役員報酬|金額の決め方と相場を企業規模別に紹介
- 更新日:2025.08.22
取締役の給料は役員報酬と呼ばれ、その金額は企業や規模により異なります。
この記事では、取締役の役員報酬と一般従業員の給料の違いを解説します。
さらに、役員報酬の決め方や企業規模別の役員報酬も紹介しています。
INDEX
取締役の報酬と従業員の給料との違い
まず最初に、取締役の報酬と従業員の給料の違いについて解説します。
取締役が受け取る「役員報酬」
取締役は企業と委任契約を結び、役員報酬を受け取ります。
従業員は、企業と雇用契約を結び給料を受け取ります。
取締役が受け取る役員報酬と、一般の従業員が受け取る給料は法律においても、異なる区分に分類されるのです。
委任契約を結ぶと、企業に雇われずに仕事の依頼を受けます。これは、弁護士や税理士などの専門家と同じ働き方に該当します。
取締役は経営の専門家として、企業から仕事の依頼を受けるのです。
従業員が受け取る「給料」
従業員は企業と雇用契約を結んでいるため、企業から給料を受け取ります。
雇用契約とは従業員が提供した労働に対して、企業が報酬の支払いを約束することです。
正社員だけではなく、契約社員やアルバイト、パートも雇用契約で企業に雇われています。
役員の種類
ここからは、役員の種類として、取締役、執行役、監査役、会計参与を解説します。
取締役
取締役とは、企業の業務執行について意思決定を行う役職で、株主総会で選ばれます。
取締役に求められる役割は、次のとおりです。
- 企業の進む方向性を決める
- 株主総会の決定事項を従業員に指示をして実行に移す
- 方針通りに実行されているかどうかを監督する
- 企業で不祥事が行われないように監査する
取締役の中から、代表取締役が選ばれます。
執行役
執行役は、指名委員会等設置会社におかれる機関で、取締役が兼務することが多いです。
取締役会の決定に基づいて、企業の業務執行を担当します。
執行役と類似した役職に、執行役員があります。
執行役は法律で設置が決められていますが、執行役員の設置は企業の任意である点で、両者は異なるのです。
監査役
監査役は取締役や会計参与の活動をチェックする役職です。
実地棚卸をチェックしたり、書類が適切であるかどうかを確認したりします。
不正や違法行為がある場合は、取締役や株主総会で報告する役割を担います。
監査役は、企業のコーポレートガバナンスやコンプライアンスを健全に維持するために欠かせない存在です。
会計参与
会計参与は取締役とともに企業の財務諸表などを作成します。
作成した財務諸表などを株主総会で説明し、取締役に違法行為があれば是正する役割も担います。
専門資格が必要であるため、会計参与になれるのは、
- 税理士
- 税理士法人
- 公認会計士
- 監査法人
のいずれかに当てはまる人です。
役員報酬の決め方
役員報酬はどのように決まるのでしょうか。
ここでは、役員報酬を決定する機関や、考慮されるポイントなどについて解説します。
役員報酬は株主総会や取締役会で決める
役員報酬の決め方は会社法や法人税法で定められており、定款や株主総会、取締役会の決議によります。
定款とは会社の基本情報や規則などが記載された書類の1つです。
株主総会で過半数の賛成票を獲得できれば、役員報酬が決定します。
株主総会が実施されるのは、決算日から3ヶ月以内です。
1人社長や小規模企業、株主が1名などの場合は、書面だけで行う「みなし決議」が行われることもあります。
役員報酬を決める際に考慮されるポイント
役員報酬を決める際に考慮されるポイントは、
- 社会保険と税金のバランス
- 同業他社とのバランス
- 企業の経営状況
- 従業員の給与とのバランス
などです。
取締役のモチベーションを維持して、従業員の不満を生じないように報酬額は設定されます。
報酬額が高過ぎると、税務署から取締役の報酬の損金算入を否認されることもあります。
損金に算入できないと、企業の法人税の負担を軽減できません。
従業員の心情や法人税との兼ね合いも考え、取締役の報酬は相応の額で設定されます。
民間企業の役員報酬の相場
民間企業の役員報酬の相場について、企業規模別と資本金別に解説します。
企業規模別の役員報酬
従業員数500人以上の大企業
社長 | 専務 | 常務 | 専任取締役 | |
3,000人以上 | 7,372.6万円 | 4,501.5万円 | 3,396.2万円 | 2,446.8万円 |
1,000-3,000人未満 | 4,554.3万円 | 3,066.9万円 | 2,382.0万円 | 1,939.5万円 |
500人-1,000人未満 | 3,963.1万円 | 2,461.8万円 | 2,126.6万円 | 1,819.5万円 |
人事院が管轄する統計局発表が発表した「民間企業における役員報酬(給与)調査」によると、大企業における取締役の年間報酬は上の表の通りです。
企業規模が大きくなるほど、報酬が上昇することがわかります。
また、取締役の中でも、常務や専務、代表取締役(社長)などで報酬が異なることもわかります。
従業員300名以下の中小企業
「役員報酬・賞与・退職金」中小企業の支給相場【2021年版】によると、代表取締役(社長)の月額の役員報酬は次のとおりです。
従業員規模 | 平均の役員報酬(月額) |
101~300名 | 188.9万円 |
51~100名 | 130.4万円 |
21~50名 | 112.4万円 |
20名以下 | 80.1万円 |
参考:「役員報酬・賞与・退職金」中小企業の支給相場【2021年版】
上記は代表取締役(社長)のデータであるため、取締役の場合は表示額よりも少ない可能性があります。続いて業種別に見ると、次のとおりです。
従業員規模 | 平均の役員報酬(月額) |
製造業 | 131.9万円 |
卸・小売業 | 120万円 |
サービス業 | 114万円 |
建設業 | 85.9万円 |
参考:「役員報酬・賞与・退職金」中小企業の支給相場【2021年版】
調査結果を見ると、製造業が高い傾向にあります。
中小企業基本法では、製造業における中小企業の資本金や従業員数の定義が、他の業種よりも大きく設定されています。
製造業の定義は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」です。
それに対し、サービス業は「資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人」とされています。
以上を考えると、建設業は他の業種よりも役員報酬が低い傾向にありますが、その他の業種については大差がないといえるのではないでしょうか。
資本金別の役員報酬の相場
資本金別の役員報酬の相場は次のとおりです。
資本金 | 役員報酬(年収) |
10億円以上 | 1,426.5万円 |
1億円以上 | 1,313.5万円 |
5千万円以上 | 1,086.5万円 |
2千万円以上 | 856.5万円 |
2千万円未満 | 581.8万円 |
役員報酬は他企業の規模なども参考にして決められるため、資本金も役員報酬に影響すると考えられます。
取締役への就任で収入増やキャリアアップを狙える
上で述べたように、企業規模が大きくなるほど、役員報酬は高い傾向にあります。
一般的には企業規模に比例しますが、大企業であれば高く、中小企業が低いと一概に言えるわけでもなく、公開義務のない中小企業では、驚くような高額な役員報酬を受け取っていることもあります。前述したように取締役は、企業の重要な意思決定を行う立場にあり、責任の大きさとともに報酬も高いです。
そのため、従業員として雇用され勤務するよりも、取締役に就任したほうが収入は高くなる可能性が増します。
ここでは、取締役になることで、収入増やキャリアアップを狙う際の注意すべきポイントを解説します。
取締役に就任する際に注意すべきポイント
取締役に就任する最も多いのは、現職で結果を出し貢献した結果、取締役への就任を打診されるケースでしょう。
新卒入社した会社で出世を重ね、最終的に取締役に就任するのは、会社員の到達点と言えるかもしれません。
取締役に就任する場合特に、
- 誓約書や契約書の内容を確認すること
- 雇用とはそもそも異なることを理解すること
- 秘密保持義務を守ること
- 従業員を引き抜かないこと
- 顧客情報を利用して営業活動をしないこと
の4点に注意しましょう。
取締役の行為によっての企業が損害を受けた場合は、損害賠償を請求されることがあります。
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この記事の監修者
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