弁護士の転職・求人市場・中途採用の動向を解説
- 更新日:2025.07.09
弁護士を取り巻く採用市場はますます活発化しています。司法試験合格者数の増加や事務所数の拡大、そして企業内法務需要の高まりなど、さまざまな要因が複雑に絡み合いながら、「弁護士求人が増えている」現象が顕在化してきました。
本記事では、そんな弁護士の転職・中途採用市場の全体像を整理しつつ、弁護士求人が増えている背景や法律事務所の採用動向、給与・待遇、そして専門領域別のニーズなどを幅広く解説します。
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INDEX
弁護士の中途採用市場の全体像
弁護士数の増加とキャリアの多様化
司法制度改革の一環として、法曹人口の拡大が進められてきました。
司法試験合格者数が増え、法科大学院制度が定着してきた結果、毎年一定数の新規弁護士が法律業界に加わっています。
これにより、従来の法律事務所での採用競争は激化した一方で、企業法務や公的機関、コンサルティング会社など、多様なキャリアパスが広がるという現象が同時に起きています。
以前はあまり数多くなかった企業内弁護士(インハウスロイヤー)のニーズも高まり、「採用母数」自体は増えているという見方もできます。
ただし、企業法務や専門性の高い領域を志向する弁護士が増えることにより、弁護士同士の競争レベルも上昇傾向にあるのが現状です。
大手事務所、急成長事務所を中心とした市場牽引
特に首都圏や大都市圏では、大手法律事務所の拡大、急拡大する法律事務所の採用計画が進んでおり、これが市場全体のダイナミックな動きを引き起こす要因の一つとなっています。
「四大」や「準大手」と呼ばれる事務所群や、SNS等のデジタルマーケティングを駆使し拡大する新たな法律事務所が、新規採用や中途採用に力を入れることで、若手から中堅までの弁護士にとって転職・就職の選択肢が増え、結果として中堅事務所以下の人材採用にも波及効果をもたらしています。
さらに、法律事務所の組織力や専門性が細分化・高度化するに従い、他業種との連携や社外人材の受け入れも活発化。これが、コンサルファームの動向と似通った形で進行している点も、本記事で後述する大きなポイントです。
弁護士求人が増えている背景
弁護士の求人が全般的に増えている背景には、いくつかの大きな要因があります。本記事ではとりわけ重要な3つを取り上げ、掘り下げていきます。
企業コンプライアンス強化の潮流
リスクマネジメントへの意識高揚
企業を取り巻く規制や社会的責任が年々重視されるようになり、「コンプライアンスを甘く見ると企業存続の危機につながる」という認識が急速に広まっています。
金融商品取引法や個人情報保護法、下請法など、重要な法律への抵触リスクを回避するためには、専門家である弁護士の知識と判断が不可欠です。直近ではフジメディアホールディングスの直面している問題が当てはまるでしょう。
また、大手から中小企業まで、業種にかかわらずコンプライアンス部署の新設や法務部門の強化が進められており、従来の「外部の法律事務所に相談する」だけでなく、常勤として弁護士を採用するケース「企業内弁護士の採用」も増加しています。
これにより、企業内法務人材の需要が高まる→従来の事務所系求人も不足気味になる→相乗的に求人が増えるという構図が見えてきます。
大手企業から波及するコンプライアンス意識
特に上場企業やグローバル企業の場合、海外規制への対応やマネーロンダリング対策、情報漏洩防止など、コンプライアンス領域での課題が増加しています。
外資系企業を含め、社内に弁護士を抱える傾向があります。こうしたトレンドが大企業から中堅規模の企業にも波及し、最終的には弁護士ニーズの全体的な底上げを生み出しているわけです。
大手法律事務所の拡大とコンサルファームの類似動向
大手法律事務所の組織拡大
ここ数年、大手法律事務所は国内外での拠点拡充や分野別チームの細分化を進めてきました。
たとえばM&A専門チーム、国際仲裁チーム、知的財産権チームなどが社内カンパニーや独立した部門として機能するようになり、案件数も増加。これに伴い、アソシエイトやミドルクラス以上の弁護士を継続的に採用する動きが続いています。
さらに、大手事務所同士の合併や、渉外部門の強化にともなうパートナーの移籍など、大きな枠組みでの再編が加速しており、採用計画もそれに合わせて拡大傾向です。大手事務所が積極的に人材を集めることで、市場全体の求人が増えるという流れが起こっています。
コンサルティングファームの拡大に見る類似性
興味深いのは、同じく高い専門性を武器に企業を支援するコンサルティングファームでも、近年大規模な拡大が進行していることです。
戦略系・総合系を問わず、コンサル企業は「ITコンサル」「デジタルコンサル」「会計・税務コンサル」など多様な専門領域をカバーするようになり、企業の複雑な課題解決を総合的にサポートする体制を築いています。
これと同様に、法律事務所のサービス領域が拡大し、税務・会計や労務、人事戦略コンサル、IT分野との連携を図りつつクライアントを支援する傾向が強まっています。
また逆にコンサル徹ィングファームが法律事務所を設立し提供サービスを拡大するという動きも見られます。結果として、事務所自体がコンサルファームのような機能を果たし始め、人材ニーズが法曹資格にとどまらずビジネス感覚やITリテラシーを持つ弁護士へと拡大しているのです。
つまり、「専門性の総合化」という潮流が、コンサル業界にも法律業界にも共通しており、そこでは「プロフェッショナル人材を大量に取り込み、組織を拡大する動き」が顕著です。ここに弁護士求人の増大がリンクしていると考えられます。
多様化する法律問題への対応(業種別詳細)
もう一つ大きな要因として、社会の変化やテクノロジーの進歩に伴い、従来にはなかった新しい法律問題が多発している点が挙げられます。
以下のように、業種や分野ごとに「法律問題の質と量」が劇的に変わり、それを解決できる弁護士が不足しているため、求人拡大につながっているのです。
IT・テック業界
- AI/データ活用: 個人情報保護やデータ取扱いに関する法規制が増え、プライバシー問題や著作権問題への対応が不可欠。
- システム開発・DX推進: 企業の業務効率化やデジタル化に関連し、契約書作成・交渉のスキルを持つ弁護士が求められる。
- スタートアップ支援: ベンチャー企業が投資を受ける際の契約や株式譲渡、資本政策などに明るい弁護士が重宝される。
金融・証券業界
- 投資ファンド・M&A: 国内外の企業買収や投資スキームが高度化・複雑化しており、法務デューデリジェンスや契約交渉をリードできる弁護士を常時募集。
- フィンテック: ブロックチェーンや暗号資産など新技術が次々と登場し、ライセンスや規制対応が急務。金融当局との折衝経験を持つ弁護士は引く手あまた。
- 国際取引: クロスボーダー取引を行う大手金融機関・証券会社では、英語対応が可能かつ金融関連法規に精通した弁護士を求める傾向。
製造・知的財産分野
- メーカーの製品開発: 特許取得やライセンス交渉、海外展開における現地法対応など、知財・渉外の両面に強い人材が望まれる。
- ブランド保護・商標戦略: 越境ECの拡大に伴い、海外での商標権侵害対策や模倣品対応など、グローバル知財戦略に強い弁護士が不足。
- 環境規制対応: SDGsやESG投資の盛り上がりにより、環境法に精通した弁護士のニーズも徐々に高まっている。
労働・雇用関連
- 労働紛争の増加: 働き方改革の流れで労務管理が複雑化し、不当解雇やハラスメント、残業代請求などのトラブルが増えている。
- グローバル人事対応: 外資系企業や海外拠点を持つ日本企業では、複数国の労働法に関する知識を備えた弁護士が必要。
- 派遣・業務委託: 人手不足を背景にした派遣労働やフリーランス契約の増加に伴い、労働者保護法規や偽装請負などの法的リスクを管理できる弁護士が求められる。
医療・ヘルスケア分野
- 医療訴訟・トラブル: 病院や医療法人が抱える医療事故や不祥事対応で、専門知識を持つ弁護士の需要が堅調。
- 製薬・バイオテクノロジー: 新薬開発や臨床試験、薬事規制など、ライフサイエンス分野特有の法規制を理解した人材が少ないため、専門性がある弁護士への求人が増加。
- 高齢化社会対応: 介護事業や福祉関連でのコンプライアンス強化、公的補助金の不正受給対応など、今後も需要が伸びることが予想される領域。
これら業種別の課題を見ても分かるように、法律問題が多様化かつ高度化しており、従来型のゼネラリストだけでは対応しきれないケースが増えています。
その結果、特定分野で専門性を発揮できる弁護士のニーズがうなぎのぼりとなり、転職市場にも大きな影響を与えているのです。
法律事務所の採用動向:大手・中堅・ブティック系
ここでは、求人が特に多い法律事務所の採用動向を見ていきます。事務所の規模や方向性によって、求める人材像や採用基準が大きく異なる点は要チェックです。
大手法律事務所
国内最大規模の大手法律事務所は、渉外案件や国際M&A、ハイレベルな金融・税務案件などを数多く扱っています。近年の組織拡大や海外拠点進出により、以下のような傾向が顕著です。
- 専門チームへの配属を前提とした採用
M&Aチーム、国際仲裁チーム、知財チームなど、特定分野への配属が明確化。求人要件も「英語での折衝経験」や「留学経験」「特定分野の実務年数」など、ピンポイントで要求されることが多い。 - 即戦力採用が増加
アソシエイトクラスのみならず、マネージングアソシエイト~パートナーレベルまで幅広く募集。クライアント獲得力や専門スキルを示せれば、中途採用でも好条件が提示されやすい。 - 激務だが高報酬
大手事務所は年収1,000万円以上も珍しくなく、パートナーになればさらに報酬アップが期待できる。ただし、業務量が多く働き方がハードになりがちという側面もある。
中堅法律事務所
中堅規模の事務所では、企業法務や個人事件をバランス良く取り扱いながら、特色ある領域(労働、倒産、ベンチャー支援など)に注力しているケースが少なくありません。大手ほどのブランド力はないものの、採用枠が比較的多く、若手~中堅弁護士にとってチャレンジしやすいというメリットがあります。
- 幅広い案件経験が可能
大手に比べて一人が担当する案件の範囲が広いことが多く、実務経験を積むスピード感を重視する弁護士には魅力的。 - 事務所拡大フェーズでの採用
新設のチームや地域拠点を立ち上げるための募集が行われるなど、事務所全体が成長過程にあるケースが多い。 - 柔軟なワークスタイルも期待
大手ほど縦割りが厳しくないため、比較的フレキシブルな働き方を導入している事務所も。スキルアップとワークライフバランスを両立しやすい場合もある。
ブティック系法律事務所
ブティック系事務所は、特定分野に強みを持ち、少数精鋭で高い専門性を誇る存在です。倒産・事業再生、国際仲裁、知財、家事事件など、分野に特化した事務所が多くなっています。
- スペシャリストとしての成長
その事務所が手がける専門領域の案件に集中できるため、特定領域における圧倒的な実務経験を積める。 - 採用枠が限られる
規模が小さいため、年に数回あるかないかという少人数の採用チャンスを狙う必要がある。 - 高収益案件も期待できる
企業再生案件や国際紛争など、報酬が高額になりやすい領域を扱うことも多いため、結果として年収アップに繋がる可能性も十分ある。
弁護士の年収・給与・待遇の最新トレンド
大手法律事務所
- 若手でも年収1,000万円超の例が多数。
- 留学制度や研修制度が充実しており、福利厚生も手厚い。
- 一般的に業務量は多く、時間外労働も多めになりがちなため、高収入だが激務というイメージは根強い。
中堅・ブティック系法律事務所
- 初年度は600万~800万円程度がボリュームゾーン。
- 担当案件の売上貢献度次第で、早期昇給や年収1,000万円超も十分可能。
- 大手に比べると、事務所ごとの実力主義色が強い場合が多い。給与体系が「固定+歩合」や「能力給」に近い形式を採用するところもある。
企業内弁護士(インハウス)
- 大企業なら年収800万~1,200万円前後が相場。
- ストックオプション制度を導入しているベンチャー企業であれば、将来的に大きなリターンが得られる可能性も。
- 法務部門のポジションが上位化する傾向があり、役員候補として採用されるケースも増えている。
個人事務所(開業)
- 開業当初は顧客獲得次第で収益が不安定になりやすい。
- スキルとネットワークを築けば、自由度の高い働き方と高収益を両立できる可能性もある。
- インターネット集客やSNSを活用して成功する事例が増え、デジタル時代のマーケティング戦略が重要となっている。
参考:アトム法律事務所が「刑事・交通・離婚・相続」にこだわる理由
専門領域別でみる採用ニーズと特徴
ここでは、弁護士として転職やキャリアアップを考えるうえで、特に注目される専門領域とその特徴を簡単に整理します。前章で触れたように、業界別の需要は多岐にわたりますが、弁護士個人が「自分の強み」をどう生かすかが重要です。
- 企業法務(M&A、金融、税務など)
- M&Aやジョイントベンチャー案件を中心に、大手・中堅事務所から企業内法務まで幅広い採用。
- 金融庁や証券取引等監視委員会とのやりとりの経験があれば、専門性が高く評価される。
- IT・知的財産(テック法務)
- DXやAI、情報セキュリティ関連の需要が右肩上がり。
- 知財専門のブティック系事務所やスタートアップ支援に強い中堅事務所での求人が多い。
- 国際法務(渉外、クロスボーダー取引)
- 英語などの語学力必須。外資系クライアントとの折衝経験があると有利。
- 大手事務所や外資系企業法務での採用枠が中心。
- 労働法・労務管理
- 労働紛争対応やハラスメント対策、労使交渉など、企業法務の一角として大きな需要。
- 人事コンサルとタッグを組む形で、コンサルティング要素を含む案件が増えている。
- 倒産・事業再生
- 経済状況の変化や企業再編ブームにより、安定的なニーズがある。
- 裁判所や金融機関との調整経験が重視されやすい。
- 家事事件(離婚・相続)・一般民事
- 個人事件をメインに扱う中小事務所やブティック系事務所でのニーズが根強い。
- 安定した需要がある一方、集客力とコミュニケーション力が求められる領域でもある。
自分が「企業法務のプロとして成長したいのか」「IT・知財に特化したいのか」といったキャリアビジョンを持つことが、今後のキャリア選択に大きな影響を与えます。
また、多様な領域を横断的にカバーできるゼネラリストを求めるところもあるので、得意分野を尖らせつつ、必要に応じて守備範囲を広げるという姿勢が求められるでしょう。
今後のキャリア展望と将来予測
DXの進展による新たな法的課題
今後大きなインパクトをもたらすのがDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速です。
企業があらゆる業務をデジタル化していくプロセスにおいて、
- データ保護・プライバシー規制への対応
- AI倫理やアルゴリズムの公正性に関する議論
- 電子契約や電子サインが一般化することで発生する新種の契約トラブル
- ネット上の誹謗中傷対策やSNSリスク管理
といった課題がさらに深刻化・多様化することが予想されます。これらの問題に精通し、技術理解と法的知見の両立ができる弁護士は、今後ますます高い市場価値を持つようになるでしょう。
地域拠点の再編と地方ニーズの拡大
大都市部に集中していた法律事務所も、クライアント企業の地方拠点や地域金融機関の需要を取り込むため、地方拠点の設置や支店展開を進める可能性があります。地方公共団体や医療法人、地元企業のM&Aなど、都市部とは異なるニーズに着目しながら専門家を配置する動きが活発化することも十分考えられます。
弁護士同士の競争はさらに激化
前述のとおり、司法試験合格者数が増加しているため、「弁護士バッジを持っているだけ」では差別化が難しくなる可能性があります。そこで、自分の専門性や得意領域をどれだけ深掘りできるか、またはビジネス面・語学面などでどれだけ付加価値を持てるかが勝負の鍵を握るでしょう。
- 高付加価値分野を狙って学習・実務経験を積む
- コンサルティングファーム的な思考力や提案力を身につける
- 英語や他の外国語を本格的に習得し、国際法務領域で活躍
- SNS等での集客力を付け知名度、集客力をつける
こういった取り組みを継続して行くことが、「今後のキャリアを大きく左右する」重要要素となるでしょう。
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この記事の監修者
弁護士・法務・コンプライアンス・特許・知財など、リーガル領域を中心とした管理部門の方のキャリア支援を行う。東証一部上場企業での人材紹介事業部の立ち上げ等も経験。中途採用・転職に関する深い知見を有し、選考企業ごとの個別面接対策も行い、多くの求職者の転職支援実績を有する。
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