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専門性を身につけ、いかに捨てるか──キリンホールディングス法務トップが説く経営に寄り添う法務

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専門性を身につけ、いかに捨てるか──キリンホールディングス法務トップが説く経営に寄り添う法務

キリンホールディングス株式会社
執行役員・法務部長
村上 玄純

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企業の法務部門は、長らく「守りの部門」「ブレーキ役」として捉えられてきました。しかし、グローバル化やM&Aの活発化、そして生成AIの台頭といった大きな変化のなかで、法務に求められる役割は大きく変わりつつあります。

今回お話を伺ったのは、キリンホールディングス株式会社で執行役員・法務部長を務める村上玄純様です。弁護士としてキャリアをスタートし、日本ではまだ企業内弁護士が100人にも満たなかった時代に三菱商事へ転身。約20年の商社法務を経て、2022年にキリンホールディングスへ参画されました。

法律事務所からインハウスへ移った黎明期の選択、B2Cビジネスならではの法務組織のあり方、人材育成への考え方、そしてAI時代に法務パーソンが磨くべき力まで、幅広く語っていただきました。

インハウスがまだ100人もいなかった時代の選択

キリンホールディングス株式会社 執行役員・法務部長 村上 玄純 様

まずは簡単なキャリアを含めて自己紹介をお願いします。

村上 キリンホールディングスで法務部長を務めております村上です。

私は1996年に弁護士登録をしておりまして、6年半ほど法律事務所で弁護士として勤務した後、2002年10月にキャリア採用で総合商社である三菱商事に転職いたしました。

三菱商事では20年ほど勤務しましたが、2022年10月に、こちらもキャリア採用で現在のキリンホールディングスに転職し、2023年4月から法務部長を務めております。

ファーストキャリアは法律事務所で、6年半ほど勤められてから2002年にインハウスへ転身されています。今でこそ企業内弁護士は一般的ですが、当時はまだ珍しい選択だったのではないでしょうか。

村上 当時は多分、日本全国で100人もいなかったと思います。

今は3,500人から3,800人ぐらいになっているのではないかと思いますが、当時はまだそれくらいの規模でした。

100人未満というのは驚きです。なぜその選択をされたのでしょうか。

村上 元々弁護士になった時は、企業内弁護士はまったく考えていませんでした。

普通に勤務弁護士として働き始めて、どこかのタイミングで事務所のパートナーになるか、あるいは独立するか、というキャリアパスを勝手に自分で描いていたんです。

当時はちょうど司法制度改革が盛り上がっていた時期で、日本版ロースクールもでき、弁護士も増員していくという流れのなかで、若手弁護士として自分のキャリアをどうするのか、仲間とよく話をしていました。

医療過誤や消費者被害といった専門分野を見つけてそちらに集中したり、大きな事務所を合併して規模を追求したりという仲間がいるなかで、自分はどうしようかと迷っていた時に、修習時代の同窓会に参加したんですね。

そこで同期の弁護士が企業内弁護士に転職したという話を聞いて、「あ、それも面白そうだな」と思ったのが最初のきっかけです。

同窓会に参加していなかったら、選択が変わっていたかもしれませんね。

村上 そうかもしれないです。人間の縁というのは面白いものですね。

三菱商事の「3人目」からB2Cの面白さに出会うまで

転職された三菱商事は、今でこそ日本でもトップクラスに弁護士が在籍する法務組織だと思いますが、当時はどのくらいいらっしゃったのでしょうか。

村上 私が3人目でした。

私より2年ぐらい前に入社した方が、今の法務部長の方です。それから私と同じ年に、半年ほど前に入社した方がいて、私が3人目という感じでしたね。

まさに企業内弁護士の黎明期だったのですね。そこから20年勤められて、2022年にキリンホールディングスへ移られたきっかけは何だったのでしょうか。

村上 三菱商事では、天然ガスの資源ビジネスや自動車、産業金融といった事業の法務支援をやってきました。

ただ、海外駐在が終わったタイミングで、日本KFCホールディングスの法務部長として出向したんです。ケンタッキーフライドチキンを運営している会社で、当時は三菱商事が株式を35%ほど持っていたかと思います。

消費者の反応がダイレクトに返ってくるB2Cビジネスの「手触り感」が、キャリアの転機になった。

そこに出向した時に、B2Cビジネスの面白さにはまってしまいまして。

村上 何がそれほど面白かったのでしょうか。

「手触り感」というかですね、ダイレクトに消費者の方の反応が返ってくるところに身近に接することができる。それが非常に面白かったんです。

出向期間が終わって別の会社に移ってからも、楽しかった思い出として残っていました。その後キリンのお話を伺った時に、キリンといえばまさにB2Cビジネスですので、非常に面白そうだなと思い、転職を決めました。

ここからはキリンホールディングスの法務組織についても伺っていきます。まず、法務組織の概要や規模感を教えてください。

村上 キリンホールディングス自体には、30人ほどの法務部員がおります。

ただ、グループ内の事業会社のなかにも法務部を抱えている会社がいくつかあります。一つは協和キリンという上場子会社で、こちらがKKCグループとして世界中に大体50人ぐらいの法務部員を抱えています。

それ以外にも、オーストラリアのライオンというビール会社、昨年買収したブラックモアズ、アメリカのニューベルジャンというクラフトビールの会社、それから昨年買収が完了したファンケルにも法務部員がいます。このあたりを足すと60人ぐらいですね。

ですので、キリングループ全体で言うと、110人ぐらいの法務体制という感じです。

そのなかでキリンホールディングスの法務の特色や強みは、どこにあるとお考えですか。

本記事は、インタビューの一部を抜粋してお届けしています。全編を収めた完全版動画は、弊社メールマガジンにご登録いただいた方限定でご視聴いただけます。あわせて、非公開求人や新着求人情報もお送りしています。ご登録は下記から。
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事業がもはや国内だけで完結しない以上、ビジネスに寄り添う形へと組織を組み替えてきたのですね。チーム間の異動などはあるのでしょうか。

村上 はい。管理職になるまでの間に、先ほどの3つの機能を一通り経験してもらいたいと思っています。そうすると、B2C企業としての法務経験がバランスよくできるのではないかと。

大体3年から5年ぐらいの周期で、法務部員の特性や希望を踏まえながら、人を異動させていくということをやっています。

一定期間で幅広い知見が身につくわけですね。

村上 10年ぐらい経てば、もう本当に一人前の法務パーソンとしてやっていけるんじゃないかと思いますね。

「修羅場を経験してほしい」若手が育つ環境のつくり方

若手には「修羅場」も経験してほしいと語る。枠にはめず任せることが成長を促す。

人材育成についても伺います。先日、貴社の八嶋様と梶川様にも取材させていただきました。八嶋様は昨年の「JILAインハウスリーガルアワード」でインハウス総合賞を受賞されています。活躍する若手人材が出てくる秘訣や、重視されているポイントはありますか。

村上 やりたいことを、やりたいようにやってもらうというのが一番かなと思いますね。あまり枠にはめずに、いろんなことを経験してもらうということです。

あとは「修羅場を経験してほしい」と思っています。

さきほど話に出た八嶋なんかは、今年の初めにバーボンの「フォアローゼズ」という会社の売却を担当していたんですけど、「出張に行ってこい。クローズするまで帰ってくるな」という感じで送り出しました。彼も相当苦労したみたいですが、いろいろ思うところがあって戻ってきたんだと思います。

八嶋様も、成長した経験であると同時に挫折も感じたとおっしゃっていましたが、とても楽しそうにお話しされていました。若いうちからチャレンジできる環境があるようですが、制度化しているものはありますか。

この続き(八嶋様が挑んだ「修羅場」の詳細や、若手を伸ばす制度の中身)は、完全版動画でご覧いただけます。▶メールマガジンに登録する
▶(八嶋様・梶川様の記事はこちら)キリンホールディングス企業内弁護士が語る、M&A・ガバナンス経験と成長環境

AI時代に問われる「飲んでいいリスクか」の判断

ここからは「これからの法務」という広いテーマを伺います。生成AIの台頭など、法務組織に求められるものも変化していると思いますが、村上様ご自身が感じる変化点はどこでしょうか。

村上 やっぱりAIでしょうね。信じられない変化が、この10年、いや数年ですでに起こっているような気がします。

究極のところを言うと、経営者の経営判断にいかに寄り添えるか、その判断をいかに後押ししてあげられるか、そこにしか価値がないかなと。要は、一緒にリスクテイクしていくということです。

「これは大丈夫です」「こうすれば大丈夫です」と言えるかどうか。AIはおそらく責任は取ってくれません。最後、リーガルリスクに対して「飲んでいいリスクなのか、飲んじゃいけないリスクなのか」と聞かれた時に、ちゃんと答えられるかどうか。そこに究極的な価値があるのかなと思います。

最終的に判断するのはまだまだ人間なのだ、という点は共感します。

手が震えた1年目──「打っては投げ」で越えた荒波

ご自身のキャリアを振り返って、しんどかった経験と、それをどう乗り越えたかについて教えてください。

村上 一番大変だったのは、弁護士登録した1年目ですかね。

私はいわゆる「街弁」だったんですが、社会人経験なく弁護士を始めたので、世間の荒波に生身で放り込まれるような感じだったんです。

荒波に生身で放り込まれた1年目。厳しい経験が、その後のキャリアの土台になった。

スパルタな事務所だったので、登録して数日後に「一人で示談交渉に行ってこい」と言われたりしました。相手は普通の方なんですが、当時は本当に手が震えたり足が震えたりして、精神的には相当辛かったです。

それをどう乗り越えたのですか。

村上 ボスのお二人が本当にいい方だったので、事務所自体に不満はなかったんですね。

なので、あまり考えないようにして、日々の仕事を「ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」という感じでこなしていました。そうして5年ぐらい経つと、「このままでいいのかな」と振り返るタイミングが来る。そんな感じでしたね。

あの頃の経験に比べれば、企業に入ってからの修羅場も、命が取られるわけじゃないし、と思えるようになりました。

「専門性を身につけ、その法務をいかに捨てるか」

専門性を極めたうえで、いかにそれを脱ぎ捨て全人格で経営に向き合えるか。法務の未来像を語る。

現在、執行役員・法務部長というお立場です。経営に参画していきたいと考える法務パーソンが身につけるべき能力やスタンスは、何だとお考えですか。

村上 法務の枠組みのなかでいかに専門性を身につけて、その後に「その法務をいかに捨てるか」という感じです。

法務パーソンとしての専門性や知識は、当然備えないといけません。ただ、経営に寄り添うとなると、もう全人格の勝負です。条文がどうのこうのと言っても、経営には響きません。

法務の鎧を脱ぎ捨てて、全人格で語れるか。そういうマインドが必要になってくるかなと思います。

20代・30代の若手法務パーソンが、若いうちにやっておいたほうがいいことはありますか。

村上 たくさん海外旅行に行かれたほうがいいんじゃないかなと思いますね。

意外な回答ですが、理由を伺えますか。

村上 いかに自分が狭いところに生きているか、世界中にはいろんな文化や価値観を持った人がたくさんいるということに、早めに気づくことが大事だと思うからです。

日本と違う雰囲気に触れることで、何かを感じることができるはずです。それは海外に対する心理的バリアを解き、海外案件が来た時もプロアクティブに仕事を楽しむことにも繋がります。

私は商社に入ってから海外を経験しましたが、「もっと20代のうちに行っておけばよかった」と今でも思います。

キャリアの意思決定で迷っている方へ、大事にされていた軸はありますか。

——村上様が語る「キャリアの決断軸」、そして法務を“事業のヘッドライト”と語る想いの核心は、ぜひ完全版動画でご覧ください。全編は弊社メールマガジンにご登録いただいた方限定でご提供しています。あわせて、非公開求人や新着求人情報もお送りしています。
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キリンホールディングス株式会社 執行役員・法務部長 弁護士・ニューヨーク州弁護士
1996年に弁護士登録し、法律事務所で約6年半勤務。2002年10月、企業内弁護士がまだ国内に100人と存在しなかった時代に、キャリア採用で三菱商事へ転職する。天然ガスや自動車、産業金融などの事業法務に携わり、日本KFCホールディングスへの出向を通じてB2Cビジネスの面白さに出会う。約20年の商社法務を経て、2022年10月にキリンホールディングスへ参画。2023年4月より現職を務め、「事業を照らすヘッドライト」としての法務組織づくりを牽引している。

※取材対象者の所属・役職等は取材当時のものです。
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