50代弁護士が挑むキャリアの転換点|出口戦略を見据えた「学び直し転職」
- 更新日:2025.06.20
「弁護士としてのセカンドキャリアをどう築くか?」この問いを40代後半から50代の弁護士の多くが抱えています。
今回は金融インフラ系企業から法律事務所への転職を果たした50代弁護士の事例をもとに、新しいキャリアを掴むまでの道のりを徹底解説。担当転職エージェントの森さんにお話を伺いました。
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金融インフラ系企業で働く50代弁護士の求職者様の事例です。この方は現職に残り待遇を維持するか、定年後のキャリアを見据え待遇を落としても再出発を目指すかを悩んでいました。最終的に年収が半減する覚悟をもって早めに転職を実行し、多様な案件を扱う法律事務所で新たなキャリアを築き始めました。50代からのキャリア転換を成功させるためには、早期の情報収集と明確な「出口戦略」が重要となります。
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なぜ50代弁護士は「出口戦略」を考えるのか?
今回は50代の弁護士の方の転職事例ですが、なぜこの年代の弁護士の方は「出口戦略」を考えるのでしょうか?
森 実は40代後半から50代の弁護士の方からのご相談で非常に多いのが、法曹資格をどう活かして自分のキャリアの出口を作っていくかという点なんです。
一般的な民間企業に所属している場合、大体60歳で定年を迎え、再雇用があっても65歳くらいまでが一般的な雇用期間となります。
事業会社では「役職定年」という制度もありますし、早いと55歳くらいで役職が終了して、給与が下がってしまうケースも聞きますね。
森 おっしゃる通りです。そうした中で、弁護士有資格者がこのタイミングで考えるのが、「もう一度弁護士に戻ろう」という選択なんですね。
弁護士であれば、それこそ70~80代でも現役で活躍されている先生方がたくさんいらっしゃいます。個人事業主としての働き方を選べば、やり方次第でやりがいも報酬も増やしていける可能性がありますから。
弁護士として長く働き続けたいという思いが背景にあるのですね。今回の事例の方も、そういった背景があったのでしょうか?
森 まさにその通りです。この方は50代で、ご相談当初から「弁護士としての出口戦略」を検討されていました。
現職に残り続けるべきか、数年後に移るべきか、あるいは今動くのが良いのか、それぞれのメリット・デメリットを知りたいというご相談でしたね。
50代インハウス法務パーソンが取るべきキャリアの選択肢とは
この方はキャリアの選択肢として、現職に残る・数年後に転職する・今転職するという3つのパターンで検討されたのですね。それぞれのメリット・デメリットを具体的に教えていただけますか?
森 はい、ご本人にはその3パターンで詳細にお話しさせていただきました。
現職に残る場合
今の社内での関係性やご自身の特性が理解されていること、そして待遇が非常に高かったことがメリットですね。この方はインハウス弁護士の中でも年収2,000万円程度の高額報酬を得ていたので、その先10年程度は報酬水準や人間関係を維持できる可能性がありました。
弁護士としてゼロから再スタートを切るとなると現在の報酬をキープするのは難しくなります。他の法律事務所からの転職と違って自身の顧客基盤がない状況では、初期の待遇は下がることを避けられないでしょう。
数年後に転職する場合
すでに50代に入っているため、数年後になると受け入れ先がさらに見つかりにくくなります。学び直しをしたい方であればなおのこと、若ければ若いほどキャッチアップ能力が高いと思われますし、営業活動においても体力的な面で若い方が有利と見なされる傾向があります。
転職を遅らせるほど、弁護士としての活動開始が遅れてしまい、復帰が難しくなるリスクが高まる状態でした。
今のタイミングで転職する場合
体力・気力があるうちに動き出すことのメリットがあります。受け入れ側も若い方が適応しやすいと考える傾向があるため、受け入れ先が見つかりやすくなるでしょう。
しかし今の高い報酬や良好な人間関係を捨てて、新しい環境に飛び込むことになります。今回の事例の方も、最終的には年収が約半分の1,000万円前後になりました。
やはり年齢を重ねるごとに選択肢が狭まるという現実があるのですね。ご本人が「今動くのが最善の策かもしれない」と感じられたのも納得です。
「学び直し転職」の不安と現実
この方は大学卒業後、一般事業会社で法務を担当し、その後法律事務所で2〜3年勤務。そこから中央省庁や金融インフラ系組織へとキャリアを進めてきた方なんですね。純粋な法律事務所での弁護士経験は2〜3年で、しかも10年以上前だと。法律事務所へのキャリアチェンジにあたり、不安は大きかったのではないでしょうか?
森 ええ、その不安は非常に大きかったと思います。特に、世の中に50代の方の法律事務所への転職事例が少なく、そうした支援をするエージェントもほとんどいないのが現状です。
知り合いの事務所に頼るケースも多いですが、近しい関係だと迷惑をかけられないという思いから遠慮してしまうこともあるようです。
やはり大手事務所への転職は難しいのでしょうか?
森 大手事務所への転職は、正直に言って非常に難しいですね。
ただし金融や国際協定、国際紛争に関する知識など特定分野の専門性があれば転職できるケースもゼロではありません。
しかし中堅~小規模な事務所であれば、もう一度弁護士に戻りたいという方の受け入れ先が実は結構あります。
書類選考の通過率なども、若い弁護士と比較するとやはり落ちるのでしょうか?
森 はい、若い弁護士に比べれば書類の通過率や通過数は落ちます。
年齢が高くなると役職定年や報酬、組織バランスなど様々な観点から、どうしても採用数が減る傾向があります。それでも面談や面接に進めないわけではありません。
成長意欲や豊かな経験への評価が懸念を上回った
いくつか選考に進まれたとのことですが、どのような基準で事務所を選定されたのでしょうか?
森 初めからいくつか「ここかな」というイメージは持っていましたね。
この方は、ご経験としては金融関連の知識や国際協定、国際紛争に関する知見をお持ちでしたが、実は「幅広く色々なことをやっていきたい」という思いが強かったんです。
ご自身の専門性を深めるのではなく、むしろ広げていきたいと。それはなぜですか?
森 将来的に独立した時、中小企業や世の中の一般的な民事案件に触れる機会が多いだろうと考えていらっしゃいました。
そのため大手事務所ではなく、幅広い案件を扱っている事務所を探していたんです。ご自身の今後のキャリアで何をしたいのか、その軸が明確だったと言えます。
最終的にどのような事務所に転職が決まったのですか?
森 最終的に決まったのは、設立数年でまだ新しいものの非常にアグレッシブで成長著しい事務所でした。大手の案件から国際案件、中小企業法務、ベンチャー支援、一般民事まで、実に多様な分野の案件を扱っています。
この事務所は同期だけでなく多様なバックグラウンドを持つ先生方を集めて設立されており、特定の業務分野に偏りがなく、様々な力を合わせて事務所を大きくしていこうという理念をお持ちです。
それは素晴らしいですね。事務所側から、この方のどのような点が評価されたのでしょうか?
森 50代ということもあり知識や現場経験の面は全く問題ありませんでした。人間的にも非常に素晴らしい方でしたね。唯一の懸念は弁護士業務から長く離れていたため、「また一から弁護士としてやっていけるのかどうか」という点でした。
しかし、ご本人の成長意欲と年収を半分にしても学びたいという意気込みが非常に高く評価されたようです。金融のバックグラウンドや中央省庁や国際交渉の実務経験、語学力といった、現在の事務所にない経験や知見も良い刺激になると期待された部分もあったと伺っています。
キャリア選択は人それぞれだが、専門家との相談は有益
今回の事例を見ると、本当にキャリア選択の軸は人それぞれだと感じます。
森 まったくその通りです。もちろん報酬が最優先という方もいらっしゃいますし、それを叶える選択肢も当然あります。
一方で今回の事例のように「もう一度弁護士として長くやっていきたい」「幅広く色々な経験を積みたい」という方や、特定の分野で一旗あげたいという方もいます。
40代中盤以降の弁護士の方々が「出口戦略」について悩んでいるというお話でしたね。
森 ええ、多くの方が仲間内では話をしているものの、専門家には相談したことがないというケースが多いんです。悩みは皆さん共通していることが多いのですが、そのパターンは様々ですからね。
ご自身にとって何が優先度が高いのか、そして現実的にどのような選択肢があるのかを理解するためにも、ぜひ一度ご相談いただきたいと考えています。
いますぐ明確な答えを求めている状態でなくても、キャリアの情報収集として一度相談に来てみるのも良いかもしれませんね。
森 はい、様々な事例を交えながらお話しできますので、ぜひお気軽にご連絡いただければと思います。
森さん、今回も大変貴重なお話をありがとうございました!
森 ありがとうございました!
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この記事の監修者
リーガル専門コンサルタントとして、弁護士・法務人材を中心に転職支援を行う。中国発大手テクノロジー企業の日本法人にて創業メンバーとして事業開発・推進に従事。スタートアップ〜大手事業会社での事業開発、マネジメント経験を有していることから、様々な角度からの俯瞰したアドバイスを強みとする。
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