事務所を知る
「完璧な仕事」を掲げる牛島総合法律事務所。パートナーが語るキャリアの築き方
牛島総合法律事務所
パートナー弁護士/ニューヨーク州弁護士
辻 晃平
生成AIの急速な発展により、リサーチや規制対応といった業務のあり方が大きく変わりつつあるいま、若手弁護士にとって「どの分野で専門性を築くか」「どの環境でキャリアをスタートするか」は、これまで以上に悩ましいテーマになっています。
今回お話を伺ったのは、牛島総合法律事務所のパートナー弁護士で、ニューヨーク州弁護士でもある辻晃平先生です。ファーストキャリアとして同事務所に入所して14年。紛争案件とデータプライバシー分野を中心に経験を積み、2023年にパートナーに就任しました。現在は事務所の採用担当も務めています。
本記事では、入所直後に主任として携わった大型訴訟のエピソードから、専門性が形づくられていった経緯、パートナーになって変わった視点、若手の育成方針、そしてAI時代のファーストキャリアの選び方まで、幅広く語っていただきました。
※本記事は取材当時の役職・組織体制に基づいています。
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「説明会でビビッときた」事務所選びの決め手
まずは簡単に自己紹介をお願いします。
辻 牛島総合法律事務所の辻です。弁護士としては14年目、パートナーとしては4年目になります。事務所では採用の担当もしています。
修習期は何期になりますか。
辻 65期です。いわゆる「新65期」ですね。
パートナーに就任されたのはいつですか。
辻 2023年1月です。ちょうど4年目に入ったところです。

牛島総合法律事務所 パートナー弁護士 辻 晃平 様
ファーストキャリアとして牛島総合法律事務所を選んだ理由を教えてください。
辻 実は、最初に参加した事務所説明会で「ビビッと」きたんです。率直に、この事務所の雰囲気は自分に合っていると感じたことが大きかったですね。
具体的に何が刺さったのかを言語化すると、当事務所は「完璧な仕事をする」ことをモットーに掲げています。説明会のときにも言われましたし、今も言い続けているのですが、「何事も徹底的に調べ、徹底的にやる」という点をとても打ち出しているんです。
「完璧な仕事をする」とまで言い切る事務所は、他にはなかなかありません。そこに惹かれました。
たしかに、そこまで言い切る事務所は珍しいですね。そのような点に惹かれたんですね。
辻 そうですね。もう一つは面接です。当事務所の面接は何回かあるのですが、毎回さまざまな先生が面接に来られました。会う人会う人、「嫌だな」と思う人がいなかったんです。これは意外と大事だと思っています。
仕事の進め方にもよりますが、事務所では案件ごとに本当にいろいろなパートナーと一緒に仕事をしていくことになりますから。
だからこそ、所内の弁護士との相性が重要なのですね。
辻 はい。今はインターン生を迎え入れる立場になりましたが、学生さんにはよく「うちの事務所の弁護士で、ちょっと嫌だなと思う人がいたらやめたほうがいいよ」と伝えています。それくらい大事なことだと思っています。
「真面目な事務所」訴訟に強い牛島総合の特色
改めて、牛島総合法律事務所はどのような事務所なのでしょうか。
辻 就活生の方からもよく聞かれるのですが、一言で言えば「真面目な事務所」だと思います。アソシエイトの先生たちも就活生にそう話しているので、事務所全体としてそういう認識があるのだと思います。
「完璧な仕事をする」というモットーのもと、みんな仕事に手を抜かず、ディテールまで詰めていく。これは真面目な性格がないと、なかなか難しいことです。
分野に引きつけて言えば、やはり「牛島といえば訴訟」だと、私たち自身も思っていますし、業界内でもそう見ていただいているのではないかと勝手に思っています。訴訟に強いという点を気に入ってくださる就活生も多い印象です。
訴訟・紛争は、どの弁護士も必ず経験するのですか。
辻 経験したことがない人は、まずいないと思います。
当事務所は不動産ファイナンスもプラクティスの柱として強いので、次第にトランザクション寄りの業務に集中していく人もいます。ただ、キャリアの中で一度も紛争を経験しないということは、まずないですね。
そこが大きな特色になっているのですね。
辻 そうですね。特に今年は、AIの発達によってゲームチェンジングと言えるほど状況が変わってきていると感じています。AIがどんどん発達すると、レギュレーションのような業務は減っていくと思うんです。
一方で紛争については、事務所でもよく「裁判官がAIにならない限りは、人の仕事だろう」と話しています。その意味で、紛争に強いことはキャリアにとってもいいことだと考えています。
「ミスマッチを減らす」若手に選ばれる採用方針
辻先生が入所された当時、所属弁護士は何名くらいでしたか。
辻 50人前後だったと思います。現時点では74人です。(※2026年8月時点)
1.5倍ほどに増えているのですね。最近は77期・78期の若手の方も多く入所されている印象です。
辻 そうですね。各期7〜8人ずつくらいです。
若手から選ばれている理由は、どこにあるとお考えですか。
辻 事務所の採用方針と絡めてお話しすると…
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「一番若い人が主任」入所直後の大型訴訟
辻先生は、入所後はどのようなプラクティスを中心にキャリアを築いてこられたのでしょうか。
辻 最初は紛争です。入所してすぐ、訴訟の前段階である調停から関わった案件がありました。とても大きな建築紛争で、延べ面積9万平米、大型商業施設クラスの非常に大きな建物をめぐる原状回復訴訟です。
入所した年の3月に調停が不調に終わり、5月のゴールデンウィーク明けに訴状が届くという流れでした。30億円ほどの規模の大きな案件で、そこに主任としてがっつり入りました。
1年目から主任なのですか。
辻 インターンでも説明しているのですが、当事務所では一番若い人が主任になる決まりになっています。一番若い弁護士が、訴訟記録や細かい事実、証拠も含めて一切を把握し、案件をハンドルしていくことが求められるんです。
私の場合は、パートナーと3期上の先輩のアソシエイト、そして私の3人で、その大きな訴訟を担当しました。その案件がある程度軌道に乗ってからは、ほかの紛争案件や日々の法律相談にも対応していましたが、メインはその案件でした。
いきなり主任を任されて、戸惑うことはありませんでしたか。
辻 やはり、最初は無理なんですよ。いきなり回せるわけがないので。3期上くらいのアソシエイトが、いろいろと引き継ぎながら「こうやって案件を回していくんだよ」という感じで教えてくれました。
メンターのようなサポートがあるのですね。
辻 育成しているというほどのものではないのですが、自然と育っていくという環境ですね。
「600件全部見ました」信頼を得た最初の3日間
チームの一員として関わるのと、「あなたの仕事だ」と任されるのとでは、意識も変わりそうですね。
辻 その観点でいうと、印象に残っている出来事があります。私は2013年1月に入所したのですが、2月頃、その案件の調停が佳境に入っていました。
依頼者の方から「どうやら訴訟になりそうだ。ついては、訴訟になった場合に勝てる見込みがあるかどうか、法律意見書を出してほしい」とご依頼があったんです。
入所して1ヶ月半ほどの時期ですね。
辻 そうです。その法律意見書の作成に入ったんです。「このメイン論点について、3日以内に調べてくれ」と言われました。そのリサーチ結果が、法律意見書の結論にほぼ直結するような状況です。
それを入所して1ヶ月ほどでいきなり任されて、「3日後、リサーチ結果を踏まえて内部で会議しましょう」と。
そう言われたときのお気持ちは覚えていますか。
辻 めちゃくちゃ胃が痛かったです(笑)。
その3日間は一生懸命リサーチしました。3日後に3人で話したとき、パートナーから「本当に裁判例は全部調べた?」と聞かれて、「調べました」と言えたんです。逃げずにすべて調べたので、そこは迷いなく言い切れた。それが信頼獲得の第一歩のようなものだったと思います。
論点がかなりざっくりしていたので、裁判例を検索すると600件ほど出てきてしまったんです。キーワードが緩すぎるので。でも仕方がないので600件全部に目を通して、「600件全部見たので、これ以上はないと思います」とお伝えしました。

「本当に裁判例は全部調べた?」――入所1ヶ月、600件の裁判例に目を通したうえで迷わず答えられたことが、信頼の第一歩になった。
「徹底的にやる」という姿勢を、入所当初から大切にされていたのですね。
辻 その後、3月頃には「調停の最後の主張書面を書いてみる?」と言われました。入所して2ヶ月ほどで、書面を書かせてもらえるようになったんです。そこから訴訟も引き続き担当して、結局、終わるまでに8年かかりました。
8年ですか。
辻 一審で5年、控訴審で3年、合計8年です。結果は勝訴でした。
素晴らしいですね。勝訴したときは、どのようなお気持ちでしたか。
辻 めちゃくちゃ嬉しかったです。それは今も同じで、判決で勝つと、嬉しさとホッとした気持ちの両方がありますね。あとは、依頼者の方にきちんと貢献できたという思いです。
パートナーへの道のり
パートナートラックについて、お話しいただける範囲で教えてください。
辻 大体ですが…
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「ご縁と積み重ね」データプライバシーの専門性
「The Best Lawyers in Japan 2027」の Privacy and Data Security Law部門に選出されています。この分野の専門性は、意識的に高めてこられたのですか。
辻 実は、特定の分野を狙って拡大していくということは、事務所としてもあまりないんです。弁護士のキャリアは、案件とのご縁もあって成長していくものだと思っています。
特に弁護士は、基本的に受け身の仕事だと思うんです。「こういう案件をやりたい」と言っても、クライアントがいなければ始まりませんから。
ニーズがあってこそ、ということですね。
辻 そうなんです。自分が「こういう案件をやりたい」と思うことと、依頼者とのご縁とが一致して、分野が広がっていくものだと思います。
私の場合は、当事務所の影島弁護士とのご縁が大きかったと思います。この業界にいれば誰もが知っている、データプライバシー分野の大家です。実は、私の弁護士人生と彼のパートナー人生は、スタートの時期がほぼ重なっているんです。
私が修習生だった頃、内定者も参加する事務所のイヤーエンドパーティーで、「来年、影島先生がパートナーになります」と発表がありました。「あの先生がパートナーになるんだ」と思いながら入所したんです。
その後、私が弁護士3〜4年目の頃に、日本の個人情報保護法が大きく改正されることになり、そのタイミングで影島がこの分野に打って出ました。その時に、「こういう仕事があるけど、やりますか」と声をかけてもらったり、セミナーのお手伝いをしたりするうちに、一緒に担当する案件が増えていった、というのが実情です。
意識的に増やしたというより、来た仕事にしっかり応えていった結果、専門性が積み上がっていったのですね。
辻 そうですね。しかも当時は、データプライバシー分野というもの自体が存在していなかったので、「この分野をやりたい」という発想自体がありませんでした。声をかけてもらって「やります」と応えた、その延長線上にあるという感じです。
自分の専門性をどこに置くか、どう色をつけていくかは、多くの若手弁護士の関心事だと思います。所内のアソシエイトからそうした相談を受けたら、どのようにアドバイスされますか。
辻 一つひとつの仕事の積み重ねだと思います。
たとえば、私がパートナーになって仕事が増えていったきっかけも…
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辻 AIが発展していく中で、どの分野が伸びて、逆にどの分野が落ちていくかは分かりません。ある程度専門性を持ちつつも、ジェネラリスト寄りに自分の分野を広げていかないと、対応しづらくなってくるのではないかと思っています。
一つに絞り込むのは、リスクになり得るということでしょうか。
辻 それしかやっていない、という状態だと大変だと思います。いろいろできる中で、名刺代わりに「これに強いです」と言えるものがあるといいですね。
「かけた時間を見える化」パートナーの視点
アソシエイトとして約10年を経てパートナーになり、変わったことはありますか。
辻 まず、事務所全体のことを考えるようになったのは大きいですね。事務所という場をどうより良くしていくか、という視点です。
仕事の仕方については、アソシエイト時代はプロダクトの質を高めることに集中していたと思います。パートナーになっても当然そこは続けていますが、加えて「どうパッケージにすれば、依頼者の方に報酬を払う価値があると思っていただけるか」を考えるようになりました。
裏側でどれだけリサーチしていても、それがアウトプットに表れていなければ、「なぜこんなに時間がかかっているんですか」という話になってしまいます。ですから、どうアウトプットするかをとても工夫しています。
たとえば、本当に徹底的にリサーチしたのであれば、そのリサーチメモをクライアントに送れる形に整えて、「こういうリサーチをしました」と添える。かけた時間を見える化することが大事だと思っています。アソシエイトの頃は、そんなことはまったく考えていませんでしたね。
見え方への意識が変わったのですね。
辻 依頼者の方がお金を払う、ということに対する意識がだいぶ変わったと思います。
案件獲得に向けた活動で、変化はありましたか。
辻 基本的にはあまり変わっていません。もともとニュースレターやセミナーはやっていました。当事務所はウェブサイトが充実していて、各弁護士がニュースレターやウェビナーを自由に発信できる環境になっています。
私に限らず、若手のパートナーがセミナーを開いて、そこからご依頼をいただけたという報告も結構あります。やはり、地道なことの積み重ねですね。
「コスパ・タイパは言わない」若手の働き方と育成
アソシエイトの育成で、意識されているポイントはありますか。
辻 パートナーも4年目で日々試行錯誤ですが、当事務所の基本としては…
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「コスパやタイパは絶対に言わない」――時間をかけて調べたこと自体を評価する文化は、辻様の入所当時から変わっていないという。
AIは活用すればパフォーマンスが上がる一方で、頼りすぎると出力を判断する力が養われないという懸念もあるかと思います。アソシエイトの業務では、どのように工夫されていますか。
辻 AIを使うこと自体は推奨しているので、使うのは構いません。ただ、それを鵜呑みにしないこと。アウトプットを見ると何となく分かるので、そこはきちんと細かく指摘していくようにしています。
「議論できるか」牛島総合に合う弁護士像
牛島総合法律事務所には、どのような弁護士が合うとお考えですか。
辻 冒頭の話に戻ってしまいますが、「真面目」であることです。ただ、採用担当は委員会のような形で何人かいるのですが、真面目なだけでは、これからの時代は少し物足りないと考えています。真面目に仕事をするだけなら、AIと変わらないですから。
クリエイティブな部分や、先ほど若手育成で意識していると話したことにも関連しますが、「議論できる」ことが大事だと思っています。
若いうちから大きな案件で主任を任されることを考えると、責任ある立場で仕事をしたい人にも向いていそうです。
辻 そうですね。真面目であることは前提として、案件を自分でドライブしていく人が合うと思います。
学生さん向けの説明会でもよく、「一番若手の人に主任になっていただくので、主任として案件を回してもらいたい」と話しています。これは表面的に言っているのではなく、本当にそうなんです。若い人に回してもらわないと、案件自体が回りませんから。
ですから「真面目」とは、言われたことをただやることではありません。真摯に案件に向き合い、この案件をベストな方向に持っていくにはどうしたらいいかを自分で考え、自主的に動いてくれる方です。とはいえ、1年目からそんなことができるとは私たちも思っていませんが。
そうしたスタンスや向き合い方が大事ということですね。
「業務の幅を広げたい」これからの目標
パートナー4年目を迎え、今後の目標や目指す姿を教えてください。
辻 先ほどもお話ししましたが…
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その考えに至るまでに、迷われることもありましたか。
辻 時代によってどう移り変わっていくのかも含めて、大なり小なり、全員が考えたことがあると思います。逆に考えていないとしたら、自分のキャリアに真摯に向き合っていないのではないかと思います。
そうした考えを踏まえたうえで、「この事務所にいることが自分の成長にとって一番いい」と思っているからここにいる。それが一番いい状態だと思います。
選択肢がある中で、自ら選んでいる状態が大切なのですね。今いる場所が成長につながると確信できる理由は何でしょうか。
辻 一つひとつの仕事で「いい仕事をした」という実感があることが大事だと思います。訴訟で勝ったといった成功体験もありますが、もし弁護士人生でずっと負け続けて「これでよかったのだろうか」と思っていたら、また違ってきてしまうと思います。
真摯に向き合い、いい仕事ができている、成長できているという実感があるということですね。
辻 そうですね。日々「いい書面を出せたな」「いい仕事をしたな」と思えることも大事ですが、一番大きいのは、「これは自分だけでできただろうか」と振り返ったときに、上のパートナーやみんなで議論したからこそできた、と思えることです。
紛争案件では特に多いのですが、「この主張自体、みんなで議論しないと出てこなかったね」「この法律構成は思いつかなかったね」ということがあるんです。自分一人で自己研鑽して良い仕事ができた、というのであれば、別にこの事務所にいる必要はないのかもしれません。
でも、自分の実感としていい仕事ができて、しかもそれは自分だけでなく、事務所のメンバーみんなで議論したからこそ出せた結果だと思える。そういうことが日々あるから、「この事務所はいいな」と思えるんです。それがなくなったら、この事務所にいる意味はありません。いい仕事ができるということが、当事務所の本質だと思います。

「みんなで議論したからこそ、こういう結果が出せた」――その実感が日々あることが、この事務所で働き続ける理由だと辻様は語る。
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