
事務所を知る
東京スタートアップ法律事務所が考える、新時代を生き残る新しい弁護士像
東京スタートアップ法律事務所
代表社員弁護士
中川 浩秀
北海道から九州まで全国に展開し、今まさに成長中の東京スタートアップ法律事務所。今回アガルートキャリアは代表弁護士の中川先生をお迎えし、前後編に分けてインタビューを行いました。
前編では次のようなお話をお聞きしました。
- 中川先生が弁護士になるまでの経緯
- 東京スタートアップ法律事務所が抱える主な案件
- お客様の悩みに真剣に向き合う姿勢の重要性 など
他事務所への移籍を考えている弁護士の方や、東京スタートアップ法律事務所がどのような事務所か気になる弁護士の方は、ぜひお読みください。
弁護士よりバスケットボール選手になりたかった学生時代

東京スタートアップ法律事務所 代表社員弁護士 中川 浩秀様
まずは中川先生の自己紹介と、事務所のご紹介をお願いします。
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士の中川浩秀と申します。修習期は64期です。法律事務所は設立して6年が経ちました。当事務所は北海道から宮崎まで国内で19拠点展開し、弁護士は33名所属しています。
ありがとうございます。6年でほぼ20拠点というのはなかなか早いですよね。
もうちょっと早く成長させられたんじゃないかとも思うのですが、やってみたら結構難しかったですね。
そのあたりもぜひ伺いたいです。中川先生が弁護士を目指したのはどのような理由でしょうか。
あまり人に誇れるような理由は実はありません。僕、学生時代はずっとバスケットボールの選手になりたくて競技を続けてきたのですが、そこまですごい選手ではなかったんです。
20歳ぐらいのときにさすがに「このままじゃまずい」と気づいて。このままだとバスケットボールの選手にもなれないし、何者にもなれないんじゃないかと感じたんです。
それから自分の人生を見つめなおして、このままバスケットボールを続けるか、もしくは他の何になるかを考えました。内部進学でたまたま法学部だったこともあり、一番最初に弁護士が浮かびました。
内部進学だった分あまりしっかり勉強をしたことがなかったので、一度真剣にやってみようかと。ですから、一言で言うなら何者かになりたかった。それが弁護士だったということです。
就職氷河期の64期。初入所先は半年でクビに…
中川先生の弁護士としてのファーストキャリアはどんなところからスタートされたのですか?
ファーストキャリアはつまずきっぱなしでした。64期はおそらく一番就職氷河期で、あまり弁護士の求人がなくて、皆就職するのにすごく苦労していたタイミングでした。
僕は決して優秀な方ではなかったので、なんとか大阪の小さな事務所に滑り込みで採用してもらい、いわゆる「町弁」業務的な仕事をしていました。でも、その事務所は半年くらいでクビになりました。
えっ、そうなんですか? 理由を聞いてもよいですか?
直接的に言われた理由としては「女性が欲しかったんだ」ということでしたが。半年経ってからですかという(笑)。
先に言ってほしいですよね(笑)。
他にも理由はあったと思うのですが、直接言われたのはそういうことでしたね。
その後は別の事務所に移られたのですか?
友人が働いていたアディーレ法律事務所に入れてもらっていました。
アディーレ法律事務所でも民事事件を中心に扱っていたのでしょうか。
実は当時は弁護士をずっとやっていく覚悟が特になくて、「なんか弁護士何年かやったら別のことやりたいな」と思っていました。
しかも「過払い請求案件はあと数年で終わるよ」と当時から言われていたので、あと数年で終わるなら、今は過払いに乗っかってあとはまた違うことをやればいいかと、そんな風に思っていたんですよね。
フラフラしていた20代「いい加減にしろ」友人の喝 3ヶ月で事務所設立
それからどういった経緯で自分で事務所設立するに至ったのですか?
当時はなんというか「あれもこれもやりたい!」という思いが強かったんです。実はバスケットボールもまだあきらめきれていませんでしたし。
まだ戻ってくるんですね、その話(笑)。
そうですよね(笑)。
弁護士になって3年目ぐらいのときに、1年ほどバスケットボールをすごく練習して、過去最高の自分を作ってチームのトライアウトを受けたんですよ。
すごいですね。
29歳になる歳に受けまして。当然ダメだったんですけど。
またそのころ起業ブームみたいな風潮があり、「なんか自分もITで起業したいな」と。友人のエンジニアにお願いしてちょっとしたアプリを作ってみたりもしました。
そんなことを3つほど並行してやり……まあ要するにフラフラしていたんです。モラトリアム期間といいますか。
そうしたら同い年の起業家の友人に「いい加減にしたら? 弁護士なんだから、1回法律事務所作ってスケールさせてみたら?」と言われまして。「そんなこともできないなら成功しないよ」と、けっこうキツめに言われたんです。
それもそうかと思い、3か月後には事務所を作っていました。
設立直後は経営に難航していた
それがちょうど6年前ですか?
はい。何をやっても上手くいかなかったんです。バスケットボールのプロテストを受けるとか色々やってはいましたが、結局上手くいっていないし、弁護士も3年やっただけで中途半端ですし。
このままで大丈夫だろうかと思っていたところに友人にズバっと言われたので、今回は言うことを聞いてみようと。そんな感じでした。
どの領域をやろうとか、どの案件をメインにしよう、こういう事務所にしていこうなど、どんな考え方で事務所をスタートしたのでしょうか。
「これをやったらすごく上手くいくだろう」といったプランは全くありませんでした。
走りながらお金が尽きる前に軌道に乗せようみたいなことしか考えていませんでしたね。
自分にできる案件ならどんなものでも受け付けるといった姿勢でやっていたのですか?
そうですね。よく「最初から顧問先があったんですか?」とか「案件を紹介してくれる人がいたんですか?」と尋ねられるのですが、まったくありませんでした。本当にゼロ。お金も尽きてしまっていて、銀行で1000万円ほど借り入れました。
ハラハラドキドキする話ですね。
ええ、まあヤケクソですね。
革新的なビジネスより「当たり前」を徹底
現在は全国に20近い拠点があるまでに成長されていますが、グッと伸びてきた契機みたいなことはありましたか?
当事務所の場合は割と凡事徹底です。
今も何か革新的なビジネスモデルがあってやっているわけではありません。
目の前にある課題を解決するためにその都度自分で学んだり、やってみて失敗したらやり直してと、当たり前のことをしっかり当たり前にやるのが当事務所の考え方です。
本当は3年で弁護士が50人くらいはいる予定だったんですよ。
最初はやはりお客様を集めなければいけないので、その方法を一生懸命考えたり、人に聞いたりしてやってみて失敗して、いろいろ試しているうちにお客様が増えてくる。
お客様が増えたら今度は人手が足りません。すると次は「採用ってどうするんだっけ」となり、全く分からないので他の事務所がどう採用しているのかを聞きますよね。
そうこうしていると採用したは良いものの辞めてしまって、また人が足りなくなるんです。じゃあ長く残ってもらうためにはどうしたらいいのかな、と……その都度出てくる課題を一つひとつ解決してきたのが実態です。
現在はどのような案件を受けることが多いのでしょうか。
割と市場の情勢をそのまま反映しています。東京三会(東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会の総称)で法律相談に来る人の相談内容の割合で多いのは、家事事件・男女問題なんですよ。ですから当事務所もその割合が多いです。
あとは刑事事件・企業法務・交通事故・相続関係でしょうか。最近はあまり受任件数が多くありませんが、債務整理の案件もあります。
代表の看板で案件を取るのではいつか限界が来る

「僕が前に出なくても案件が取れる体制構築が課題です」
案件の獲得はどのような方法で行っていますか?
一番はWeb広告ですね。というのも、僕、会食が苦手なんですよ。
弁護士はよく会食に行くイメージがありますよね。
皆さんよく行かれますが、僕はほとんど行ってません。
たくさん人がいるところに行くのが得意ではないのと、自分が前に出て紹介を受ける形でお客様を増やしていると、事務所の規模がどこかで限界を迎えるのではないかと思ったんですよね。
だから当事務所はオンラインの広告がメインの集客手段です。
新規獲得より個人のお客様のLTVを高めたい
広告運用専属のチームがいるのですか?
実は僕がほとんどやっています。
一部、広告代理店に任せたり、事務所内の担当者もいたりはするのですが、大枠を決め業者とのやり取りをするのは僕です。
広告を出しながら集客を進め、採用も行いつつこれからまた伸ばしていこうという。
はい。あとはやはりビジネスモデルを考えなければいけないですね。
ずっと新規のお客様を取り続けるのはしんどいし、いつか限界が来ることも分かっています。うちが今一番欲しいのはリピーターと紹介なんです。
ここを取っていくためにはどうしたらよいか。個人のお客様は単発で終わることがほとんどなのですが、何とか継続的な契約につなげられないか悩んでいます。
一人のお客様のライフタイムバリューを高めるのが、現在取組んでいる目下の課題です。
事務所理念「UPDATE JAPAN」にこめられた本当の意味
東京スタートアップ法律事務所の理念についてお聞きします。Webサイトなどでも打ち出している「UPDATE JAPAN(アップデートジャパン)」には、どのような思いが込められているのですか?
新しい時代の弁護士像を確立し、日本のアップデートに貢献するのが「UPDATE JAPAN」という言葉の意味です。
この理念は事務所として実現したいビジョン・価値観でもあるのですが、これを支える大きなバリューとして「For Client(フォークライアント)」があります。
言葉のままではありますが、弁護士はお客様のために存在するものであることをあえて確認しているんです。
なぜこのようなことをしているかというと、弁護士になったときに僕が感じた違和感が元にあります。
法律事務所に相談に来る方はけっこう追い詰められて切羽詰まっている方が多いんです。
たとえば子どもを3人抱えて離婚したいとか、息子が逮捕されたとか、一世一代の勝負をかけて起業したから失敗したら破産します、みたいな方々が来ます。
そういうお客様に対して弁護士は相手の気持ちを慮った態度でないといけないと思うのですが、すべての弁護士がそういう態度かと言えば、僕にはそうは見えなかった。
相手の気持ちを理解しようとする姿勢に欠けている人が少なくなかったのと、どうしても第三者的になりがちなんですよね、弁護士って。
もちろんお客様が実現不可能に近い要望が出てくることもありますが、保守的で裁判官のようなジャッジししてしまうケースがよく見られました。相手に寄り添う姿勢が弱く感じたんです。
それで、これから生き残っていく弁護士は「For Client」の価値観を持った人なんだろうと思いました。
「UPDATE JAPAN」は新しい弁護士像を定義すると言いましたが、AIやロボティクスなど新しいテクノロジーに精通してなんでもこなせる弁護士のことだと思われることがあります。
しかし僕がイメージしているのはクライアントに寄り添って、クライアントのためにクライアントの権利を実現する弁護士です。このイメージに沿った弁護士がたくさん集まって仕事をすれば、この国が少しでもいい方向に行くんじゃないかと。
それを「UPDATE」という言葉で表現しています。
お客様のために何ができるかを追及する法律事務所でありたい
「クライアントのために」が本質で、そのために徹底的に仕事をするのが「新しい弁護士」ということですね。
そうです。
司法制度改革によって弁護士の数はこの20年で倍以上に増えました。
広告も解禁されて多くの弁護士も参入してとなると、やはり競争が起きてきます。
昔は弁護士が圧倒的に不足していて情報が少なかったので、お客様側で弁護士を選ぶことができませんでした。だからこそ、そういう状況に「あぐらをかいて」商売ができた面がある。それだとどうしても「For Client」の意識は薄くなっていく人はいたと思います。
その認識を我々が改めないと生き残っていけません。
お客様を集めるにしても、広告を極めればいいというわけではない。長く生き残っていくためには、本質的な部分を追及しなければいけません。
自分がピンチのときに本気で助けてくれた人、自分と向き合ってくれた人のことは一生忘れないじゃないですか。お客様のためにベストを尽くすことが非常に重要だと僕は思っているので、わざわざ「For Client」を定義しました。
その先にあるのが「UPDATE JAPAN」。そういう位置づけです。
理念の徹底が個人の評価につながる仕組み作りを行った
東京スタートアップ法律事務所が大切にしている「For Client」という価値観を所属弁護士の間で浸透させるために、何か工夫していることなどはありますか?
弁護士はお客様のために存在するもので、お客様のピンチに本気で向き合うことを「For Client」と定義しています。ただ残念ながら人には利害関係があります。
僕はリピーターが欲しいし紹介も欲しいので、お客様を満足させることが僕にとっての利益です。しかし事務所で働いている人にとっては、ひょっとするとそうではない部分があるかもしれない。だから、その利害を一致させる必要があると思いました。
そのために「For Client」の考え方を評価制度に組み込み、お客様の満足度が弁護士の評価に影響する仕組みを構築したんです。評価制度がある多くの事務所は、おおむね売上で評価されていると思うんですけどね。
確かに売上で評価されるイメージは非常に強いです。
売上を求めるのはプロフェッショナルとして非常に重要なことです。
しかし、極端な例だと、刑事事件で無罪判決を取っても弁護士のサービスに満足していない方も見たことがあります。意外と結果がすべてじゃないんですよね。
お客様にとってはしっかり自分と向き合ってくれたかが非常に重要です。満足度はお客様の主観なのですが、これを点数化して弁護士の評価に反映しています。
具体的に、どうやって顧客満足度を測るのでしょうか。
これはもう聞くしかありません。お客様ご本人に、法律相談に進んだときや事件が終わった後で「対応した弁護士の評価を0から10の点数で教えてください」と。
すべての案件ですか?
全案件で行っています。お客様の回答率や平均点などを弁護士ごとに算出して、各弁護士に点数をつけています。
顧客満足度に本人が無自覚なことも珍しくない
評価が可視化されるのですね。自分以外の弁護士の評価は見られるのですか?
お互いの評価を見ることはできませんが、平均値を出すので自分の立ち位置は分かります。平均よりよいか悪いか、どのくらい離れているかなどは把握できますね。
たとえば月に1度上長の弁護士と1on1ミーティングして、そこで「ちょっと最近満足度が低いよ」など指摘される機会もあったり。
そういうこともあります。「終件したお客様からあまり良い評価がもらえてないけれど何か心当たりはありますか」とか。僕はそういったコミュニケーションを取っています。
個人差は出るものですか。
けっこう出ますね。本人は無自覚なことも多いです。
なるほど、良い気づきを得る機会にもなるのですね。
そうですね。良くも悪くもお客様からいただく評価はそのまま人間関係の構築力に左右されるので、この評価基準は本人たちの能力を絶対にインプルーブ(成長)させてくれると僕は考えています。
たとえば別の事務所に移籍するとか独立するとなっても、東京スタートアップ法律事務所での経験が絶対にプラスに働くはずです。
新しい法律の分野をひとつ覚えるよりも、対顧客でうまく関係を作る力を磨く。こちらのほうが確実に稼げる力になると思います。
評価されるためにすべきことが明確

個人の主観が混ざらない評価体系がフラットな組織づくりに一役買っているという。
顧客満足度の点数が報酬に影響すると。
もちろん受任件数や売上のほか、チームへの貢献度などの定性的な部分もあり、その合計点で決まります。
報酬テーブルに応じて、今回何点だったから次はここに上がりますとか、今回はステイとか。報酬が下がることもたまにはあります。
かなり明確に定めているんですね。
明確ですね。我々の主観は入りにくい形式になっています。
弁護士が報酬テーブルを上げたいなら、何をすれば上がるかがハッキリわかりますしね。
それはとても良いですね。私たちが転職支援をしている方からは、同僚の報酬について「上司に気に入られているから上がった」とか「あの人だけずるい」といった話を聞くことがありますが、そういうことが起きなさそうです。
そういうことは全く起きませんね。
だから僕、誰にも機嫌取られませんよ(笑)。
「For Client」精神を持つ弁護士を集める取り組み
個人の顧客満足度アップの取り組みはわかりました。たとえば接遇の研修など、事務所全体として取り組んでいることは何かありますか?
定期的に事務所全体の研修を行っています。
顧客満足度が奮わない弁護士を見ていて気づいたのですが、事務処理能力がそのまま顧客満足度に反映されていることがあります。要するにレスポンスが遅いと顧客満足度が下がるんです。
そういう場合は仕事の効率を上げることが顧客満足度アップにもつながるので、原因に応じた対応をしています。
また、そもそも「For Client」精神を持った人に入所してほしいので、採用前の段階でこれでもかというほど理念について説明しています。
特に新人の弁護士の方には、採用説明会に必ず参加してくれとお願いしています。採用説明会では今お話ししたような話題がかなり出ますからね。
その上で応募してもらうとか、志望理由に「For Client」的な言葉があるかどうかとか、採用段階で事務所の風土とのマッチング度を担保しようとしています。
また「For Client」の価値観を評価制度に落とし込んでいるのも重要なポイントです。評価に落とし込まれていないと「共感しました」と嘘をついて入ってこれますからね。
言うだけなら言えてしまいますもんね。
「実は売上しか評価されないんだよね」となると、売上さえ担保すれば「For Client」の気持ちが無くても給料を上げていくことができてしまいます。
評価制度に落とし込むのはめちゃくちゃ大変でしたが、ちゃんとやりきったことが非常に重要だと思っています。
徹底して理念を組織に浸透させる
いつからその評価設計で運営しているのですか?
リリースしたのは去年(2023年)の1月なので、意外と新しいです。何のたたき台もないところから半年ぐらいかけて、一言一句すべて僕が書きました。大変な作業でしたね……ずっとやってましたよ(笑)。
また、2ヶ月に1度全体定例会を行います。ここで事務所の業績や新入社員の紹介をするのに加えて、「For Clientについて」というコーナーを設けています。
もうみんな聞き飽きているとは思うのですが、「For Clientとはこういうものだよ」と説明したあとで、顧客満足度10点満点の弁護士を名指しで「この人は満点で、お客様からはこんなメッセージをもらっています」と紹介するんです。
これをずっとやり続けていることも大きいかなと思います。
たしかにやった方がよさそうです。
事務所の風土がここまでくるともう「For Client」精神がない人はいたたまれなくなる。いられないと思うんですよね。
報酬も大事な要素だとは思いますが、人のモチベーションってお金だけではないはずで、人からの承認も重要ですよね。
結局は運用が9割だと思います。もし僕が「For Clientを評価する」と言っておきながら売上の話ばかりしていたら「嘘じゃないか」となってしまうので、そうならないようにすごく気を付けています。
どこへ行っても求められる弁護士になれる事務所
東京スタートアップ法律事務所で働くことのメリット・魅力について教えてください。
マーケットで需要のある人材になれることが当事務所で働くメリットです。
さまざまな分野を経験してなんでもできる弁護士になるとか、ひとつの分野を尖らせてその第一人者になるといった戦い方もアリだとは思います。しかし僕の考える「強い人材」は、やはり「For Client」の価値観を持つ弁護士です。
当事務所に入ったら否が応でもその価値観が身につくし、成長していくので、圧倒的にマーケットで需要がある弁護士になれると確信しています。
また、皆さん入所してから「人間関係が極めてよい」とは言いますね。意図して人間関係を良くしようとしているわけではありませんが、ひょっとすると「For Client」意識の副次的な効果なのかもしれません。
人間関係で悩んでキャリアをどうするか悩んでいる方は思う以上に多いと、転職支援をしていても感じます。
特に中途の弁護士が言いますよね。移籍してくる方を見ていると、分野にすごく不満があるとか、報酬が少なすぎるとかで移籍する方はそこまで多くありません。
「仕事がしにくい人間関係だった」といった方が多いので、入所してから人間関係のよさに感動する人もいます。
事務所に来る弁護士が大半だがリモートワークも可能
東京スタートアップ法律事務所ではリモートワークを導入していますか?
リモートワークは導入しており、弁護士は事務所に来て仕事をしてもいいし、自宅で仕事をしてもよいとしています。事務局スタッフは出社とリモートを半々でお願いしています。
しかし弁護士は結構出社しますね。毎日事務所に来ている人のほうが多いと思います。出社した際の人間関係のストレスが少ないことや、自宅では仕事がしにくいなど理由はさまざまですが、強制されるでもなく結果的にそうなっています。
コロナ禍中、感染の心配があるので半分は自宅で仕事をするようにしたところ、けっこう「出社して仕事したい」という声が上がってきたんです。その後、コロナ禍が落ち着いてから出社を解禁したら皆来るようになりました。
業務時間は大体どのくらいでしょうか。
当事務所は平日朝10時から夜19時まで法律相談を受け付けていますが、弁護士に対して特に時間帯を決めて拘束時間を設けていません。
予定がある時間帯はカレンダーツール上でブロックしておけば、法律相談を入れることもありません。
それでも皆10時から19時ぐらいまでは働いているのが普通です。持っている案件数や忙しさからしても、皆がパツパツになることはないですね。
転職支援をしている方からよく尋ねられるのですが、個人事件はどのように取り扱っていますか?
個人事件の受任は自由です。事務所の設備を使ってよいかわりに、売上の2割を納めていただく形にしています。
個人事件は3割納める事務所が多いイメージがありますね。
そうですね、正直2割も3割も事務所としては変わらないので、2割のほうが魅力的かなと。
受任している方も多いのですか?
国選はみんなやっています。それと地方支店の先生は個人事件をやっている方が多いと思いますね。
変化の速い環境を楽しむバイタリティがある弁護士にフィットする事務所
東京スタートアップ法律事務所で活躍している方の特徴や、「For Client」の他にも「事務所にフィットするのはこういう方だよ」といったポイントはありますか?
なんでも新しいことをやってみようと思う好奇心や、バイタリティがある弁護士が活躍していると思います。逆に保守的な方はあまり当事務所には合っていない気がします。
そもそも設立から6年の、引き続き成長していこうという事務所なので変化が多いんですよね。
たとえば2023年12月に本店を移転してガラッと環境が変わりました。
また、弁護士・事務局スタッフにかかわらず毎月新しいメンバーが入所してきます。
やっぱり僕は僕で新しいことが好きなんですよね。最近「Pocket Lawyers」という個人顧問サービスを始めたように、メンバーにも「これを覚えてお客様に勧めてください」とお願いすることが増えたり、取り扱う分野の割合も変わってきました。
今後も環境はどんどん変わっていくと思います。
仕事の変化を苦痛に感じる人や、変化が少ない環境で仕事をしたいという方には、ちょっとしんどいかもしれません。良い悪いではなく、合わないかもしれないと思います。
拠点は今後も拡大路線 メンバーの提案で進出したエリアも
拠点は今後もどんどん増やしていくのですか?また、現在拠点がない地域にお住まいの方でも求人に応募できるのでしょうか。
支店は今後も増やしていこうと考えています。今年は11月に20店舗目の京都支店を作っておしまいですが、来年以降また30、40、50と拠点を増やすつもりです。
拠点がない地域からの応募も時折ありますよ。今いらっしゃる地域に東京スタートアップ法律事務所の支店がないときは、「どこに住んでいるか」「どこに事務所を作ってほしいか」などをお伝えいただければ、そのエリアに出店することも検討します。
それも含めて応募できるということですね。
アピールしてくる方も実際にいらっしゃいます。
もともと東京で働いてた弁護士が、縁もゆかりもないけど宮崎に行きたいと言い出したことがあります。なぜかと言うと、彼は修習が宮崎で、サーフィンやゴルフをするのが好きだったんですよ(笑)。
「宮崎に支店出しませんか」と言われても、それほど簡単ではありません。ですから「支店を作るから、支店長として働いてくれないか」とオファーをして、WIN-WINの形で支店ができたこともあります。
あとは、今ちょうど内定を出した弁護士が「ここに支店を出してもらえないか」と。これから入社する予定の方が提案してきたんですよ。
しかもちゃんと「ここは東京に比べると競争も少ないし、個人的にも理由がある」とプレゼンしてくれたので「じゃあ作ろうか」と。こういうことも時々あります。
本当に支店を出したんですね。
これから弁護士になる77期の方なので、実際はまだですが、その方向で検討しています。
やっぱり当事務所に入ったら、楽しんでいただきたいんですよ。自分の要望が通って、支店ができて、そこで働けるって楽しいじゃないですか。
型にはまることよりも自分が活躍できる場を探して
この記事を読んでいる弁護士や、これから弁護士になる方にメッセージをお願いします。
あまり型にはまらないほうがよいと思います。
採用活動をしていると感じますが、みんな「正解」を追い求めています。よい大学を出て、よいロースクールを出て、あるいは予備試験になるべく上位で受かって、世間的によい法律事務所に入って、パートナー弁護士を目指して……みたいな。
皆同じことをしようとするのですが、弁護士が活躍できる場所はそれ以外にも世の中にたくさんあります。各人に合った場所がきっとあるので、それを見つけることが一番大事ではないかなと思います。
型にはまろうとすると、自分が苦しい。もし僕が型にはまるルートを自分のパーソナリティーを無視して突き進もうとしたら、たぶんストレスで疲弊してしまうと思うんです。
自分なりの道を見つけて、楽しくやれる環境を探していく。
これが極めて重要かなと思います。
ありがとうございます。前編でうかがった弁護士になるまでの経緯などを考えると、非常に納得感のある中川先生らしいメッセージだと感じました。本日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
前編:「弁護士はクライアントのために」新時代を生き残る新しい弁護士像とは
後編:マーケットで圧倒的に強い弁護士に|理念を具現化した異例の評価制度

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