リスクマネジメント職の転職市場動向と求人相場
- 更新日:2025.07.09
近年、企業の不祥事や大規模な情報漏えいなどが社会問題となり、コンプライアンスやガバナンスの強化が喫緊の課題として取り上げられるようになりました。
とりわけ、企業を取り巻くリスクはグローバル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)にともなって多様化し、リスクマネジメントの重要性がかつてないほど高まっています。
これに伴い、リスクマネジメント関連の求人が増加し、実務経験を活かしてキャリアアップを目指す方にとってはチャンスが到来しているともいえるます。
本記事では、リスクマネジメント職の具体的な業務内容や企業規模・業種別の特徴、転職市場の動向、そしてキャリアアップを図る上で押さえておきたいポイントを総合的に解説します。
また、後半では弁護士・法務・管理部門専門の転職エージェント「アガルートキャリア」を活用するメリットにも触れ、効率的に転職を進めるためのヒントをお伝えしていきます。
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INDEX
リスクマネジメント職とは?今注目される理由
リスクマネジメントの定義と重要性
リスクマネジメントとは、企業活動におけるさまざまなリスクを洗い出し、評価し、未然に防止・軽減していく一連のプロセスを指します。
具体的には、法令違反リスク、不正会計リスク、情報セキュリティリスク、自然災害・パンデミックリスクなど、企業を取り巻く多種多様なリスクへの対処が含まれます。
企業が継続的に成長していくためには、リスク発生時の影響を最小限に抑え、信用失墜や経済的損失を防ぐ仕組みを整備することが欠かせません。そのため、リスクマネジメント担当者は企業にとって不可欠な存在として位置づけられています。
近年の注目度の高まり
- コンプライアンス強化への社会的要請
上場企業に限らず、企業不祥事が相次ぐなか、社会や投資家の目は厳しさを増しています。CSR(企業の社会的責任)やESG投資の観点からも、法令遵守や倫理観の徹底が求められるようになりました。 - DX推進による新たなリスクの顕在化
インターネットやクラウドサービスの活用が進む一方で、サイバー攻撃や個人情報の流出など、新たなリスクも増大しています。企業はビジネスチャンスと同時にこれらのリスクにも備えなければならず、専門知識を持った人材の需要が拡大しています。 - グローバル化で複雑化する法規制
海外進出や輸出入取引などが増えると、各国の法規制や商習慣への対応が必要となり、コンプライアンス体制はよりいっそう高度化・複雑化。リスクマネジメントの専門家による多角的なアプローチが重要視されます。
これらの背景から、リスクマネジメントのプロフェッショナルを求める求人は年々増加しています。
一方で経験者は不足しており、求職者個人から売り手市場となっており、今後もこの傾向は続いていくと予想しています。
リスクマネジメント職の主な業務領域
コンプライアンス対応
法令違反リスクへの対応
- 新規事業や契約書のリーガルチェック
- 社内ルールや研修プログラムの整備
- 内部通報制度の運用・改善
倫理・行動規範の策定
- 企業理念や業務上の倫理指針を策定し、従業員へ周知徹底
内部統制・内部監査
内部統制の構築・運用
- 上場企業ではJ-SOX(内部統制報告制度)対応が必須
- 経営層へのレポーティング、改善計画の提案
内部監査の実施
- 現場監査やシステム監査を行い、不備や改善点を発見・指摘
- 関連部門との連携・フォローアップ
※内部統制・内部監査のポジションは単体で募集されることも多く、「リスクマネジメント」と呼ばれていないこともあります。
経営企画におけるリスク分析
新規事業立ち上げ時のリスク評価
- 市場リサーチや競合他社の動向分析
- 規制リスクや契約リスクの洗い出し
BCP(事業継続計画)の策定
- 災害やパンデミック発生時の対応フロー整備
- 企業全体の危機管理マニュアルの作成・更新
情報セキュリティ
セキュリティポリシーの策定・運用
- サイバー攻撃や情報漏えいへの対策指揮
- 最新のセキュリティ技術動向の把握と導入計画
個人情報保護対応
- 国内外の個人情報保護法規制(例:GDPR)への適合
- 社内の運用体制や教育コンテンツの整備
海外子会社・拠点のガバナンス
海外駐在または海外拠点との連携
- 現地規制の理解と適切なコンプライアンス施策の展開
- 海外子会社のリスク管理体制のモニタリング
クロスボーダーな案件管理
- 国際的に統一した行動規範の構築
- 贈収賄防止プログラムの導入・監督
このようにリスクマネジメント職は、コンプライアンスから情報セキュリティまで幅広い業務範囲を扱います。
そのため、企業の状況によっては「法務部」「内部監査部」「経営企画部」などの複数部門が一体となってリスク管理を推進することが多く、横断的なコミュニケーション能力やプロジェクトマネジメント力が重視されます。
企業規模・業種別の特徴と求人動向
日系大企業
特徴
- 組織体制が明確に分業化されているケースが多く、コンプライアンス部門や内部監査部門が設置されている。
- 上場企業として、J-SOXや各種法定開示などの対応が必須であり、高度な内部統制を求められる。
- コンプライアンス違反や不祥事のリスクを極力回避するため、リスクマネジメント体制を強化する動きが加速。
求人動向
- マネージャー・シニアマネージャー候補の求人が多く、年収は500万円~1,000万円以上のレンジで設定される例が多い。
- 英語力を問われるポジションもあり、海外子会社を含むガバナンス強化や海外法律対応を担う人材に高い需要。
- 中でも「各事業部を横断的に統制する」「経営層に直接報告する」などの経験がある方が重宝される。
外資系企業
特徴
- グローバル本社の方針や国際的な規制(例:FCPA、GDPRなど)に準拠したコンプライアンス体制が求められる。
- 組織はフラットで個人裁量が大きい場合が多く、担当領域も幅広くなる傾向。
- ビジネス英語でのコミュニケーションや海外出張・海外子会社との連携が必須のことも。
求人動向
- 年収水準は日系大企業と同等か、それ以上の水準が提示されることがある。
- グローバル基準でのリスクマネジメント経験を積んだ人材を優遇しやすい。
- コンプライアンス違反が企業ブランドに直結するため、社内外を巻き込んだ予防策・教育をリードできる人が求められる。
ベンチャー・スタートアップ
特徴
- 事業スピードが速く、急拡大する組織でリスク管理体制がまだ未整備なケースが多い。
- リスクマネジメント専任担当がおらず、法務や総務が兼務している場合がある。
- 将来的にIPO(株式上場)を目指す企業では、上場準備のための内部統制やコンプライアンス整備に力を入れるケースが増えている。
求人動向
- 即戦力として大企業などでのリスク管理経験を持つ人を求めるケースがある。
- 年収は大企業ほどではないかもしれないが、ストックオプションなど別のインセンティブがあることも。
- 経営陣と距離が近く、意思決定に大きく関与できるため、組織構築のやりがいを感じやすい。
リスクマネジメント転職で求められるスキル・経験
実務経験の重視
資格よりも実務経験が評価されやすい
- 弁護士資格が必須というケースは少なく、ビジネス実務法務検定などの資格があるとプラス評価程度になることが多い。
- 企業の法務部やコンプライアンス部門、内部監査などでの複数年にわたる実務経験が最重要視される。
具体的な成功事例や成果
- 「〇〇リスクの洗い出しと対策提案で、損失を最小化できた」「内部監査で発見した不備を改善し、監査法人からの指摘が減った」など、わかりやすい成果をアピールすると効果的。
リスク評価・対策立案のスキル
定量・定性的なリスク評価
発生可能性やインパクトを分析し、優先度を判断する。
対策案の提案・実行・フォローアップ
特に管理職クラスでは、提案だけでなく実行プロセスの管理、効果検証まで行えることが評価される。
マネジメント層との折衝力
経営レベルでの意思決定をサポートするため、データや論理的根拠をもとにリスクを“見える化”する能力が重要。
コミュニケーション能力と組織調整力
- 部門横断でのプロジェクト遂行
- リスクは単一部署にとどまらないことが多いため、事業部や経営企画部、IT部門など、多岐にわたる利害関係者との連携が不可欠。
- リーダーシップ・マネジメント能力
- チームやプロジェクトを牽引し、組織全体を巻き込んで施策を進められる人材が求められる。
- 報告書作成・プレゼンテーションスキル
- 役員会や取締役会など、上層部に対してリスク状況や対応方針を説明する機会が多いため、わかりやすい資料作成とプレゼンスキルが重要。
4-4. 最新の法規制・業界動向へのアンテナ
- 国内外の法令改正・ガイドライン
- 個人情報保護や金融商品取引法、独占禁止法など、定期的に改正・強化される法律をウォッチし、速やかに社内施策に反映する。
- 業界固有のリスク特性
- 金融・IT・メーカーなど、それぞれの業種によってリスクの特性や注力すべき領域が異なるため、業界知識も強みになる。
- 情報セキュリティ・DX関連の知見
- クラウドサービスの普及やデジタル化にともない、サイバーリスクやデータガバナンスの知識がますます重要に。
想定される年収レンジとキャリアパスの例
年収水準
500万~1,000万円前後が中心
- リスクマネジメントポジションは企業にとって戦略的に重要な業務領域であるため、比較的高めの年収設定が見られます。
- 管理職(マネージャー以上)の求人であれば、年収800万円~1,200万円程度のオファーが期待できるケースも多い。
部長クラス、役員クラス
部門全体を統括し、経営層にレポートする立場になると、年収1,000万円を大きく超える場合もあります。
キャリアパスの例
- スペシャリスト路線
- コンプライアンスや内部監査など特定領域のプロフェッショナルとして、各種リスク対応の“軸”となる。
- グローバル基準の資格取得や特定法分野の専門知識を深めることで、市場価値をさらに高められる。
- マネジメント路線
- リスクマネジメント部門のマネージャーや部長として、企業全体のリスク対応方針を策定・統括。
- 組織づくりやメンバーマネジメントにも携わり、複数部門を横断するプロジェクトをリード。
- 経営企画・役員路線
- リスク管理の枠を超え、経営計画策定や企業戦略の立案にも深く関わる。
- 大きな視点で事業リスクをとらえ、将来的に執行役員や経営層へとステップアップする道も。
リスクマネジメント求人の注目ポイント
コンピテンシー(行動特性)の重視
- リスクが顕在化した際に、迅速かつ的確に対応し、関係者を説得して合意形成を行う力が問われます。
- 面接では「過去にどのような危機的状況に直面し、どのように解決へ導いたのか」など、具体的なエピソードを聞かれることが多いです。
非公開求人が多い傾向
- 企業のリスクマネジメント強化は競合他社に知られたくないケースがあり、非公開で募集されることが少なくありません。
- 転職エージェントを利用することで、こうした非公開案件に出会える可能性が高まります。
グローバル案件の有無
- 海外子会社や海外拠点を持つ企業では、語学力や国際法規制の知識が求められる場合があります。
- 今後は国内企業でも海外プロジェクトに参画する可能性が高まるため、英語でのコミュニケーション力は重要度を増しています。
転職活動を成功させるためのステップ
自己分析とキャリアビジョンの明確化
自分の強みを整理
コンプライアンス、内部監査、経営企画など、これまで携わってきた業務の中でどの領域に強みがあるかを明確化。
将来像を描く
スペシャリストとして専門性を究めたいのか、マネジメント層として組織を動かしたいのかなど、目標をはっきりさせる。
志望企業・業界の研究
企業理念・経営方針の理解
リスクマネジメントの方向性は企業文化や経営方針に大きく左右されます。
IR情報・プレスリリースの確認
企業が直面しているリスクや課題を把握し、面接で具体的な提案をできると高評価につながる。
職務経歴書・面接対策
具体的な数値や成果を盛り込む
「○○プロジェクトでコスト削減△%を達成」「監査指摘項目を×件削減」など、定量的実績をアピールすると説得力が増す。
面接でのストーリーづくり
「どのようなリスクがあったのか」「そのリスクをどのように可視化し、対策を実行したか」など、時系列でわかりやすくまとめておくとよい。
転職エージェントの活用
非公開求人や独占求人の紹介
一般に公開されていないリスクマネジメントの高待遇求人が見つかる可能性がある。
選考対策・条件交渉のサポート
応募書類の添削や面接練習、入社後の年収・ポジションの交渉支援など、専門的なアドバイスを受けられる。
アガルートキャリアを活用するメリット
リーガル領域に特化した転職エージェントとして、アガルートキャリアを活用することで、以下のようなメリットが得られます。
- リーガル領域専門のアドバイザー
- 法務、コンプライアンス、リスクマネジメントなどに精通したキャリアアドバイザーが在籍しており、業界特有の採用ポイントや求人企業のニーズを的確に把握しています。
- 一般的なエージェントではカバーしきれない専門的な質問やキャリア相談にも応じてもらえます。
- 非公開求人・大手企業案件が豊富
- 当社が保有するリスクマネジメント求人は、大手企業やグローバル企業、IPOを目指すスタートアップなど多様。
- 「公開されていないからこそ、高年収やマネジメントクラスの案件も見つかりやすい」といったメリットがあります。
- 選考対策・書類添削の手厚いサポート
- 実務経験や強みを分かりやすく表現できるよう、職務経歴書や面接対策をサポート。
- リスクマネジメント部門が選考で重視するポイントを知り尽くしているため、的確なアドバイスが可能です。
- キャリアの長期的な伴走
- 今回の転職だけでなく、将来的なキャリアビジョンに合わせて企業選択や資格取得のアドバイスなど、長期的なサポートを行っています。(今すぐの転職でなくとも今後に備える意味での面談も歓迎しております)
- 「部長クラスや経営企画へのステップアップ」を視野に入れたキャリア形成プランにも柔軟に対応します。
まとめ
リスクマネジメント領域は、企業のガバナンス強化やコンプライアンス遵守、DX推進による新リスク対応など、多様なニーズが交錯する重要ポジションです。
日系大企業をはじめとして、外資系企業やベンチャー企業でもリスクマネジメント経験者の需要は高まっており、年収500万円~1,000万円前後、管理職クラスでは1,000万円を超える求人も珍しくありません。
一方で、リスクマネジメントの業務は幅広く、企業ごとに求める人材像も異なります。転職を成功させるためには、ご自身の経験や強みを明確化し、企業の課題や組織体制を深く理解したうえで、適切なポジションを探すことが重要です。
そこで、リーガル領域専門のアガルートキャリアのようなエージェントを活用すれば、非公開求人や大手企業の独占案件にアクセスできるだけでなく、選考対策や条件交渉などのプロフェッショナルなサポートを受けられます。
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この記事の監修者
株式会社アガルート取締役(株式会社ファンオブライフ取締役を兼任)。 領域特化型転職エージェントを運営する株式会社ファンオブライフを創業し、アガルートへ売却後、同社取締役に就任。 弁護士・法務・管理部門専門エージェント「アガルートキャリア」を立ち上げ、弁護士専門エージェント エイパス株式会社を買収・吸収合併。 特化型エージェント運営やリーガル・管理部門の専門職の転職・キャリアに関する深い知見を有する。 早稲田大学経営管理研究科修了。
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