいな」と。友人のエンジニアにお願いしてちょっとしたアプリを作ってみたりもしました。

そんなことを3つほど並行してやり……まあ要するにフラフラしていたんです。モラトリアム期間といいますか。

そうしたら同い年の起業家の友人に「いい加減にしたら? 弁護士なんだから、1回法律事務所作ってスケールさせてみたら?」と言われまして。「そんなこともできないなら成功しないよ」と、けっこうキツめに言われたんです。

それもそうかと思い、3か月後には事務所を作っていました。

設立直後は経営に難航していた

それがちょうど6年前ですか?

はい。何をやっても上手くいかなかったんです。バスケットボールのプロテストを受けるとか色々やってはいましたが、結局上手くいっていないし、弁護士も3年やっただけで中途半端ですし。

このままで大丈夫だろうかと思っていたところに友人にズバっと言われたので、今回は言うことを聞いてみようと。そんな感じでした。

どの領域をやろうとか、どの案件をメインにしよう、こういう事務所にしていこうなど、どんな考え方で事務所をスタートしたのでしょうか。

「これをやったらすごく上手くいくだろう」といったプランは全くありませんでした。

走りながらお金が尽きる前に軌道に乗せようみたいなことしか考えていませんでしたね。

自分にできる案件ならどんなものでも受け付けるといった姿勢でやっていたのですか?

そうですね。よく「最初から顧問先があったんですか?」とか「案件を紹介してくれる人がいたんですか?」と尋ねられるのですが、まったくありませんでした。本当にゼロ。お金も尽きてしまっていて、銀行で1000万円ほど借り入れました。

ハラハラドキドキする話ですね。

ええ、まあヤケクソですね。

革新的なビジネスより「当たり前」を徹底

現在は全国に20近い拠点があるまでに成長されていますが、グッと伸びてきた契機みたいなことはありましたか?

当事務所の場合は割と凡事徹底です。

今も何か革新的なビジネスモデルがあってやっているわけではありません。

目の前にある課題を解決するためにその都度自分で学んだり、やってみて失敗したらやり直してと、当たり前のことをしっかり当たり前にやるのが当事務所の考え方です。

本当は3年で弁護士が50人くらいはいる予定だったんですよ。

最初はやはりお客様を集めなければいけないので、その方法を一生懸命考えたり、人に聞いたりしてやってみて失敗して、いろいろ試しているうちにお客様が増えてくる。

お客様が増えたら今度は人手が足りません。すると次は「採用ってどうするんだっけ」となり、全く分からないので他の事務所がどう採用しているのかを聞きますよね。

そうこうしていると採用したは良いものの辞めてしまって、また人が足りなくなるんです。じゃあ長く残ってもらうためにはどうしたらいいのかな、と……その都度出てくる課題を一つひとつ解決してきたのが実態です。

現在はどのような案件を受けることが多いのでしょうか。

割と市場の情勢をそのまま反映しています。東京三会(東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会の総称)で法律相談に来る人の相談内容の割合で多いのは、家事事件・男女問題なんですよ。ですから当事務所もその割合が多いです。

あとは刑事事件・企業法務・交通事故・相続関係でしょうか。最近はあまり受任件数が多くありませんが、債務整理の案件もあります。

参考:弁護士の年収はいくら?キャリア別・分野別の相場と年収アップの秘訣

代表の看板で案件を取るのではいつか限界が来る

案件の獲得はどのような方法で行っていますか?

一番はWeb広告ですね。というのも、僕、会食が苦手なんですよ。

弁護士はよく会食に行くイメージがありますよね。

皆さんよく行かれますが、僕はほとんど行ってません。

たくさん人がいるところに行くのが得意ではないのと、自分が前に出て紹介を受ける形でお客様を増やしていると、事務所の規模がどこかで限界を迎えるのではないかと思ったんですよね。

だから当事務所はオンラインの広告がメインの集客手段です。

新規獲得より個人のお客様のLTVを高めたい

広告運用専属のチームがいるのですか?

実は僕がほとんどやっています。

一部、広告代理店に任せたり、事務所内の担当者もいたりはするのですが、大枠を決め業者とのやり取りをするのは僕です。

広告を出しながら集客を進め、採用も行いつつこれからまた伸ばしていこうという。

はい。あとはやはりビジネスモデルを考えなければいけないですね。

ずっと新規のお客様を取り続けるのはしんどいし、いつか限界が来ることも分かっています。うちが今一番欲しいのはリピーターと紹介なんです。

ここを取っていくためにはどうしたらよいか。個人のお客様は単発で終わることがほとんどなのですが、何とか継続的な契約につなげられないか悩んでいます。

一人のお客様のライフタイムバリューを高めるのが、現在取組んでいる目下の課題です。

事務所理念「UPDATE JAPAN」にこめられた本当の意味

東京スタートアップ法律事務所の理念についてお聞きします。Webサイトなどでも打ち出している「UPDATE JAPAN(アップデートジャパン)」には、どのような思いが込められているのですか?

新しい時代の弁護士像を確立し、日本のアップデートに貢献するのが「UPDATE JAPAN」という言葉の意味です。

この理念は事務所として実現したいビジョン・価値観でもあるのですが、これを支える大きなバリューとして「For Client(フォークライアント)」があります。

言葉のままではありますが、弁護士はお客様のために存在するものであることをあえて確認しているんです。

なぜこのようなことをしているかというと、弁護士になったときに僕が感じた違和感が元にあります。

法律事務所に相談に来る方はけっこう追い詰められて切羽詰まっている方が多いんです。

たとえば子どもを3人抱えて離婚したいとか、息子が逮捕されたとか、一世一代の勝負をかけて起業したから失敗したら破産します、みたいな方々が来ます。

そういうお客様に対して弁護士は相手の気持ちを慮った態度でないといけないと思うのですが、すべての弁護士がそういう態度かと言えば、僕にはそうは見えなかった。

相手の気持ちを理解しようとする姿勢に欠けている人が少なくなかったのと、どうしても第三者的になりがちなんですよね、弁護士って。

もちろんお客様が実現不可能に近い要望が出てくることもありますが、保守的で裁判官のようなジャッジししてしまうケースがよく見られました。相手に寄り添う姿勢が弱く感じたんです。

それで、これから生き残っていく弁護士は「For Client」の価値観を持った人なんだろうと思いました。

「UPDATE JAPAN」は新しい弁護士像を定義すると言いましたが、AIやロボティクスなど新しいテクノロジーに精通してなんでもこなせる弁護士のことだと思われることがあります。

しかし僕がイメージしているのはクライアントに寄り添って、クライアントのためにクライアントの権利を実現する弁護士です。このイメージに沿った弁護士がたくさん集まって仕事をすれば、この国が少しでもいい方向に行くんじゃないかと。

それを「UPDATE」という言葉で表現しています。

お客様のために何ができるかを追及する法律事務所でありたい

「クライアントのために」が本質で、そのために徹底的に仕事をするのが「新しい弁護士」ということですね。

そうです。

司法制度改革によって弁護士の数はこの20年で倍以上に増えました。

広告も解禁されて多くの弁護士も参入してとなると、やはり競争が起きてきます。

昔は弁護士が圧倒的に不足していて情報が少なかったので、お客様側で弁護士を選ぶことができませんでした。だからこそ、そういう状況に「あぐらをかいて」商売ができた面がある。それだとどうしても「For Client」の意識は薄くなっていく人はいたと思います。

その認識を我々が改めないと生き残っていけません。

お客様を集めるにしても、広告を極めればいいというわけではない。長く生き残っていくためには、本質的な部分を追及しなければいけません。

自分がピンチのときに本気で助けてくれた人、自分と向き合ってくれた人のことは一生忘れないじゃないですか。お客様のためにベストを尽くすことが非常に重要だと僕は思っているので、わざわざ「For Client」を定義しました。

その先にあるのが「UPDATE JAPAN」。そういう位置づけです。

非常によくわかりました。ありがとうございます。後半では今うかがった中川先生の理念をどのように事務所内に浸透させていっているかなど、詳しくお話をお聞きしたいと思います。後半もよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

後編:マーケットで圧倒的に強い弁護士に|理念を具現化した独自の評価制度
本記事の内容は動画でもご視聴いただけます。
動画:「弁護士はクライアントのために」新時代を生き残る新しい弁護士像とは

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この記事の監修者

2016年創業期の株式会社ファンオブライフに参画し、人材紹介サービス立ち上げ・拡大に従事。現在はリーガル専門のエグゼクティブコンサルタントとして、弁護士・法務パーソンのキャリア支援を行う。国内外の法律事務所や、メーカー・商社・金融・IT業界等の企業法務部とのネットワークが強み。​

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