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未来を拓く法務プロフェッショナル 日本IBM法務が描く成長と挑戦の道筋

法務部インサイド

未来を拓く法務プロフェッショナル 日本IBM法務が描く成長と挑戦の道筋

日本アイ・ビー・エム株式会社
弁護士
大内麻子/田中聡美

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テクノロジーの進化が加速する現代において、企業の法務部門は「守り」だけでなく、事業を前に進める「攻め」の機能としての役割を担うようになっています。日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)の法務部もその最前線に立ち、ビジネスの変化に即応しながら、新たな価値を創出する法務を実践しています。

今回お話を伺ったのは、日本IBMでインハウスローヤーとして活躍する大内麻子様と田中聡美様。お二人のキャリアパスや業務のやりがいを通じて、同社法務部がどのようにして個々の成長を支え、ビジネスの戦略パートナーとして機能しているのかを探ります。

弁護士キャリアの始まりとインハウスローヤーへの道

日本アイ・ビー・エム株式会社 弁護士 大内麻子様

自己紹介を兼ねて、これまでのキャリアについてお聞かせください。

大内 日本IBM法務部の大内麻子と申します。

私はアンダーソン・毛利・友常法律事務所に63期として入所し、独占禁止法を中心にカルテル案件などを担当していました。3年目には国内企業への出向、5年目にはイギリスの法律事務所での研修を経験し、国際的な案件にも関わる機会を得ました。

その後、夫の海外赴任に伴い上海オフィスで勤務し、帰国後は製薬会社に出向したことをきっかけにインハウスローヤーとしてのキャリアを歩み始めました。現在は日本IBMの法務部で、契約交渉や紛争対応、人事関連案件など、幅広い法的課題に携わっています。

田中 日本IBM法務部の田中聡美と申します。

私も大内と同じくアンダーソン・毛利・友常法律事務所でキャリアをスタートし、65期として一般企業法務や訴訟対応などに幅広く携わりました。

その後、国内企業への出向やアメリカのロースクール留学、現地法律事務所での研修を経て、2019年に日本IBMへ入社しました。

現在はシステム開発に関わる契約交渉や紛争対応を中心に、ビジネス部門と密に連携しながら法務としての付加価値を高める業務に取り組んでいます。

お二人ともアンダーソン・毛利・友常法律事務所でキャリアをスタートされ、その後インハウスへ転身されたとのことですが、その理由をお聞かせください。

大内 キャリア3年目に出向した日本の大手企業での経験が大きな転機でした。そこで独占禁止法のルール整備やコンプライアンス関連の業務に携わり、初めてインハウスの仕事を間近で体感しました。

法律事務所にいるときは企業法務の現場で何が起きているのか具体的に想像できなかったのですが、実際にビジネス部門の方々と議論を重ね、会社としての意思決定に関わる過程を経験し、自分にとても合っていると感じました。

ビジネスを深く理解しリスクを特定して軽減策を考えるプロセスが非常に面白く、そこから「いつかインハウスとして働きたい」という思いが生まれました。

出向前はインハウスという選択肢を意識されていましたか。

大内 いえ、当時はインハウスの仕事が具体的にどのようなものか分かりませんでしたし、特に意識してもいませんでした。

日々の案件に集中していたため、長期的なキャリアを考える余裕がなかったというのが正直なところです。今振り返ると、早い段階から自分のキャリアを俯瞰して考えることの大切さを実感します。

田中様はいかがでしょうか。

田中 私も出向の経験を通じて、ビジネスとの距離の近さに魅力を感じました。法律事務所では依頼に対して法的見解を示して終わることが多いのですが、社内にいると事業の構想段階から関わり、自分の助言がプロジェクトの形になる過程を見届けられます。その「一緒に育てていく」感覚がとても刺激的でした。

また、出産を経てライフステージが変わったことで、長期的に成長できる環境を考えた際、インハウスが最適だと感じました。特に日本IBMはIT分野に強く、法律がまだ整備されていない新しい領域にいち早く触れられる点が大きな魅力です。

社内で課題を発見し、必要に応じて外部専門家と連携しながら、契約や体制を整えていく。その一歩先を行く実務に関われるのが、インハウスならではの醍醐味だと思います。

日本IBMを選んだ決め手とその魅力

お二人とも日本IBMが初めてのインハウスではなく、他社でのご経験をお持ちとのことですが、IT業界ではない前職から、なぜ日本IBMを次のキャリアに選ばれたのでしょうか。

大内 前職の製薬会社でも、AIをはじめとするIT技術の重要性を強く感じていました。

当時は生成AIがまだ一般的ではなかったものの、すでに「AIをどのように活用していくか」という議論が始まっており、社会全体のインフラとしてITが欠かせない存在になっていることを実感していました。

そのため、IT企業の中でどのようにビジネスが動いているのかを理解し、最先端の技術に触れながら法的な課題に取り組む環境に身を置きたいと考えたのが最初の理由です。

また、日本IBMの法務部は経営層に近い位置にあり、ビジネスの意思決定に深く関与していると聞きました。経営層から信頼される法務部ということは、個々のメンバーのスキルや判断力のレベルが高いということです。そのような環境で自分を成長させたいという思いも強くありました。

さらに、面接で当時の法務部長のアンソニー・ルナと話をした際、彼からリーダーシップの在り方やチームの価値観について多くを学びました。法的知識だけでなく、コミュニケーション力やリーダーシップといったソフトスキルを磨きたいと考えていた私にとって、その考え方が非常に共感できたのです。

また、選考過程でチームメンバーの方々とも直接お話しする機会をいただき、一人ひとりが個性的で高い専門性を持っていることを肌で感じました。アンソニー自身がメンバーを紹介してくれたことからもチームを大切にしている文化が伝わり、「この人たちと働きたい」と思えたのが最終的な決め手でした。

田中さんはいかがでしょうか。

田中 アメリカ留学後、ニューヨークの法律事務所で1年間研修を行った際に、米国系組織のカルチャーに強く惹かれました。

現地では上下関係がフラットで、同僚同士が家族やプライベートの話も自然に共有しながら、仕事と生活の両方を大切にしています。そのオープンで対等なコミュニケーションの文化が、自分にはとても合っていると感じました。

また、滞在中に参加したイベントで米国IBMの女性エンジニアが登壇し、ブロックチェーン技術を用いた産業のトレーサビリティの活用事例を紹介していました。その発表を聞いて、「ITは今後ますます成長し、法律家として深めるに値する分野だ」と強く実感しました。こうした経験から、「米国系かつITの企業で働きたい」という思いが芽生えたのです。

その中でも日本IBMを選んだのは、本社がアメリカにありながら日本の法務部に大きな裁量が与えられている点に魅力を感じたからです。

関与できる案件の幅が広く、自らの判断で意思決定に関われる環境は、法務として非常にやりがいがあります。また、法務部の人数がコンパクトであるため、一人ひとりが多様な案件に携われることも、成長の機会として大きな魅力でした。

実際に面接でアンソニーと話した際、彼自身も法律事務所出身で「法律事務所から転職することは第一線を離れることではない。ここでは他の側面において弁護士としてさらに成長できる」と語ってくれて。その言葉が心に残り、「この環境で新しい挑戦をしたい」と強く思い、入社を決めました。

日本IBM法務部は、経営層との信頼関係が強固

日本アイ・ビー・エム株式会社 弁護士 田中 聡美様の写真

日本アイ・ビー・エム株式会社 弁護士 田中 聡美様

実際に日本IBMに入社してみて、入社前の印象と比べていかがでしたか。

田中 想像していた以上に経営層との距離が近く、難易度の高い課題に日々向き合っていると感じます。これは大きなやりがいに繋がっています。

法務部は経営の意思決定プロセスに深く関与しています。日々の業務においても、取締役や社長に直接説明や助言を行う機会が多く、経営層も重要な判断の際には必ず法務の意見を求め、真摯に受け止めてくれます。

こうした信頼関係が組織として確立されており、私のキャリア年次でも通常はシニア層でなければ携われないような経営レベルの案件に関与できているのは非常に恵まれた環境だと思います。

経営層との強い信頼関係があるからこそ、若手の段階から高度な経験を積むことができるのですね。大内様はいかがでしょうか。

大内 私も同じく、入社してから法務部の裁量の大きさと透明性の高さに驚きました。特に印象的だったのは、リーダー層からのメッセージが非常に明確で、一貫している点です。

米国本社の法務部門のトップをはじめとするリーダー達から、「どのような法務組織でありたいか」「どのようなインハウスローヤーを目指すべきか」といった方針が具体的に伝えられています。

田中 毎週、社長からリーダー層向けのメッセージが発信され、それが法務部長を通じて法務部にも共有されるため、会社全体の方向性と自分たちの役割を常に一致させながら働くことができます。これは他社ではなかなか得がたい特徴だと思います。

大内 法務部としても、どこまでリスクを取るべきか、どのように意思決定をすべきかという判断において、組織全体のビジョンが明確であることは非常に重要です。

IBMで働くようになってから、自分の判断により確信を持てるようになりましたし、リーダーからの明確な方向性が法務としての自律性と成長を支える基盤になっていると感じています。

日本IBM法務部での具体的な業務と特色

具体的にはどのような業務を担当されていますか。まずは大内さんからお聞かせください。

大内 私は主に人事、プライバシー、経済安全保障に関する案件を担当しています。前職が製薬会社だったことからヘルスケア関連の案件にも関わっていますし、最近では公共事業や量子コンピュータ関連の案件も手がけています。扱う分野は非常に幅が広いです。

法務部内ではチーム分けなどはあるのでしょうか。

大内 明確なチーム制はなく、1年ごとにローテーションが行われます。今年は公共事業と量子コンピュータを担当していますが、昨年は量子のみでした。法務部長が意図的に担当領域を入れ替えており、幅広い経験を積むことができるよう設計されています。

田中さんはいかがですか。

田中 私は現在、IBMコンサルティング事業部を担当しています。この事業部では、システム開発やDX推進に関する契約交渉を中心にサポートしています。契約は定型的なものではなく、お客様ごとに条件を調整しながら進める必要があるため、交渉の段階から関与します。

また、プロジェクト開始後に開発が想定通り進まない場合もあるので、契約を踏まえてどのように対応すべきか、お客様とのコミュニケーションをサポートする業務も担っています。加えて、既存の訴訟案件も担当しています。

M&Aなどスポットで発生する案件はどのように対応されているのでしょうか。

田中 M&Aについては専任チームがあるわけではなく、法務部全体で対応しています。メンバーそれぞれが専門領域を持ちながらも、案件はワークロードや関連分野の知見を考慮して柔軟に割り振られます。私も大内さんもM&A案件を担当することがあります。

固定の担当を持たず、幅広い領域に携われるのは大きな特徴ですね。

大内 はい。毎年ローテーションがあることで、新しい分野の知識を常に吸収し続ける必要があります。異なるビジネスモデルを理解しながら法務対応を行う点は、他社にはない日本IBM法務部の特徴だと思います。

他社の法務部と比べて、IBMならではの特徴はありますか。

大内 日本IBM法務部では「法務はビジネスのパートナーである」という考えが深く浸透しています。そのため、ビジネス理解を深める取り組みが活発です。

最近では、法務部員一人ひとりが特定の事業分野を選び、その事業リーダーから直接話を聞き、法務部内でプレゼンテーションを行う企画もありました。単なるスローガンで終わらせず、実際に行動を通じてビジネス理解を深めていく姿勢が徹底されています。

田中 IBMの法務部は、常に「どうすればより良くできるか」を考え続ける組織です。

前年よりも自分がどのように成長したか、どのように価値を提供できるようになったかが重視されます。これは法務部に限らず、会社全体に根付いている「Growth Mindset(成長志向)」という文化によるものです。

技術の進化に合わせて常に学び続ける姿勢が求められており、研修機会も非常に豊富です。昼休みに技術系メンバーによるオンライン講座が開かれたり、「学びウィーク」という集中学習期間が設けられたりと、継続的に成長できる環境が整っています。

成長志向を支える文化と仕組みがあるのですね。とはいえ、求められるレベルも高いと思いますが、サポート体制はいかがですか。

大内 サポートは非常に手厚いです。チーム内でのフォローに加え、法務部長との週1回の1on1もあります。経験豊富なメンバーが多く、分からないことがあればすぐに相談できます。

若手の頃は「こんな質問をしていいのだろうか」と躊躇することもあるかもしれませんが、IBMではそうした心配は不要です。迷った時にすぐ相談できる環境があり、その安心感が挑戦と成長を後押ししてくれます。

働き方についても教えてください。リモートや出社のバランスはどのようになっていますか。

大内 現在は、特に一般法務のメンバーは、週に数日、曜日を合わせて出社しており、対面でのコミュニケーションも大切にしています。

対面でのやり取りはやはり相談がしやすく、チームの一体感も高まります。状況に応じて柔軟に働き方を進化させていく点にも、日本IBMらしい適応力を感じます。

JILAインハウスリーガルアワードを2年連続受賞する日本IBM法務部の実力

インタビュイーの皆様の写真

日本IBM法務部は、JILAインハウスリーガルアワードを2年連続受賞。先進的な領域へのチャレンジは日常的に行われているという。

昨年、日本組織内弁護士協会(JILA)が主催する「JILAインハウスリーガルアワード」で、中規模法務部門のパートナー機能賞を受賞されました。2年連続の受賞とのことですが、どのような点が評価されたとお考えですか。

田中 1年目は個人で応募し、2年目はぜひチームで応募したいと思い挑戦しました。特に今年は、法務部がビジネスパートナーとして機能した点を評価いただけたのだと思います。

日本IBMでは新しいビジネスモデルや取り組みが次々と生まれるため、「どのような契約形態にすべきか」「お客様とのリスク配分をどう設計するか」といった課題が頻繁に発生します。

そのような前例のない案件に対し、少人数で密に連携しながら事業の目的を理解し、リスクを適切にコントロールして形にしていった取り組みが評価されたと感じています。

受賞が決まった時のお気持ちはいかがでしたか。

田中 純粋に嬉しかったです。チームの活動内容をまとめる際は、皆の話を聞くほど「これは絶対に受賞できるようにまとめなければ」と思い、かなりのプレッシャーを感じました。

これまでにも法務部長が応募し、海外の法務アワードで受賞した実績はありましたが、日本の団体から表彰されたのは初めてでした。日本社会の中でIBM法務部が注目される機会になったことは、大きな喜びでした。

大内さんも同じような思いをお持ちでしたか。

大内 はい。IBMの法務部は、外部での活動や社内外での評価を得る活動を積極的にする文化があります。

他社の法務部と交流し、他の企業がどのような課題に取り組み、どう解決しているのかを知ることで、自分たちの実務にも新たな発想を取り入れることができます。外部での評価が社内にも還元され、法務部全体の地位向上につながる点も大きな意義があると感じました。

IBM法務部のメンバーにはどのような共通点がありますか。

田中 明るく、知的好奇心が旺盛な人が多いですね。

皆さん仕事以外の時間も充実していて、趣味を徹底的に極めています。料理が好きで調理師免許を取る方や、登山やキャンプ、船舶免許を取得する方など、本業と同じ熱量でプライベートにも取り組む方が多いです。

以前は法務部のメンバーで、共にトライアスロンに参加している方々もいました。新しいことに挑戦する姿勢は、業務にも良い影響を与えていると思います。

日本IBMの法務部で働く中で、ご自身の成長を感じる瞬間はどのような時でしょうか。

大内 法的な分析をするだけでなく、その分析をどうビジネスに結びつけるかを考えるようになったことです。どのように伝えれば相手が理解し、動いてくれるかという「伝え方」も含め、戦略的に助言を設計する力が身についてきたと感じます。

法務部長からも「常に戦略的に考えなさい」と言われており、その意識を持って日々の業務に臨むようになってから、自分の成長を実感しています。

意識して取り組むことが成長につながっているのですね。

大内 はい。もちろん経験の中で自然に身につく部分もありますが、意識的に取り組むことで成長のスピードは大きく変わります。常に自分の関わり方を振り返り、改善していくことが大切だと思います。

田中さんはどのような成長を感じていますか。

田中 私にとってのキーワードも「戦略的に」です。もう一つ挙げるとすれば、「度胸」がついたことですかね。

IBMでは前例のない課題に直面することが多く、初めのうちは戸惑うこともありましたが、今では問題を細分化し、戦略的に一つずつ解決策を立てて進めるようになりました。

法務部長からも「Don’t panic.(慌てるな)」とよく言われますが、本当に解決できない問題はないと実感しています。

法律事務所時代は、パートナー弁護士が危機管理の場で冷静に対応する姿を見て「どうすればあのように振る舞えるのだろう」と思っていました。しかしIBMに入ってからは、経営層に直接説明する機会も多く、リスクをどう整理し、どのように伝えるかを自ら考え抜く場面が増えました。

その経験を重ねるうちに、落ち着いて対応できるようになり、事業部の方から「田中さんはいつも冷静で安心します」と言われた時は、自分の成長を実感しました。

その落ち着きと安心感が、まさに信頼の源ですね。

田中 ありがとうございます。法務として相談しやすい存在であることは、チーム全体で常に意識しています。

これからの法務パーソンに求められる「成長志向」とは

インハウスとして活躍されているお二人にお聞きします。時代の変化やデジタル化が進む中で、これからの法務パーソンにはどのような資質が求められるとお考えですか。

大内 これからの法務パーソンには、法律知識に加えて「成長志向」が欠かせないと思います。法律だけでなく、ビジネスや社会情勢など幅広い分野に興味を持ち、自ら学び続ける姿勢が求められます。

そうでなければ、経営層との会話についていけず、適切なコミュニケーションが取れなくなってしまうこともあるでしょう。法律の専門家であると同時に、社会やビジネスの変化を理解し、その中で最適な判断を下せる柔軟さを持つことが重要です。

田中さんはいかがでしょうか。

田中 AIなどのテクノロジーの発展により、従来弁護士が行っていた一部の業務は代替可能になりつつあります。リサーチや契約書レビューなどはすでに自動化が進んでおり、今後さらに精度が高まるでしょう。

そのような中で法務パーソンに求められるのは、まずそれらの情報の正確性を見極める「基礎的な法的判断力」です。これは、法律事務所での実務経験などを通じて培われる力であり、AIを活用する時代だからこそ、その基礎力が一層重要になると感じています。

また、技術が進化しても代替できないのは「事業理解」と「産業への専門性」です。今後は、ビジネスの現場を深く理解し、その中で法務としてどのように価値を提供できるかが問われます。つまり、法務パーソンである前にビジネスパーソンであること。その上で法務という専門領域を通じて事業を支える力が、今後ますます重要になると思います。

経験や現場で得られる知見を重ねることで初めて、技術を使いこなし、ビジネスの成長に貢献できる法務へと成長できる。これからの時代は、そうした総合的な視点と行動力を持つ法務パーソンが求められていくと感じます。

現在の困難は、未来の飛躍の糧になる

これまでの経験を踏まえ、もし若手時代のご自身に声をかけられるとしたら、どんな言葉を伝えますか。

大内 若手の頃は本当に苦労の連続でした。業務に慣れず、どの方向に進めばいいのか分からない。会議でも発言できず、英語の電話会議では内容を理解することすら難しい時期もありました。でも、そうした試練を乗り越える過程で、確実に力がついていったと感じています。あの頃の苦しさがあったからこそ、今の自分があると。

当時は先が見えず不安でしたが、頑張って踏ん張った先に必ず新しい景色が広がっています。今まさに大変な思いをしている方には、「その努力は間違っていない」「今の頑張りが必ず未来につながる」と伝えたいです。

田中 若い時期は、キャリアプランを明確に描きたくなるものです。でも実際は、思い描いた通りに進むことの方が少ないと思います。特に女性の場合、出産や留学などのタイミングは想定通りにいかないことも多い。それでも、その時々に与えられた環境で全力を尽くすことが大切です。

「いつか海外で働きたい」「この分野を極めたい」など目標があるなら、環境に左右されず、自分の意思で計画を立てて進めば良い。努力は必ずどこかで活きてきます。

私自身、当時は「これが何につながるのだろう」と思うこともありましたが、今はその経験が危機対応や経営判断の場面で大いに役立っています。積み重ねた経験に無駄なものは一つもありません。

最後に、これからのキャリアを考えている弁護士や法務パーソンの方々へメッセージをお願いします。

田中 キャリアは必ずしも計画通りには進みません。でも、今の環境で全力を尽くすことが、次のステップに確実につながります。もし新しい挑戦をしたい気持ちがあるなら、臆せず一歩を踏み出してみてください。違う環境に飛び込むことで、見える世界が大きく広がるはずです。

大内 自分を信じて、今取り組んでいることが必ず将来の糧になると信じてほしいです。また、多くの人の話を聞くことも大切です。法務のキャリアには様々な方向性があります。今はその選択肢が大きく広がっている時代ですので、幅広い視野を持ち、自分に合った道を見つけてほしいと思います。

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動画:四大法律事務所から日本IBM法務部へ転職|JILAアワード受賞
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アンダーソン・毛利・友常法律事務所に63期として入所し、独占禁止法を中心にカルテル案件などを担当。国内企業への出向や英国法律事務所での研修、上海オフィスでの勤務を経て、製薬会社への出向を契機にインハウスローヤーとしての道へ。現在は日本IBM法務部で、契約交渉、紛争対応、人事関連案件など幅広い業務に携わる。
日本アイ・ビー・エム株式会社 弁護士
アンダーソン・毛利・友常法律事務所に65期として入所し、企業法務や訴訟対応を中心に担当。国内企業への出向や米国ロースクール留学、現地法律事務所での研修を経て、2019年に日本IBMへ入社。現在はシステム開発関連の契約交渉や紛争対応を担当し、ビジネス部門と連携しながら法務の付加価値向上に取り組んでいる。
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