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タニタ法務知財部が挑む健康とビジネスの新領域──変化を恐れず事業に伴走するプロ集団の戦略

法務部インサイド

タニタ法務知財部が挑む健康とビジネスの新領域──変化を恐れず事業に伴走するプロ集団の戦略

株式会社タニタ
法務・知的財産部 部長心得兼法務課長/部長心得兼知的財産課長
増喜 泰典/保田 正樹

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健康総合企業として広く知られる株式会社タニタ(以下、タニタ)。そのビジネスの最前線で、事業の成長を法律と知的財産の両面から支えているのが「法務・知的財産部」です。

今回は、法務を統括する増喜様と、知的財産を統括する保田様のお二人にインタビューを実施。ユニークな組織体制から、少数精鋭チームならではのリスクマネジメント戦略、そしてインハウスローヤーとしてのキャリア展望まで、詳しくお話を伺いました。

※本記事の内容、取材対象者の所属・役職等は取材当時のものです

豊富なインハウスローヤー経験と異業種経験を持つリーダーたち

株式会社タニタ 法務・知的財産部 部長心得兼法務課長 増喜 泰典様の写真

株式会社タニタ 法務・知的財産部 部長心得兼法務課長 増喜 泰典様

まずはお二方の自己紹介をお願いします。

増喜  法務・知的財産部で法務課を統括している増喜と申します。

私は修習期は65期で弁護士登録をしており、キャリアのほとんどをインハウスローヤーとして歩んできました。自動車メーカーやIT企業など様々な業界を経験し、タニタが5社目になります。タニタに入社したのは2023年の4月ですので、現在は入社して2年半ほどになります。

保田  保田と申します。法務・知的財産部で知的財産課を統括しております。

私の経歴は少し変わっておりまして、大学卒業後は素材メーカーで営業職に就き、その後IT関連の会社で技術職を担当していました。そうして働きながら夜間の大学に通い、弁理士を目指しました。

その後、特許事務所の弁理士として知的財産のキャリアをスタートさせ、2016年12月にタニタに入社しました。現在は特許事務所で担当していた権利化業務だけでなく、他社商品の調査や契約関係などにも業務範囲を広げ、楽しく仕事をしております。

保田様は営業職から技術職、そして弁理士へとキャリアチェンジされたのですね。弁理士を目指そうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

保田  メーカーで営業をしていた際、物を売るためには相手方が扱っている技術を深く理解しなければならないという状況に直面しました。そこで「元々文系だったが工学系の勉強をすることは面白そうだ」と感じ、仕事を変えつつ夜間の大学へ通うことにしたのです。

勉強を進める中で、ニュースなどで「特許」に関する話題を目にする機会が増えました。特許を扱う仕事とはどのようなものだろうと興味を持ち、弁理士という職業を知って目指すことにしました。

社会人経験を経て資格を取得され、特許事務所を経てタニタ様へ入社されたのですね。

保田  はい、知的財産関連のキャリアのスタートとして特許事務所に入り、その後タニタへ入社しました。

法務と知財が一体となった、少数精鋭のプロフェッショナルチーム

貴社の法務・知的財産部の組織概要について教えていただけますか。

増喜  現在、タニタの法務・知的財産部は合計で6名の体制となっています。私たちの上に法務と知的財産を統括する部長がおり、その下で私と保田がそれぞれの課を統括する形です。

決して大きな組織ではありません。私の入社以前は法務専任のメンバーが不在であるなど組織として業務をする仕組みが十分に整っていない部分もありましたが、少しずつ組織を作り上げてきました。

現在も組織として変化し続けている最中であり、これからはさらなる組織強化を図っていくタイミングにあります。

メンバーの年齢層はどのくらいでしょうか。

増喜  下は30代前半から上は60代まで、幅広い年代のメンバーが在籍しています。

「広範囲な業務」が育むユニークな組織文化

他社や事務所をご経験されてきたお二方から見て、貴社の法務・知的財産部のユニークな点や特色はどのような部分にあるとお考えでしょうか。

保田  一人ひとりの業務範囲が非常に広いという点が大きな特色です。

規模の大きな企業で分業体制が確立されている場合、例えば「ある事業部の相談はこの担当者が行う」と決まっていることが多いと思います。しかし、私たちはそうした厳密な分業体制を敷いていません。そのため、様々な事業部門からの相談を一手に引き受けることになります。

これにより、例えばある事業部から受けた相談内容と同様の課題を、別の事業部も抱えているといった状況に気づくことができます。その際、事業部同士を引き合わせ、解決に導くといった動きができるのも強みです。

また、タニタ全体として他社との協業が多いという特徴もあります。アプリケーション開発を行う制作委託会社や、大学など共同研究先とのやり取りにおいて、あらかじめどのような権利を取得すべきか、契約をどう構成すべきかを、企画段階から考えていくことが求められます。こうした点も特徴の一つと言えるでしょう。

増喜様はいかがでしょうか。これまでのご経験と比較して、ユニークだと感じる点はありますか。

増喜  やはり「法務・知的財産部」として法務と知財が一体となっている点が非常にユニークだと思います。

大きな会社ですと、法務機能と知的財産機能が明確に分かれていたり、場合によっては知的財産部が開発拠点の近くにあったりするなど、物理的な場所も離れていることがあります。しかし、タニタでは本当に一緒になって業務を行っています。

私自身、これまでのキャリアの中で、今が最も知的財産分野に深く携わることができています。

早い段階でビジネスサイドに法務と知財が関わることで事業が加速する

具体的な業務内容についてもお伺いします。増喜様は法務を統括されていますが、日々どのような業務を行っていらっしゃいますか。

増喜  インハウスローヤーとしての基本的な業務は、他社と大きく変わることはありません。契約書の審査・作成、ガバナンス対応、社内研修、問題発生時の対応などが中心です。また、M&Aの対応を行うこともあります。

タニタは非上場企業であるため、上場会社特有の規則やレギュレーション対応といった商事法務の分野の業務は比較的少なく、その分、事業に直結する業務に注力できていると感じます。

保田様はいかがでしょうか。

保田  私は知的財産課の統括として、他部署との調整や課員の育成を行っています。その一方で、知的財産課は私を含めて4名のメンバーですので、私自身もプレイヤーとして業務を行っています。

具体的には、権利化業務、商品リリース前の他社権利調査、共同研究の契約対応などです。事業部からの相談は頻繁にあり、日々その対応にあたっています。

事業部の方々にとって、「何かあれば法務・知財に相談しよう」という意識が当たり前になっているのでしょうか。

保田  ありがたいことに、そうした文化が根付いています。

「まだ詳細は決まっていないけれど、気になることがあるから法務・知財に聞いてみよう」と、信頼して相談してもらえる関係性が築けています。

それは入社された2016年当時からあった風土ですか。

保田  私が入社する前からある程度はありましたが、徐々に醸成されて、行われるようになった取り組みもあります。

知財や契約の確認は商品やサービスのリリース間近といった最終段階で行うのではなく、初期段階から関与させてほしいと言い続けたことで、だんだんと定着していきました。

早期に相談を受けることは、ビジネスにとってもプラスの要素が大きいのでしょうか。

保田  非常に大きいです。

例えば、商品リリースの直前になって「新機能を搭載するが、他社の権利は大丈夫か」と相談を受けたとします。もしそこで問題が発覚すれば、設計変更を要請せざるを得ず、商品のリリース時期が遅れてしまいます。

しかし、初期段階で相談してもらえれば、リリース時期への影響を最小限に抑えることができます。

「設計変更が必要ならどうすればよいか」という対策も、事業部門と知財部門が一緒になって考えることができます。このプロセスが非常に重要です。

全体最適を見据えたリスクマネジメント

事業会社におけるリスクマネジメントは法務の重要な役割ですが、どのような課題があり、どう取り組まれていますか。

増喜  規模の小さい会社ですし法務課は現在1名体制のため、できることは限られます。その中で、まずはリスクを負いすぎない体制や仕組みづくり、そして地道な社内研修を行っています。

普段の業務で最も意識しているのは、保田も申し上げた通り「早い段階で相談をもらうこと」です。契約についても「こういう契約を結びたい」という相談をすぐにいただきます。
その際、対象範囲は本社だけでなく、子会社や海外拠点からの相談も含めて広範囲に及びます。

私が常に意識しているのは、契約書という紙の上の情報だけでなく、そのビジネスの取り組み全体がどうなっているのかを俯瞰することです。物流、商流、金流、情報の流れがどうなっているのかを、事業部と一緒に理解していくよう努めています。

契約書の文言チェックにとどまらないということですね。

増喜  そうです。事業部と対話しながらビジネスの流れを解きほぐしていくと、お互いに思いもよらなかった点に気づくことがあります。

「実はここのプロセスには、こういった法律が関わるのではないか」「この取引先に対しては、さらにこういうケアが必要ではないか」といった視点が出てくるのです。

少人数の体制だからこそ、まずは地道にリスクを拾っていくことが何より大切だと考えており、そこは毎日のように徹底しています。

社内でのコミュニケーションはかなり活発なようですね。

増喜  はい。出社していれば直接話すこともありますし、Slackなどのツールでのやり取りも頻繁です。グループ全体で1,200名ほどの規模ですが、コミュニケーションは非常にしっかりと取れている会社だと感じています。

外部リソースとテクノロジーの戦略的活用で、本質的な業務に集中する

増喜様はお一人で法務課を統括されていますが、外部事務所の活用やデジタルツールの導入など、効率化のためにどのような取り組みをされていますか。

増喜  現在の体制では、私一人ですべての業務を完結させることは物理的に不可能ですし、あらゆる分野をカバーできる専門性があるわけではありません。

そのため、案件によっては「この分野なら、あの事務所の先生にお願いしよう」と、積極的にアウトソーシングを行っています。

内部で対応すべきか、外部にお願いすべきかは、プロジェクトのスピード感や重要度を勘案して常に判断しています。

また、最近では生成AIをはじめとするテクノロジーの進化も目覚ましいです。契約書のレビュー支援ツールやAIなどを活用することで、法務の本質的ではない作業時間を削減し、効率化を図ることができます。そうした新しい仕組みは積極的に取り入れていきたいと考えています。

外部の弁護士に依頼する際、特定の領域ごとに依頼先を決めているのでしょうか。

増喜  基本的には領域ごとに強みを持つ先生にお願いしていますが、それだけでなく「これまでの文脈を理解しているか」も重視しています。

「この案件の流れであれば、この先生が一番背景を理解してくれている」というケースでは、スムーズに連携できる先生に依頼することが多いです。外部に依頼する際、案件の背景事情から説明しなければならないと、どうしても時間がかかってしまいますから。

もちろん、その先生の専門外であれば、同じ事務所の別の先生を紹介してもらうなど、状況に応じて柔軟に判断しています。

ブランド価値を守り、顧客ベネフィットを最大化する知財戦略

株式会社タニタ 法務・知的財産部 部長心得兼知的財産課長 保田 正樹様の写真

株式会社タニタ 法務・知的財産部 部長心得兼知的財産課長 保田 正樹様

知的財産の保護や権利化において、特に重視している戦略はありますか。

保田  タニタは企業規模としては決して大きくありませんが、その規模に対して社会的な認知度は非常に高いと自負しています。

そのため、ブランドイメージを損なわないことは経営上極めて重要であり、商標の取得や不適切な使用の防止には特に力を入れています。

技術的な観点で言えば、特許を取得する際に「技術の効果」だけを守るのではなく、「その技術を使うことでお客様が得られるベネフィットは何か?」を徹底的にヒアリングするようにしています。

技術はもちろんですが、顧客にとっての価値をしっかりと保護していく。ここに重点を置いて日々取り組んでいます。

相談のハードルを下げる、「丸ごと相談」可能な体制づくり

法務と知的財産が一つの部として存在していますが、お二人の課はどのように連携しているのでしょうか。

保田  日々さまざまな部署から相談が寄せられますが、知財だけで完結させるのではなく、両方の課で対応することを心がけています。

例えば、メインの対応は知財が行い、一部を法務にサポートしてもらうケースもあれば、「技術的観点は知財、個人情報保護の観点は法務」といった形で役割分担をして、協力して案件にあたることもあります。

重要なのは、事業部門側が「この課題は知財、これは法務」と事前に切り分けたり、別々にミーティングを設定したりする必要がない点です。気軽に「とりあえずここに相談すればいい」という状態で、丸ごと相談を受け止められる体制を作っています。

その上で、すぐに相談が必要なものは即座に連携しますし、定例の週次ミーティングでも情報共有を行っています。

相談する側にとって、法務と知財の切り分けは難しいものです。「丸ごと相談していい」というのは非常に安心感がありますね。

保田  おっしゃる通りです。相談に来てもらう際は、「これを相談しよう」と論点を整理して来てもらうよりも、「こういう案件があるんですが、何か懸念点はありますか?」くらいの、ふわっとした状態で情報を投げてもらうほうがありがたいですね。

そうすることで、我々の方で「ここは重要視すべきポイント」「ここはリスクが低いので深く検討しなくて大丈夫」といった、メリハリをつけた判断や対応が可能になります。

増喜  その観点で言うと、例えば秘密保持契約(NDA)などは、契約書なので「法務への相談」として来ることが多いです。

しかし、中身をよく確認したり、ビジネスの背景を聞いたりしていくと、「これは技術情報を開示するのではないか?」「知財課には相談したか?」という点が浮かび上がります。

まだ相談していないとなれば、私からすぐに保田へ共有しますし、メールのCCに保田を入れてシームレスに連携できるようにしています。

海外展開もされていると思いますが、英語を使用する機会や国際的な案件はどの程度あるのでしょうか。

増喜  タニタの本社は日本ですが、製造拠点は日本と中国にあり、商品は全世界で販売しています。販売拠点はヨーロッパ、アメリカ、中国、インドなど多岐にわたります。

そのため、各拠点が結ぶ契約を確認することもありますし、現地の拠点と直接英語で相談を行うこともあります。

業務全体の中で英語を使う割合が4〜5割に達することはありませんが、感覚として2割程度は英語を用いた業務が発生しています。日常会話レベルというよりは、英文契約のレビューや実務的なコミュニケーションが中心です。

知的財産分野についてはいかがでしょうか。

保田  現地の特許事務所とのやり取りや、各国の特許庁からの拒絶理由通知への対応などが発生するため、日常的に英文に触れる機会はあります。

また、海外企業との交渉においては、現地の法律事務所のサポートを得ながら進めることもあり、英語でのコミュニケーションや交渉が発生しています。

「モノづくり×サービス」への進化──事業変革を支える法務・知財の役割

これまでの取り組みを通じて、事業に貢献できたと感じる瞬間やエピソードを教えてください。

保田  商品開発のプロセスにおいて、搭載予定の機能や構成を早い段階で共有してもらえるようになったことで、早期に他社権利の調査ができるようになりました。

もし、そのまま進めば他社権利に抵触する恐れがある場合でも、早い段階であれば設計変更が可能です。

これにより、手戻りを防ぎ、商品を予定通り市場に投入できる。ビジネスチャンスを逃さないという点で、事業に大きく貢献できていると実感しています。

増喜様はいかがでしょうか。

増喜  タニタは基本的に体組成計などの計測機器を作る「モノづくり」の会社です。しかし近年は、モノを作るだけでなく、測定したデータをアプリで管理するなど、サービスをセットで提供するビジネスモデルへと進化しています。

例えば、アルコール検知器であれば、測定したアルコール濃度をアプリに記録・管理する機能が求められます。これまでハードウェア主体だった会社がソフトウェア開発にも取り組むようになると、そこには全く異なるリスクや、新しい顧客層が存在します。

私はこれまでにIT企業など複数社を経験しており、ソフトウェア開発やサービス提供における全体像やリスクの勘所がある程度わかります。

「ここはこうすべきではないか」「この視点が抜けているのではないか」といった点に気づき、事前にリスクをケアした仕組みを構築できたことは、法務として大きな貢献だったと思います。

IT業界でのご経験が、メーカーであるタニタ様の変革期に活かされたのですね。

増喜  はい。ソフトウェアを作るとはどういうことか、サービスを提供するには何が必要か。その全体像を、一から説明されなくてもイメージできるというのは、私のキャリアが今のタニタで活きている部分だと感じています。

妥協なきプロ意識を持ち風通しの良いチーム

チームのカルチャーや雰囲気、メンバーとの関係性について教えてください。

増喜  法務・知的財産部は合計6名で構成されており、そのうち弁護士が1名、弁理士が2名在籍しています。組織規模の割に有資格者が多く、全体として非常にプロフェッショナルな意識が高いチームです。

仕事においては「妥協せず、細かいところまできっちり見る」という姿勢が徹底されており、それが部のカラーになっています。一方で、知的財産課と法務課が協働していることもあり、部内のコミュニケーションは非常に活発です。

私はこれまでのキャリアで5社を経験していますが、その中でも最もコミュニケーションが取りやすく、人間関係のストレスが少ない組織だと個人的には感じています。

コミュニケーションの取りやすさは、具体的にどのような点から生まれているのでしょうか。

増喜  メンバーの人柄が大きいと思います。一緒に仕事がしやすいメンバーが集まっているため、自然とコミュニケーションも円滑になります。これは法務・知的財産部に限らず、タニタという会社全体のカルチャーと言えるかもしれません。

保田  増喜が申し上げた通り、部内の風通しの良さは大きな特徴です。加えて、この部署のメンバーの大多数が中途入社であることも影響していると思います。

多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっているため、「業務の進め方はこうでなければならない」という固定観念がありません。

「以前の会社ではこうだったけれど、この案件ならこちらのやり方がいいのでは?」といった提案が自然に出てきますし、それを否定せずに受け入れる土壌があります。それぞれの経験を尊重しながら、ベストな方法を選択できる柔軟性が風通しの良さにつながっています。

「健康をはかる」を自ら実践するユニークな社内制度

増喜様・保田様の写真

「健康総合企業」として、タニタは社員の健康管理の習慣作りもサポートしている。

タニタ様といえば「健康」がキーワードですが、社員の健康に資する福利厚生や制度はありますか。

保田  実は、社員証そのものが「活動量計」になっています。一般的なカード型の社員証よりも少し厚みがあるのですが、これで歩数や活動量などが測定されます。活動量計で測定したデータは管理サイトにアップロードすることが推奨されています。

他にも社内には主力製品である体組成計が複数台設置されており、月に2回ははかるようにアナウンスされています。会社として「健康をはかる」習慣作りをサポートしていますね。

また、社員の家族へのサポートも手厚いです。タニタには赤ちゃん用の体重計や体温計、ミルクの温度がはかれる料理用温度計といった商品ラインアップがあります。社員に子どもが生まれた際には、そうした商品を無料で貸し出す仕組みも整っています。

増喜 月に最低1回は活動量や体組成のデータをアップロードしないと、社員証をかざしても会社のドアが開かなくなるという仕組みまであります(笑)。

もちろん、会社がデータを監視して「痩せなさい」と指導するわけではありません。あくまで「はかることを習慣化することが健康への第一歩である」という考えに基づいた取り組みです。

部内にもさまざまな体形のメンバーがいますが、まずは自分の状態を知り、健康への意識を持つ。そうしたサポートを会社全体として行っています。

出社とリモートはバランス 対話を重視する柔軟な働き方

働き方についてもお聞かせください。リモートワークの活用状況や就業時間はいかがでしょうか。

増喜  定時は8時45分から17時30分までです。全体的に始業・終業時間が早めなのが特徴で、私のように小さな子どもがいる身としては、夕方の時間を家族と過ごしやすく助かっています。朝型の勤務スタイルは個人的には効率も良いと感じています。

リモートワークについては、コロナ禍を経て、全社的には出社回帰の傾向にあります。製造業という性質上、実物を見ながら相談したり、直接顔を合わせて話したりするメリットが大きいためです。

とはいえ、部署ごとの判断で柔軟な運用が可能です。法務・知的財産部でも、「この日は出社が必要」「明日は自宅で集中作業」といった調整を週単位で行っています。「なるべく誰かはオフィスにいるようにしよう」と部内で調整しつつ、リモートワークも活用しています。

対面でのコミュニケーションも大切にされているのですね。

増喜  そうですね。オンラインで済む打ち合わせもありますが、表情を見ながらニュアンスを確認したい場面などでは、「やはり今日は出社して直接話しましょう」となることもあります。

また、社長との距離が非常に近いのも特徴です。社長が日常的に社内を歩き回って社員に話しかけたり、直接やり取りをしたりすることもあります。

若手のうちから経営トップと接点を持てるのは、この規模感ならではの魅力だと思います。

「360度のアンテナ」と「なぜ?」を問う力が求められる

これからの法務・知財人材には、どのような資質が求められるとお考えでしょうか。

増喜  よく「ジェネラリストかスペシャリストか」という議論がありますが、法務はどちらの適性でも活躍できる職種です。ただ、タニタのような規模感の企業では、何でも対応できるジェネラリスト的な動きがより求められる傾向にあります。

しかし、ここで言うジェネラリストとは、単に法務業務全般をこなせるという意味ではありません。法務はモノづくりの最初から最後まで関わり、事業全体を俯瞰できる立場にあります。

だからこそ、法律だけでなく、数字や社会動向など、あらゆる方向に「360度のアンテナ」を張り巡らせることが重要です。多角的な視点から物事を捉え、経営や事業にフィードバックできる人材が、これからは特に求められると考えています。

知財の観点ではいかがでしょうか。

保田  知的財産に関する「答え」は、私たち知財部門ではなく、相手(開発者や事業担当者)が持っていることが多いです。そのため、相手の中に潜在している本質的な答えを引き出す力が極めて重要になります。

例えば、「この機能を搭載しました。特許になりますか?」と相談された際、「なぜこの機能を搭載したのですか?」と問いかけます。

そこで「チームで決まったから」「上司に言われたから」といった表面的な回答で終わらせず、「なぜこういった仕様も考えられるのにこの仕様を選んだのか?」「なぜこっちの構造ではなくこの構造にしたのか?」と深掘りしていく必要があります。

相手の業務や思考に深く興味を持ち、対話を通じて本質を引き出せる人こそが、これからの知財人材として活躍できると思います。

グローバルへの挑戦と法務・知財の融合

最後に、今後の組織としての展望と、読者へのメッセージをお願いします。

保田  タニタは、OEM製品の生産から始まり、自社ブランドの計測機器メーカーへ、そして「タニタ食堂」や「タニタ健康プログラム」といったサービス事業へと、領域を変えながら拡大してきました。この「領域の拡張」は今後も続いていくと考えています。

私たち知的財産課としては、新規事業の立ち上げ初期から伴走し、知財情報を提供することで事業を加速させる体制をさらに強化したいと考えています。そのためにも人員を拡充し、生成AIなども活用しながら、より高度なサポートができる組織を目指します。

生成AIの活用が進む中で、AIが出した答えの真偽を判断するのは人間の役割です。タニタで幅広い業務を経験することは、AI時代においても自信を持って判断を下せる「現場の知見」を養うことにつながるはずです。

増喜  法務課は現在1名体制ですので、まずは人員の増強が急務です。その上で、グローバル展開を支える英語力のある人材や、非上場企業ながらも「社会の公器」としての責務を果たすためのCSR視点を持った人材を求めています。

タニタの法務・知財キャリアの魅力は、「縦軸」と「横軸」の経験の広がりにあります。

「横軸」は、モノづくりからサービス、そしてグローバル展開まで多岐にわたる業務範囲。「縦軸」は、日常業務から経営直結の意思決定まで、深さのある経験ができる点です。さらに、法務と知財の垣根が低いため、両方の領域をクロスオーバーして経験できるのも大きなメリットです。

読者の方へ一言お願いします。

増喜  法務のキャリアにおいて、知識を貪欲にインプットし、それを実務でアウトプットしてブラッシュアップするサイクルを回し続けることは不可欠です。

もし現在の環境で業務の幅を広げることが難しいと感じているなら、「部署異動」くらいのライトな感覚で転職を検討してみるのも良い選択だと思います。

タニタには、法務・知財の枠を超えて挑戦できるフィールドがあります。業務の幅を広げたい方、知財にも興味がある方と、ぜひ一緒に働けることを楽しみにしています。

保田  ひとつの領域を深めることも大切ですが、これからは生成AIの活用を含め、領域を広げていく柔軟性も必要になります。幅広い業務経験は、自身の判断を支える確かな自信になります。

タニタには、そうした多様な経験を積める環境が整っています。新しい領域への挑戦に興味がある方をお待ちしています。

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動画:タニタを支える法務・知的財産部の仕事
株式会社タニタ 法務・知的財産部 部長心得兼法務課長
第65期司法修習修了の弁護士。キャリアの約9割以上をインハウスローヤーとして歩み、自動車メーカーやIT企業など計5社で多様な業界経験を積む。2023年4月に株式会社タニタへ入社し、現在は法務課の統括として、豊富な実務経験を活かし同社の法務機能を牽引している。
株式会社タニタ 部長心得兼知的財産課長
素材メーカーの営業職、IT企業の技術職を経て弁理士資格を取得した異色の経歴を持つ。特許事務所での勤務を経て、2016年12月に株式会社タニタに入社。現在は知的財産課の統括として、知財管理のみならず他社調査や契約業務など幅広い領域に携わり、同社の知財戦略を支えている。
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