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沖縄から世界へ広がる琉球スフィア 「法の護り」を広げるカギは「人間力」にあり
弁護士法人琉球スフィア
代表弁護士
久保 以明
今回は弁護士法人琉球スフィア(旧:琉球法律事務所)代表弁護士の久保先生にインタビューを実施しました。琉球法律事務所として独立した経緯や、事務所として重視しているビジョン、所属弁護士の働き方などについて詳しくお話しいただいています。
沖縄・東京に5拠点を展開

弁護士法人琉球スフィア 代表弁護士 久保 以明様
自己紹介をお願いします。
久保と申します。僕は東京出身で、沖縄で弁護士事務所を設立しました。大学は一橋大学の法学部を卒業し、修習期は55期です。
弁護士歴はおよそ23年ほどで、現在は弁護士法人琉球スフィアの代表弁護士であると同時に、スフィア法律事務所の代表パートナーも務めています。
弁護士法人琉球スフィアは、もともと「琉球法律事務所」という沖縄県内で最大級の法律事務所ですよね。人数や拠点などを含め、現在の概要を教えていただけますでしょうか。
現在、弁護士は8名在籍しており、スタッフが21名おりますので、合わせて29名です(2025年3月時点)。
沖縄県内では那覇、読谷、ライカムの3拠点を設けています。さらに東京には麹町と立川に拠点があり、合計で5拠点という体制です。
久保先生ご自身は、沖縄と東京を行き来していらっしゃるのでしょうか。
はい、そのとおりです。スフィア法律事務所の本店が東京にあることもあって、今後は東京における業務をさらに展開していきたいと考えております。
企業法務・相続・不動産・国際取引の4本柱で運営
沖縄ではどのような案件を中心に扱っているのでしょうか。
僕はもともと、沖縄の老舗で有名な小堀啓介先生の事務所に所属し、沖縄電力様やオリオンビール様など、県内の主要企業を顧問先とする企業法務を主軸とした業務を行っていました。
小堀先生の引退に伴い、僕が半ば事務所を引き継ぐ形で独立し、「琉球法律事務所」という名称に改めました。そのため独立時点の案件としては企業法務が中心でした。
「琉球」の名を冠するのはかなり大それた名称と思われるかもしれませんが、小堀先生の偉大さを表し、僕の名前も使わずかつ沖縄を代表する名前としてこれ以上ないのではないかと。幸い他に使用している事務所がなかったので、この名称に定めました。
2016年頃からは新たな柱として、相続分野にも力を入れ始めました。高齢化社会になり「大相続時代」となる中で、関連する法的サービスのニーズが高まると考えたのです。
Webマーケティングにも取り組み、今では「企業法務」と「相続」が二大柱となっています。さらに、僕自身が不動産分野に関するコネクションを持っていたことから、「不動産」も主要分野の1つとしています。
また、当事務所にはニューヨークと香港の弁護士資格を有する絹川弁護士がおり、「国際取引」なども扱うことが可能です。ですから、実質的には4つの柱で事務所を運営している状況です。
190社を超える企業の顧問を務める
企業法務の顧問先は現在190社近くあるそうですね。
はい。月に3~4社ほど増えているため、もうすぐ200社に達するかと思います。
現在こそ200社を目前としていますが、独立当初、小堀啓介先生から受け継いだ顧問先は20社程度でした。それ以降増やしてきたお客様に関しては、僕たちが懸命に活動してきた結果そのものだと思います。
顧問先がここまで増えたのは、どのような取り組みが功を奏したのでしょうか。
当事務所を経営する上で、弁護士としての業務だけでなく経営の勉強にも力を入れました。地元の人材育成会社で中小企業の経営者の皆さまと一緒に学ぶ場を持ち、得た知識をもとに関係を深めていったのです。
経営者の方々と親しくなるうちに、口コミで顧問先が増えてきました。また、最近では所属弁護士も自ら顧問契約を獲得してくるようになり、以前に比べて案件数の伸び方が変わってきています。
東京の支店でも案件の種別に違いはないのですか?
そうですね。もともとは立川を拠点に、東京の西側で相続を軸に展開しようと思っていました。沖縄で多くの相続案件の実績を積んでいたので、この力でやれるだろうと。
しかしやはり弁護士ですから相続案件に留まらず、企業から顧問契約などのご相談もいただくようになりました。
案件はどのように担当を振り分けていらっしゃるのでしょうか。
当事務所はまだ8名という体制ですので、緩やかに「相続を主に扱う」「企業法務を主に扱う」という区分はあるものの、完全な専業化には至っていません。
もう少し弁護士が増えたら、個人の専門性をより高めていきたいと考えている段階ですね。
幸せに人生を過ごすことを一番に考え、東京から沖縄へ

豪快に笑う久保先生。仕事内容や勤務地も「幸せな人生」のために選ぶべきだと語る。
久保先生は東京のご出身とのことですが、なぜ沖縄で弁護士活動を始められたのですか。
それ、よく尋ねられます(笑)。
当事務所にやってくるインターン生にもよく話しているのですが、仕事ってあくまで人生の一部じゃないですか。
僕は小学校6年生の頃から自然の中で暮らし、その中でよい家庭を築きたいという夢がありました。東京で弁護士として働けば収入面では恵まれるかもしれませんが、僕の理想とする暮らしとは相容れないと感じたのです。
修習地が沖縄に決まって実際に赴いてみると、きれいな海や豊かな自然があり、一年を通じてサーフィンを楽しめる環境に大きな魅力を覚えました。つまり仕事というよりも、人生設計として「どこで暮らしたら幸せな人生を過ごせるか」を考え、沖縄で開業しました。
弁護士は地域を問わず需要がありますよね。
ええ、まさにその点が大きいと思います。
独立当初から顧問先が10倍に 成長のターニングポイントは
もともと琉球法律事務所として顧問先を増やされ、顧問数で見ると当初の10倍規模に成長されていますが、飛躍のきっかけとなるターニングポイントはありましたでしょうか。
大きな転機はひとつあります。独立してから10年ほど経った頃に、弁護士の仕事自体が嫌になってしまった時期があったんです。
僕は「正義」を大事にしてこの職業を選びましたが、現場では和解で落ち着くケースも多く、一方の正義だけでは割り切れないことも珍しくありません。そういった案件を数多く見ているうちに、弁護士を辞めようか悩みました。
しかし、地元の人材育成会社で経営について学ぶ中で、自分の内心を見つめ直す機会がありました。
その機会を通じて、弁護士事務所に駆け込む方こそ本当にお困りなのだと改めて認識したのです。たとえばご相談にいらっしゃった方に「この問題は俺に任せておきなさい」と言えば非常に喜んでくださいます。
その時の気持ちって、小学生の頃、弱い者イジメが許せなくて相手に立ち向かった時に感じていた正義感とまったく同じだなと。やはり弁護士という職業は素晴らしいものだと再確認できました。
それと同時に弁護士は優秀で倫理観の高い人材が多いにもかかわらず、柳井正氏や孫正義氏のように社会へ大きく影響を与える方が少ないことに疑問を覚えたのです。
弁護士も組織として力を結集し、社会に対してより大きな価値を届けるべきだと考え、2018年に法人化を決意しました。
世の中で困っている方が力を借りたいと思うのは、やはり「専門家」だと思います。たとえば交通事故で困っているなら、交通事故に特化した弁護士に依頼したいと思うのは当たり前ですよね。
弁護士は「なんでもできるよ」と言いがちですが、本来それは一人の弁護士では実現できないことです。ですからある分野を専門とする弁護士を増やすことで、組織としてより大きな価値が提供できると考えました。
当初は自由が制限されると感じて退所したメンバーもいましたが、僕のミッションやビジョンに共感し残ってくれた仲間たちが集まり、2020年ごろから規模を拡大させる形で成長していきました。
世界への進出を目指し「琉球スフィア」へ
現在は東京・台湾のスフィア法律事務所と合流し、いわば「新生スフィア法律事務所」と言える体制になりましたが、これも「弁護士の社会的な影響力の強化」が根底にあるのでしょうか。
はい。実は法人化を行った際に、中期的目標の一つとして「万国津梁」というスローガンを掲げていました。沖縄は世界の架け橋であった歴史もある土地ですし、いずれは国際的にも業務を展開していきたいと考えていたのです。
当事務所にはニューヨークと香港の弁護士資格を持つ絹川弁護士がおりますから、国際取引や国際相続などへの対応も十分にできるだろうと思いました。
さらに台湾や中国など国際的な案件を取り扱っている東京の小堀弁護士から「一緒にやろう」とお声がけをいただいたことで、国際的なステップへ踏み出す土台が整いました。
現在は沖縄と東京に拠点を置き、世界にも目を向けられる体制づくりを進めています。
事務所のビジョンを軸としたチームビルディング
所属弁護士の修習期やキャリアは、どのような構成でしょうか。
修習期でいえば僕が55期、絹川弁護士が57期で、その後は60期前半から70期台まで幅広く在籍しています。司法修習を終えたばかりの方もいれば、中途採用の方もおり、バランスよくそろっている印象です。
事務所の雰囲気はいかがでしょうか。
皆、事務所の理念に共感して働いてくれています。素直で明るい人が多いです。
弁護士でないスタッフと弁護士の間にも壁がなく、笑いが絶えない雰囲気です。基本的にコミュニケーションはフラットで、和気あいあいと業務を進めています。
そうした組織文化を作るために、どのような取り組みをされているのでしょうか。
最も重要なのは、事務所のミッションやビジョンを共有し、我々の仕事は何のために行っているのかということを常に心に留めてもらう努力をすることです。
毎週月曜の朝礼で僕がメッセージを伝えたり、各自の体験や考えを共有したりしています。
また月1回の全体会議では、事務所のクレドを最も体現した人を表彰することもありますね。
四半期ごとには、半日から1日かけるチームビルディングの時間を設けています。メンバーそれぞれの人生観や過去の経験をシェアする場を作ることで、相互理解を深めています。
また、運動会などのレクリエーションを行うこともありますし、外部のキャリアコンサルタントを招いて、定期的にカウンセリングを行うこともあります。これらは費用や手間もかかりますが、組織づくりのためには欠かせないと考えています。
法律事務所でそこまでしているのは非常に珍しいですよね。
超珍しいと思います(笑)。
それは人材育成企業で得た学びやご経験、経営者の方々との交わりの中から生まれてきたのですか。
おっしゃる通りです。経営者になるために学び続けてきたことをアウトプットしています。
自分の作り上げる会社をより良い場所にしたいですし、社員には自己実現を果たして幸せになってもらいたいですから。
当事務所のビジョンのひとつに「誇り高く、楽しく豊かな仲間たち」というものがあります。社長としては、このビジョンを体現する場にするために行動すべきですよね。
貴事務所は弁護士の成長を支援する姿勢が強い印象があります。具体的にはどのように取り組まれているのでしょうか。
弁護士が力を付けるには、実務経験を積むことが一番です。当事務所は事件数に恵まれているため、多くの経験を積める環境です。
最初の3か月ほどは先輩弁護士が横につきながら業務をしますが、それ以降は新人がメイン担当となり、先輩がフォローに回りながら実践的に学んでもらいます。厳しい面もあるとは思いますが、成長も早いと思います。
加えて週1回の勉強会や事件の報告会を行い、事務所全体で知見を共有しています。事件で得た知見を個人の経験にとどめず、組織全体のスキルとして蓄積していくことが重要です。
琉球スフィアが求める人材と働き方

琉球スフィアの弁護士は「報酬額だけ」を目標にしては務まらない。
どういった弁護士や人材に来てほしいとお考えでしょうか。
第一に重視しているのはマインドセットです。インターンにもよく話していますが、当事務所のミッションやビジョンに共感できるかどうかが大切だと考えています。
当事務所はあくまで「社会に価値を提供し、その結果として報酬をいただく」というスタンスです。単に「収入を増やしたい」「高い報酬を得たい」ということだけを目的にすると、考え方が合わないかもしれません。
企業法務や相続、不動産、国際案件などで依頼者に貢献したいという意欲がある方、謙虚さや素直さ、積極的に勉強をする姿勢、プラス思考を備えた方にお越しいただきたいと思います。
マインドセットがマッチしていれば、企業法務に未経験の方でも問題ないのでしょうか。
全く問題ありません。新卒はもちろん企業法務を知らないでしょうし、中途採用だとしても大丈夫だと思います。
中小企業法務には泥臭い部分も多く、人間関係を重視する場面が少なくありません。その上で労務や契約関係など、実務面をしっかり学べば実力がついてくるでしょう。
それよりは、お客様に対してどう貢献できるかを考えられるかどうかの方が大切です。非常に重要な資質だと僕は思いますが、それだけに弁護士業界で差が付くポイントでもあると思います。
当事務所のミッションは「人々に法の護りを」ですが、「私達は、法の知恵を生かして…」という文言が続きます。これは単なる法律的な知識ではなく、有機的な、人間的な力を用いて人々の権利を守り抜くんだという意志を表したものです。
何か相談を受けた際に「これはできませんね」と言うのではなく、「どうしたらできるんだろう、ちょっと考えますね」「こうしたらできるかもしれない」と提案するだとか。そういったことができなければいけないんですよ。
それができない人はどんなに優秀であっても、僕はダメだと思います。
たとえば「現在は遠方に住んでいるが、入所後は沖縄で働きたい」という方などは、オンラインで面接を実施しているのでしょうか。
そうですね、最終的には沖縄に来ていただきますが、最初はオンラインで面接を行います。ご希望があれば1週間ほどインターンを実施することも可能です。お互いミスマッチは避けたいですしね。
現在内定が決まっている方も学生時代にインターンに来てくれた際、当事務所をとても気に入ってくれて入所が決まりました。
沖縄にゆかりがある方が多いのですか。
地域的には関係がない弁護士のほうが多いですね。沖縄出身の者もおりますが、弁護士のほとんどは県外の人間です。
弁護士の業務とプライベートのバランス
実際に働いてらっしゃる方々の業務とプライベートのバランスはいかがでしょうか。
基本的に土日は休みですし、バランスが取れている者が多いのではないかと思います。ただし相続の無料相談会や特別なイベントがある場合は、土日に出社することもあります。
弁護士の特性上、決まった就業時間があるわけではないと思うのですが、おおよそ何時から何時まで働いているのですか。
平日は9時から18時まで電話が受けられる体制をとっています。それ以外は弁護士それぞれの裁量で業務にあたっています。
東京の法律事務所だと「終電まで働いている」という声も聞きます。
すごいですね。東京の終電って24時ごろですよね?
当事務所でそんな時間まで働いている弁護士はいないですし、もしそういう人間がいたら「かなり切羽詰まってるのかな」と思われるでしょうね。
そういう方々からしたら、とても働きやすい環境だと思います。
事務所内での貢献に応じた報酬制度を整備
報酬面はどのように決まっていますか?
新卒で入られた方は自分一人で事件を担当できませんから、歩合制ではかえって辛いんです。そのため新卒からおおよそ3年間は固定給で、600万円ほどに設定しています。それに加えてボーナスも支給しているため、実際には700万円から800万円程度になることが多いです。
歩合制に移行するタイミングはいつでも構いません。事件を自分で担当できるようになり、歩合制へ移行すれば、あとは腕次第で1,000万から2,000万程度を目指すことも可能です。大きな案件を受任すれば2,000万近くに達する場合もあります。
ですから、そうなると年次はほとんど関係なくなってしまうんですよね。弁護士一人で受任できる事件の量には限りがありますから、青天井に上げるということも難しいです。
現在の課題は「組織にどう貢献してきたか」をどのように評価していくかという点です。今はどの弁護士も必死に事件を受任しているので整合性が取れていますが、今後マネジメントを行う者は担当する事件が減るはずです。そうなると現在のままでは報酬が下がってしまいます。
そのためマネジメント面で組織に貢献している弁護士を、正当に評価する制度も整えたいと考えています。
転職を考える弁護士の皆さまへのメッセージ
最後に、転職を検討している弁護士や法務パーソンの方々に向けてメッセージをお願いします。
弁護士法人琉球スフィアは「人々に法の守りを」というミッションを掲げ、より多くの方に質の高い法的サービスを提供することを目指しています。
また「万国津梁」というスローガンのもと、日本から世界に出ていくだけでなく、世界から日本に進出したいという方々へのサポートにも取り組んでいきたいと考えています。
僕たちのミッションに共感し、参画してくださる方を心よりお待ちしております。
動画:沖縄最大規模の法律事務所|成長のターニングポイントとは

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1998年一橋大学法学部卒業
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2001年最高裁判所司法修習生(55期)
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2002年司法修習修了
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2002年小堀啓介法律事務所入所
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2007年琉球法律事務所開設
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2018年弁護士法人琉球法律事務所設立
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2024年スフィア法律事務所 弁護士法人琉球スフィア 代表弁護
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