製薬・ヘルスケア業界の法務の仕事とは

製薬・ヘルスケア業界は、人々の健康と生命を守る社会的責任を担うと同時に、高度な研究開発や国内外の厳格な規制対応など、多面的な要素が複雑に絡む業界です。

そのため、法務・コンプライアンスに携わる専門家には、他業界では得られにくい高度な専門知識や責任感が求められます。

この記事では、弁護士や法務専門の転職エージェントが企業内弁護士(インハウスロイヤー)を含む法務担当者がこの業界でどのような業務を担当し、どのようなスキルが必要とされるのか、さらにキャリアパスや今後の展望について解説します。

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製薬・ヘルスケア業界の法務の主な仕事

薬機法や関連規制への対応

製薬企業や医療機器メーカー、医療サービス関連企業は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)をはじめ、厚生労働省が管轄するさまざまな規制に順守しなければなりません。

具体的には以下のような対応が必要です。

開発段階・承認申請対応

治験実施計画の立案や承認申請資料のレビュー、当局への提出書類の整合性確認といった薬事承認手続きのサポート。

適正広告のチェック

製品広告や販促資料が薬機法や各種ガイドラインに抵触していないか、医学的エビデンスと整合性を保っているかなどを監修。

コンプライアンス・倫理指針の策定・運用

製薬・ヘルスケア企業は、医療従事者との関係や臨床試験の実施などにおいて、ビジネス上の慣行や倫理規範に関する厳格な基準を求められます。

主なテーマとして、以下のようなものが挙げられます。

医療従事者との関係管理

謝礼や物品提供の透明性を確保し、不当な利益供与が起きないようにする。

データの管理・プライバシー保護

患者情報や研究データなど機密性が高い情報の取り扱いルールを整備。

贈収賄防止ポリシー・反腐敗行為規定の策定

国内外の法律や規制との整合性を保ち、グローバルベースで運用する。

契約審査・契約書作成(起案)

製薬・ヘルスケア企業では、研究開発、共同開発、製造委託、ライセンス契約、マーケティング代理店との提携など、多種多様な契約が日常的に交わされます。

法務担当者は各種契約のリスクを最小化しながら、企業のビジネスメリットを最大化するために、契約審査や契約書作成(起案)、交渉支援などを行います。

知的財産の管理と活用

新薬や医療機器の開発では、特許をはじめとする知的財産権が事業継続の要となります。例えば、下記のような役割を担います。

特許取得や係争対応

研究成果をどのように特許化するか、特許侵害リスクへの事前対応や係争時の戦略立案など。

ノウハウ保護

営業秘密を含む企業独自の技術情報や知見を守るための社内ルール整備や、共同研究の成果物におけるライセンス管理。

訴訟・紛争対応

新薬の特許権侵害紛争や製品クレーム、副作用による訴訟など、トラブル対応も法務の重要な役割です。事前のリスクモニタリングや紛争発生時の法的戦略立案、外部法律事務所との連携などを通じて、企業の権利保護と社会的信頼の維持に貢献します。

製薬・ヘルスケア業界における特徴・重要ポイント

厳格な規制遵守の重要性

製薬・ヘルスケアは、社会的な使命を果たす一方で、薬機法や海外規制など複雑な法制度に従わなければなりません。

法的な遵守のみならず、生命倫理や企業倫理にも配慮する必要があります。

科学的知識と医療現場の理解

研究開発や臨床試験プロセス、製品特性などの科学的知識、あるいは医療現場や患者ニーズの理解があると、より適切な法的助言が可能になります。

医療従事者との協働や薬事承認手続きなどでは、実務と科学的素養が密接に関係します。

グローバル化への対応

多くの製薬・ヘルスケア企業は海外展開を進めており、クロスボーダーでの契約や規制対応が日常的に発生します。

海外当局とのやり取り、海外の法律への対応など、国際法務の知識や語学力がキャリアの大きな強みとなります。

デジタルヘルスや新技術への対応

近年、AIやビッグデータを用いた研究開発、遠隔医療などのデジタルヘルス領域が急速に拡大しています。

これに伴い、個人情報保護や医療データの取り扱い、ソフトウェアとしての医療機器(Software as a Medical Device:SaMD)に関する規制など、新たな法的課題にも対処する必要があります。

求められるスキルセット・資格

法律知識の深さと専門性

  • 薬機法・関連省令・ガイドライン
  • コンプライアンス法務全般(独占禁止法、下請法、贈収賄防止関連など)
  • 知的財産法(特許、商標、営業秘密保護など)
  • 国際契約法務(海外現地法人や外資系企業との交渉・契約対応)

業界知識・科学的素養

医薬品開発プロセスや臨床試験の流れ、医療機器の設計・認証プロセスといった科学的背景を理解しておくと、研究開発部門や規制当局とのコミュニケーションが円滑になります。

コミュニケーション能力・調整力

研究開発、営業、マーケティングなど社内のさまざまな部門や、海外の関連会社・パートナー企業、規制当局との折衝が多いため、複雑な法的事項を分かりやすく説明し、合意形成を導く力が求められます。

語学力

海外進出やクロスボーダー案件が増加する中、英語力はほぼ必須となりつつあります。

外資系企業や多国籍のチームと協業する場合は、高いレベルのリーディング・ライティング・スピーキング能力が必要です。

参考:法務の年収相場をリーガル専門の転職エージェントが解説

キャリアパスと転職市場動向

企業内弁護士(インハウスロイヤー)としてのキャリア

弁護士資格を持つ方が製薬・ヘルスケア企業の法務部門やコンプライアンス部門で働くケースは、近年増加しています。

企業側の視点を身につけることで、実務経験と経営面での知見を同時に得られる点が魅力です。

法律事務所での専門弁護士としてのキャリア

薬事法務やヘルスケア関連の紛争案件に特化した弁護士として、法律事務所に所属する道もあります。

契約法務から訴訟対応まで幅広い分野に携わりながら、高度な専門領域をさらに深めることが可能です。

転職市場のニーズ

ワクチン開発や新技術を活用した医療機器の需要が高まる中で、法務・コンプライアンスに精通した人材の需要が一層増えています。必ずしも弁護士の資格が必要なわけではありません。

特に、薬事法令や国際規制に詳しい人材は希少価値が高く、転職市場での評価も上昇傾向にあります。

参考:製薬・ヘルスケア業界の法務の仕事一覧(アガルートキャリア掲載中の求人 非公開求人は含まれません)

まとめと今後の展望

製薬・ヘルスケア業界の法務は、高度な規制対応や知的財産管理、グローバル展開など、多角的な知識と経験を要する領域です。

一方で、人々の健康と命に直結する事業に携わりながら専門性を高められるため、大きなやりがいと社会的意義を感じられる仕事でもあります。

社会貢献度が高く、やりがいを得られる

医療の安全性や品質向上に直結する活動を支援し、企業経営の安定にも寄与できる。

高い専門性を身につけられる

規制対応、知財戦略、グローバルコンプライアンスなど、キャリアを通じて他領域にも転用可能な専門知識が培われる。

テクノロジー進化に伴う新たな法務課題

AI診断やデジタルヘルス、ビッグデータを活用する研究開発に関連して、これまでにない法規制への対応が求められ、キャリアアップのチャンスが広がる。

今後も医療分野への投資や技術革新が進む中で、法務人材への需要はさらに高まると予想されます。

製薬・ヘルスケア業界の法務の仕事に関心があるかたはぜひアガルートキャリアのコンサルタントにご相談ください。

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この記事の監修者

株式会社アガルート取締役(株式会社ファンオブライフ取締役を兼任)。 領域特化型転職エージェントを運営する株式会社ファンオブライフを創業し、アガルートへ売却後、同社取締役に就任。 弁護士・法務・管理部門専門エージェント「アガルートキャリア」を立ち上げ、弁護士専門エージェント エイパス株式会社を買収・吸収合併。 特化型エージェント運営やリーガル・管理部門の専門職の転職・キャリアに関する深い知見を有する。 早稲田大学経営管理研究科修了。

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