企業法務と一般民事の違い
- 更新日:2024.12.27
「企業法務」と「一般民亊」の違いを知っていますか。
この記事ではそれぞれについて具体的な事例を挙げながら、違いを説明します。
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INDEX
企業法務と一般民事の違いは3つ
企業法務と一般民事の違いは、
- 法律分野
- 顧客層
- 過程(根拠)の扱い
の3つが主に挙げられます。
法律分野
企業法務は、企業(個人事業主も含む)の事業活動に関わる法律上の業務です。
企業法務には刑事事件もありますが一般民亊事件との対比ということで、この記事では民事事件に絞って説明します。
一般民事は、個人の日常生活に関わる法律上の業務、つまり事業主ではない個人の法律上の紛争です。
個人と企業の契約から生じたトラブルは、企業側からみれば企業法務、個人側からみれば一般民亊です。
顧客層
企業法務は中小企業なら事業主等、大企業なら法務部の担当者など、紛争や相談事案の対応に精通した方が顧客です。
弁護士とのやり取りも慣れているため、他により良い対応をする弁護士がいる場合、そちらに仕事を回すこともあります。
一般民事は年齢や職業等は幅広く、弁護士に相談するのが初めてといった方も多く、紛争や相談事案についてほぼ知識がない方も顧客です。
弁護士のやり取りは、基本的に初めてという方が多く、弁護士という存在に対して高い期待を抱いていることが多いようです。
過程(根拠)の扱い
企業法務は、紛争や相談事案の相談に対する結論を示す際、具体的な根拠や解決に至る過程を示すことが必要です。
また、顧客層で説明したように、弁護士とのやり取りにも慣れ、顧問弁護士を複数抱えている等、弁護士の対応によって依頼の有無を判断します。
したがって、同じような対応をする弁護士であれば、相談した場合により早い回答をした弁護士に事件を依頼するため、迅速な対応が必要です。
一般民亊は、紛争や相談事案の相談に対する結論を示す際、
- 今起きていることを放置しておくとどうなるのか
- 訴訟になるのか
など将来的な不安を解消するための説明が必要です。
基本的に弁護士に対する信頼が大きいため、企業法務と異なり、結論が間違っていなければ、具体的な根拠や解決に至る過程を示す必要はなく示しても理解されないことも多いです。
企業法務と異なり、紛争や相談事案に対する知識は乏しいことが多いため、弁護士からすれば当然である疑問や質問に対しても丁寧に説明する必要があります。
企業法務とは
企業の業種によって紛争や相談事案の内容に差がありますが、以下では、多くの企業で共通して発生し得る分野として、
- 企業統治法務(コーポレートガバナンス)
- 取引・契約法務
- 紛争・訴訟法務
- 組織再編法務(M&A)
以上の4つを挙げて解説します。
企業統治法務(コーポレートガバナンス)
企業の社会的責任として法令遵守が求められます。
- 労働契約上の法令遵守として就業規則等の作成や改訂
- 企業が行う取引上の法令遵守として取扱商品や役務内容の確認
- 契約書の作成・改訂
といった業務が弁護士に要求されます。
個別事案に対する相談であれば回答期限、包括的事案に対する相談であれば企業の決算期や社員の入社日等の関係など、顧客の求める目的を把握し、期限に遅れず回答するといった迅速な対応が要求されます。
取引・契約法務
企業の取引・契約には必ず相手がいます。そこで、合意内容が顧客にとって法的に不利益ではないか、法律に違反する内容ではないかを確認することが弁護士に要求されます。
合意に至る過程において法的知識が必要となれば、相手方との交渉の場に立ち会う、もしくは相手方(代理人弁護士含む)との交渉を要求されることもあります。
取引相手が国外企業等であれば、外国語文書等の和訳といった語学能力が要求されます。
紛争・訴訟法務
企業活動をしていくと、必ず企業内外において紛争が生じます。
そこで、顧客自身で解決が困難となった紛争について、解決に向けた法的なアドバイスや具体的な活動が弁護士に要求されます。
企業内においては、
- 問題を起こした社員等を解雇するような場面で解雇に至る理由や手続きに法的な問題はないか
- 企業外においては、相手方が契約を履行しない場合の法的手続き(債権回収業務等)
などが具体例として挙げられます。
組織再編法務(M&A)
企業活動をしていく中で、新たな事業活動の拡張をしたい、不採算部門の清算をしたい等、企業活動の変更を検討すべき場面が生じます。
そこで弁護士は、事業活動の拡張や縮小にあたり事後の紛争を防ぐための法制度等の確認、他社との合併や他社への事業譲渡をする場合には法的手続きの確認やより顧客に有利な方法の提案等します。
新たな事業活動をする場合には特別法の存否・内容といった法規制の確認等、他社との合併をする場合には相手方会社の財務内容の確認等の調査活動(デューデリジェンス)も弁護士に求められることがあります。
一般民事とは
一般民事の相談・依頼内容は、多種に亘りますが、個人が身近な問題として誰しも起こり得ると考えられる分野として、
- 家事紛争
- 親族・相続紛争
- 労働紛争
- 交通事故
- 債務整理
- その他
の6つを挙げて解説します。
家事紛争
家事紛争の典型事例は離婚です。
依頼者の代理人として、離婚の成立に向けた交渉や法的対応、子どもがいる場合は養育費や親権等、依頼者の要望に沿った解決が弁護士に要求されます。
最近では、内縁関係も婚姻に準じた法的保護がされているため、内縁解消に伴う費用分担や損害賠償請求等に関する紛争解決も弁護士に要求されます。
親族・相続紛争
親族・相続紛争の典型事例は、親などが死亡した場合の処理です。
弁護士は相続財産があれば遺産分割協議の交渉や協議書の作成、相続財産がない場合や不明な債務がある場合は、相続放棄や限定承認の申述をする手続を行います。
親族間において養扶助者が存在する場合、誰が扶助するのかといった交渉や法的な手続き・対応を要求されることもあります。
労働紛争
労働紛争の典型事例は、
- 勤務先を解雇された
- 未払賃金がある
といった場合です。
解雇された場合であれば、弁護士は解雇事由を確認し、依頼者から事情を聴取し、解雇事由に該当するのか等、解雇権の濫用はないのかと確認し、使用者との交渉や法的手続きの対応を行います。
未払賃金の請求であれば、遡って2年分しか請求できないため、迅速な対応が要求されます。
タイムカード等の証拠がない場合も多いため、依頼者の日常的な生活サイクルの聴取や同僚等の協力者の証言を得る等、具体的な労働時間を把握するための活動やアドバイスが弁護士に要求されます。
交通事故
交通事故は大別して、顧客が被害者の場合と加害者の場合に分けられます。
顧客が被害者の場合
被害者が顧客となるのは、物的損害(車両の修理代等)や人的損害(治療費等)がある場合です。
加害者側と損害賠償について交渉することになりますが、通常、加害者が加入している保険会社の担当者という専門家が交渉窓口となるため、弁護士に交渉が依頼されより高額な請求をすることが要求されます。
一般的に、訴訟提起をした方が賠償額が高額となるため(裁判基準)、訴訟提起を見据えた交渉や証拠資料の収集を依頼者に指示しておく必要があります。
顧客が加害者の場合
加害者が顧客となる場合の多くは、保険会社の訴訟代理人となる場合です。
顧客にとっては賠償額を低くすることが利益になりますが、加害者及び保険会社の社会的責任として被害者の損害を適正に賠償すべきアドバイスを顧客にすることも弁護士倫理として要求されます。
債務整理
債務整理では収入額が返済額を上回った顧客の経済的再生が弁護士に要求されます。
多くの場合、返済が滞り、債権者からの督促が始まってからの相談・依頼が多いため、受任後は速やかに受任通知を債権者に送付し、債権者からの連絡を顧客にさせない努力が必要です。
債務整理の方法は大きく分けて、
- 任意整理
- 個人破産
- 個人再生
の3つがあります。
それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるので、顧客の資力状態や要望に応じて方法を選択する必要があります。
過払金返還請求は、任意整理の一環であり、返還に向けた債権者との交渉や訴訟提起等の手続きします。
債権者に闇金等がある場合、弁護士が介入しても顧客に直接連絡をすることもあります。
この場合、通知のみならず、直接電話するなり、事務所に訪問するなりして、連絡を止めさせることも弁護士に要求されます。
その他
その他の事例として、
- 貸したお金を返してもらえない(債権回収)
- 異性に付きまとわれている
- 不倫や浮気相手に損害賠償請求したい
などがあります。
基本的に弁護士は、
- 現況の把握
- 今後対応が考えられる手続と成果の見込み
- 事件処理に要する弁護士費用
などを提示します。
特に、債権回収の相談で回収見込みが低い場合、弁護士費用が顧客のさらなる経済的損失となってしまうため、安易な受任は控える、大きな成果は見込めないことを相談時に説明することもあります。
まとめ
- 企業法務と一般民事は法律分野、顧客層、過程(根拠)の扱いが違う
- 企業法務とは企業の事業活動に関わる法律上の業務
- 一般民事とは個人の日常生活に関わる法律上の業務
企業法務と一般民亊について、それぞれの典型分野を挙げつつ、違いをまとめました。
両者に共通するのは顧客の要望を把握することにあるでしょう。
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この記事の監修者
経理を主軸とした管理部門の方のキャリア支援を専門としており、特に伝統的な日系大手企業への転職に強みを持つ。その他にも国内外の会計事務所や、メーカー、商社、金融、IT、医薬ヘルスケア、消費財等々、多岐に渡る業界の企業との深いコネクションを有しており、会社規模もスタートアップから上場企業まで幅広く対応。
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