外資系事務所から銀行インハウスへ キャリア再構築を図った40代弁護士の決断

近年、弁護士のキャリアは多様化しており、法律事務所でのキャリアを活かしてインハウスローヤーへの転職する方も珍しくありません。その決断の裏側には、どのようなストーリーがあるのでしょうか?

今回は、40代で外資系法律事務所から銀行のインハウスローヤーへと転職を成功させた弁護士の事例を、担当キャリアアドバイザーの森へのインタビューを通じて紹介します。

【この事例のポイント】
40代で弁護士資格を取得し、外資系法律事務所から銀行のインハウスローヤーへ転職した事例です。もともと金融業界での豊富な経験があったものの、事務所での担当領域と自身の方向性にギャップを感じ転職を決意しました。転職活動を通じて「学べる環境」の重要性に気づき、最終的には年収よりも成長機会を優先。待遇面が良い企業よりも、先輩弁護士からの指導が期待できる企業を選択しました。キャリアの軸を再定義し、長期的な視点で選んだ転職成功事例です。

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「異色の経歴」を持つ弁護士のバックグラウンド

今回ご紹介いただく方のご経歴を教えていただけますか?

 この方は、法学部やロースクールを経て司法試験に合格された方とは少し異なり、ファーストキャリアでは法曹の道に進みませんでした。

ファイナンス領域のパラリーガルとして約10年間、金融業界のミドルオフィスで実務経験を積み、その経験を経て司法試験に挑戦し合格した方です。

その後、小さな法律事務所と外資系法律事務所の2事務所を経験し、現職に転職されました。年齢的には40代です。

40代で弁護士としての経験はまだ数年ということだと、企業法務系の法律事務所、特に大手や準大手、中堅どころへの入所は難しいのではありませんか。

 おっしゃる通りです。

やはり一定の年齢になってから弁護士資格を取得した方は年齢に比べて実務経験が不足しているため、大手の法律事務所などは受け入れが難しいという実情がありました。

そのため、ご本人も最初は小さめの事務所で2〜3年の経験を積んでから、これまでの金融バックグラウンドと弁護士経験を活かして外資系法律事務所へキャリアアップされたんです。

外資系事務所で必要とされる英語力は、金融業界で磨いてこられたそうです。

専門領域のプラクティスに触れられずもどかしい思いがあった

外資系法律事務所では、具体的にどのような状況だったのでしょうか?

 この方は元々金融業界のバックグラウンドが豊富なので事務所でも金融案件を中心に扱いたかったようなのですが、たまたま事務所の方針でそうした案件にあまり携われなかったそうです。

金融に強みがあるのに、金融案件が少ないのはもどかしいですね。

 そうですね。本人としては、金融領域での専門性をもっと「尖らせていきたい」という希望が強かったんです。

それに加えてもともと法律事務所に長く留まるつもりはなく、事務所ならではのキャリアを積んだら再び事業会社・金融業界に戻りたいという明確な希望をお持ちでした。

なるほど。あくまで次のステップへ行くための経験を積もうという考えだったのですね。

 はい、おっしゃる通りです。

40歳前という年齢を考えると、あまり長く事務所にいすぎても転職に影響が出るかもしれないという懸念もありましたので、「移るなら早いタイミングで」と考えていらっしゃいました。

希望もかなり明確だったと伺いました。インハウス、それも金融プラクティスに絞っていたと。

 その通りです。インハウスに絞り、特にトランザクションの分野に携わりたいという思いが強かったため、そうした案件の募集があったところをピンポイントでご紹介しました。

ピンポイントでの転職活動ということですが、内定獲得に際しての難しさなどはありましたか?

 正直なところ、弁護士としての経験値が年齢に対してまだそれほど長くはなかったため、内定が出るかどうかは確信が持てない部分がありました。

ご本人も同じような不安を抱えていらっしゃったので、特定企業に絞り込みすぎず、少し広めに金融分野で数社同時進行で進めていきました。

結果的に他社の転職エージェント経由でも内定が出たそうですね。

 はい。別の金融機関からも内定が出ていました。そちらは、初めて弁護士を採用する案件だったんです。

大手グループ企業ですが、その傘下の会社で初の採用ということで、非常に大きな裁量と「一人で法務組織を築き上げていく」というやりがいのあるミッションが伴うポジションでした。

それは非常に魅力的なオファーに聞こえますね。第一人者として組織を作っていくというのは、やりがいも大きいでしょうし。

 そうですね。しかし、ここでこの方の「軸」が見えてきたんです。当初は明確に言語化されていなかったのですが、ご本人はまだ弁護士経験がそれほど長くなく、「もう少し学びたい」という思いが強かった。

そのため、裁量権が大きい責任者として採用されるよりも、周囲に経験豊富な弁護士がいて、自分の課題や学ぶべきことを理解してくれる環境、つまり「指導してくれる先輩弁護士がいる環境」を求めているということに、選考過程で気づいていったんです。

転職活動を進めていく中で、ご自身の本当の希望が言語化されていったということですね。最初からその「指導してくれる環境」を求めているとはおっしゃっていなかったと。

 まさにその通りです。

様々な企業と比較検討していく中で、自分にはやはり引っ張ってくれる先輩弁護士がいた方が良いのではないかと、ご本人がだんだん気づいていったんです。

この新たな「軸」を企業側にも共有し、入社後にどのようなサポートや教育体制があるのか、先輩弁護士からのフォロー体制などがあるのかなどをしっかりと確認して、最終的な意思決定に至りました。

関連記事:企業内弁護士(インハウスローヤー)の年収相場を経験別・業界別に解説

年収よりも「成長環境」を選んだ理由

年収面で言うと、外資系法律事務所は高水準のイメージがありますし、金融業界も事業会社の中では高い方だと思いますが、今回の転職で年収は上がったのでしょうか?それとも下がったのでしょうか?

 このケースは少し特殊なのですが、転職前後の年収は若干のマイナスでした。実は、この方のキャリアの中で最も年収が高かったのは弁護士になる前に外資系金融機関にいた時で、約1,500万円前後でした。

そうだったのですね。弁護士資格がない時が一番高かったと。

 弁護士になって最初の小さな事務所では、年収が700〜800万円程度と大きく下がりました。

そこからキャリアアップして直近の外資系法律事務所では1,000万円以上にはなっていたものの、今回の転職ではそこから少し下がる形になりましたね。

ご本人は、年収が下がるという点について、最終的にどう判断されたのでしょうか?

 転職活動の途中までは、年収の優先順位は高めでした。

しかし、話を進めていく中で、年収だけを追求すると、自分の本当にやりたいことや成長という観点では、なかなか希望が叶えづらいと感じ始めたようです。

最終的には、年収の優先順位を若干下げて、長期的なキャリアと成長環境を優先して選択されました。

弁護士のキャリアは長いので、目先の100万円、200万円という金額は1年で十分ペイできるという考え方もできますよね。それよりも自身の描くキャリアを優先するという選択肢があるということは、ご相談者様にはいつもお伝えしているポイントです。

転職の「軸」を明確にすることが成功のカギ

今回の転職活動自体は、順調に進んだのでしょうか?

 はい、比較的順調でしたね。ご相談に来られてから実際に決定するまで、約2〜3ヶ月という期間でした。

最終的に複数の内定が出た中で、先ほどお話しした「学びの環境」という軸で比較検討し、意思決定されました。

最終的な判断軸の整理をサポートしたことが、大きなポイントだったということですね。

 その通りです。第三者である専門家に相談することで、ご本人が気づいていなかったことや見えなかった部分に気づくことは多々あります。

今回のケースも、転職活動を進める中で、ご自身のキャリアに対する本当の優先順位を明確化できたことが、成功の鍵だったと言えるでしょう。

本日は大変参考になるお話をありがとうございました!

 ありがとうございました。

本記事の内容は動画でもご視聴いただけます
動画:【弁護士転職事例】外資系法律事務所から銀行のインハウスローヤーへ

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この記事の監修者

リーガル専門コンサルタントとして、弁護士・法務人材を中心に転職支援を行う。中国発大手テクノロジー企業の日本法人にて創業メンバーとして事業開発・推進に従事。スタートアップ〜大手事業会社での事業開発、マネジメント経験を有していることから、様々な角度からの俯瞰したアドバイスを強みとする。

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