お問い合わせはこちら
「会社は暗黙知が9割」AI活用コンサルを手掛ける弁護士が語るAIとの向き合い方

インハウスの実態

「会社は暗黙知が9割」AI活用コンサルを手掛ける弁護士が語るAIとの向き合い方

法律事務所Verse
代表弁護士
金子 晋輔

  • TOP
  • 「会社は暗黙知が9割」AI活用コンサルを手掛ける弁護士が語るAIとの向き合い方

生成AIが急速に広がり、法務の現場でもその活用が話題に上らない日はありません。一方で、「AIで仕事がなくなるのではないか」「最新情報を追いかけないと置いていかれるのではないか」と、漠然とした不安を抱える弁護士・法務パーソンも少なくないのではないでしょうか。

法律事務所Verseの代表弁護士、金子晋輔氏は、外資系法律事務所で9年間経験を積んだ後、アクセンチュアのインハウス、スタートアップのコーポレート担当執行役員を経て、2024年1月に独立しました。テクノロジー領域を専門に企業を支援するかたわら、スタートアップを中心にAI活用のコンサルティングも手がけています。

本記事では、AIの登場によって法務の現場で何が起きているのか、そしてこれからキャリアを築いていく弁護士・法務パーソンがAIとどう向き合えばよいのかを伺いました。

※本記事の内容・所属・役職等は取材当時のものです。

※動画のフル版は、無料メルマガ会員にご登録いただくとご視聴いただけます。

社員のAI活用を「会社全体の力」に変える支援

まずは自己紹介をお願いします。

金子 金子晋輔と申します。現在は法律事務所Verseという1人事務所で、テクノロジー領域をメインに活動しています。主に、スタートアップや、グローバルにビジネスをされている企業をサポートしています。

(金子弁護士のキャリアに関するインタビューはこちら)

AI活用コンサルティングでは、具体的にどのようなことをされているのですか。

金子 いろいろなご相談がありますが、一番大きいのは、会社で社員にAIをどう使わせたらいいのかというご相談です。

私の場合はスタートアップの経営者とお話しすることが一番多いので、経営者はAIの力をだいぶ実感してきていて、社員もある程度は使っている。でも、1人1人が使うだけでなく、それをチームや会社全体の力に変えていくにはどうすればいいか。そういうご相談が多いです。

法律事務所Verse 代表弁護士 金子晋輔 様(撮影場所:GVA TECH株式会社)

AI時代に「法務は不可欠」になる理由

法務という枠組みにとらわれず、AI活用の提案やコンサルティングをされているという理解でよいでしょうか。

金子 そうですね。ただ、法務が不可欠なんですよ。

その理由と、AIが登場して実際にどう変わってきているのかを教えてください。

金子 法務が不可欠だということは、特にここ最近、皆さん感じていらっしゃる気がします。簡単な話でいうと、名刺交換をしますよね。いただいた名刺を撮って、ChatGPTに入れていいですか?分からないですよね。

すごく簡単な質問です。「このデータをAIに読ませていいですか?」と聞いている側は、「はい」か「いいえ」で答えてほしい。でも、これが「はい」か「いいえ」で答えられないということも、皆さんなんとなく感じていますよね。

でも、これは答えを出さなければいけないんです。答えが欲しい。誰に相談するか。社内なら法務部です。だから法務は不可欠。

AIガバナンスなども、単独の募集ポジションとして成立していますね。

金子 そうなんですよね。

「会社は暗黙知が9割」ベテランこそAIを

AIが登場したことで、法務の中で他にどのようなことが起きていますか。

金子 なんだかんだ、ベテランの人が大事だという認識が広がっている気がします。

ベテランの方にしか分からない、会社の回し方や仕事の回し方ってあるじゃないですか。マニュアルに書いていないことや、マニュアルの読み方。秘伝のタレは当然データにないから、AIには分かりません。

分からないから、インターンの人と同じなんです。すごく優秀だから、マニュアルがあればテキパキやってくれるけれど、「そのお客さんにその言い方はダメよ」というような事が起きる。

そうすると、「なんだあのAIは」となりますよね、絶対。

そうならないように、言葉になっていないことを一番分かっているベテランの下にAIをつけて、育ててもらわないといけない。一般的には優秀だけれど、この会社のこの仕事をする上では非常識な存在としてのAIがあるので、会社の常識を一番分かっているベテランの方にAIを使ってもらうのが、みんなが一番ハッピーになるんじゃないか。そういう認識が広がりつつある気がします。

意思決定のロジックや大事にする優先順位など、暗黙的なところはマニュアルに書かれていませんよね。

金子 会社は暗黙知が9割、みたいな感じじゃないですか。

「会社の常識を一番分かっているベテランの方にAIを使ってもらう」。マニュアルにない暗黙知を知るベテランこそ、AIを育てる役割を担えると金子様は語る。

1年目なら、まず「AIが好きな先輩」を探す

もし今の知識を持ったまま、78期として法律事務所に入った1年目の弁護士だとしたら、「AIと法務」というテーマでどのようなことを考えますか。

金子 まず事務所の中を見渡して、AIのことが好きな上の期の先生がいるかどうかを見ます。

それはどのような理由からですか。

金子 誰もAIのことが好きじゃなかったら、AIの話はやめようと思います。

まずは環境を知る、ということですね。

金子 そうですね。とても大事だと思います。

AIに好意的な先輩がいたら、どうしますか。

金子 まず、…

続きは、メルマガ会員限定のフル版動画でご視聴いただけます。メルマガでは、非公開求人や新着求人情報もお送りしています。
▶メールマガジンに登録する(無料)

「うまくいっていないところ」を聞いてみる

他に、自分ならやってみることはありますか。

金子 第1ステップで、先に進めそうな場合と、進めなそうな場合の2択ですよね。AIの話をしてもいいことが分かったら、今度はAIの気に入っているところと、「どんなことを試されたんですか?」ということを聞いて、その先も聞けそうなら、「どんなところがうまくいっていないですか?」と聞きます。

うまくいっているところではなく。

金子 うまくいっていないところです。「こういう方向性でやっていきたいんだよ」という話を伺って、その中で「どういう課題感がありますか?」と。ちょっとコンサルっぽい話ですが。その解きたい問題の中で自分が解けそうなものがあれば、「私がトライしてみたこれと少し似ていると思います。こんな感じでやるのはいかがですか?」と聞いてみる。

「いいね、やってみるよ」となってうまくいったら、またその話をしてくださるでしょう。

「私にやらせてください」をどのタイミングで言うかは、その方と自分の関係次第です。どこまで行っても、こちらは職場に新しく入る立場で、その方のお仕事はその方のものです。「仕事の仕方を変えたいです」と言った時に、「仕事の仕方を変える手伝いをしてくれないか」と言われれば入れる。ドアをノックしてから入る、という感じですね。

環境によって違うという事ですね。逆に、抵抗があって、AIの話ができそうにない場合はどうですか。

金子 一旦AIのことを忘れます。AI抜きで考えた時に、その事務所の気に入ったところがあったから入ったと思うので、その事務所のいいところで自分が気に入っているところを探して、あとは普通の仕事ですね。目の前の仕事をする中で、自分の仕事ぶりを認めていただいて、チャンスをいただいてやっていくと。

それをやっているうちに、どこかのタイミングでやはりAIの波は来ます。法律事務所でも法務部でも、他の仕事でもいいのですが、その組織の中で責任のある方がAIに対する方針を考えるタイミングで、自分がそこに入れるかどうかは、巡り合わせでしかありません。だから、あまり無理に飛び込まなくてもいいかなとは思います。ただ、ちゃんと流れは来るんじゃないかと。

金子先生ご自身は1年目の頃、当時の技術や今後来そうな波を見据えて動かれていたのですか。

金子 技術面は、法律事務所に入ってからの方が学びが深かったです。アメリカの弁護士が使っている最先端のリーガルテックのツールを見て「こんなところまでできるのか」と学んだり、アメリカのリーガルマーケットの方が日本より大きいので、いろいろなデータベースに触る機会があったりして、「これを日本のプラクティスにも活用できないかな」と思っていました。

ただ、1年目にやっていたことは、そんなにレベルの高い話ではなくて。自分が考えた「こういう仕事の仕方の方がいいんじゃないか」という思いつきを、いきなりパートナーに送ってみたりしていました。

パートナーの先生からは、どのようなリアクションが来たのですか。

金子 リアクションが来ないんです(笑)。スルーされてしまって、次のお仕事も来なかったりして。

そうした経験があるから、最初に組織の理解や共通認識を確認するというお話になるのですね。

金子 した方がいいんじゃないかと思っています。

「スマホをいつ使いましたか?」始める時期は自由

AIを積極的に活用する事務所で自身でも工夫しながら活用していった人と、従来の仕事の進め方をしていった人とでは、5年ほど経った時に差がつくものでしょうか。

金子 どんなタイミングで何をしてもいいんじゃないかというのが、正直思っているところです。

確かに私の場合、このタイミングで転職したことが今につながっているということはあると思います。でも、転職しなかったらうまくいかなかったかといわれれば、分からないですよね。

AIをいつ、どこまでやるかやらないかというのは、キャリアの大量の分岐の1つでしかない。今日やらなくても、明日やってもいいし、来年やってもいい。私がよくご説明するのは、…

続きは、メルマガ会員限定のフル版動画でご視聴いただけます。メルマガでは、非公開求人や新着求人情報もお送りしています。
▶メールマガジンに登録する(無料)

変化は段階的に来る。組織が持つ「防波堤」の力

使わなければいけない、最新情報を知らなければ乗り遅れる、仕事がなくなる、と思う必要はまだないということですね。

金子 ないと思います。そういう環境の方は思った方がいいと思います。AIを使うことが仕事だったり、最新情報をキャッチアップすることが仕事だったり、まさに「来年からあなたの仕事はAIによってなくなります」と言われていたりする方には、ぜひ頑張っていただきたい。でも、そういう方でなければ、まずそうではないのでしょう。

それに、仮にそういう方がいらっしゃるのだとしたら、徐々にそういう方の発信も出てくるはずです。それを見ながら、AIのいろいろな波がまだ来ていないうちに、ニュースで印象として持っていたことが「こういう環境だと現実になるんだ」と思えば、それから自分なりに始めればいい話だという気がします。

ある日突然、仕事がなくなるというイメージを持つ方が多いと思いますが、そうではないのですね。

金子 多くの場合、そんなことはないですね。段階的にある仕事の割合が減っていったり、役割が変わっていったり。AIで仕事がなくなるといっても、会社が導入して業務をAI化するのに、1日で終わることはないですから。

大きな組織ほど、変わるのにも時間がかかりますね。

金子 そうですね。特に会社員の場合は、組織に、外の大きな変化を小さな変化にする力があるんです。いろいろな防波堤があって、波が少し優しくなって届く。それが組織のパワーです。

逆に、私のように1人でやっている人間は、ある日突然、契約がなくなることもあります。ですから、組織の中にいる方よりも、世の中の波を感じていないと、仕事をしていくのが難しくなるというのはあると思います。

最初の1冊と、話の合う「1人」を見つける

1人でできる情報のキャッチアップや学習方法として、おすすめの書籍はありますか。

金子 福島駿太先生の『法務のための生成AI活用ガイド』を読んでください。私が書いているわけではありませんが、おすすめです。

特徴としては、法務パーソンが真っ先に思いつく質問から順番に、いい質問が並んでいるんです。その質問に「そうそう」と共感しながら読み進めると、読み終わっています。

新しい情報がどんどん出てきますが、おすすめのキャッチアップ方法はありますか。

金子 会いに行くことです。本を出されている方は研修をされることもありますし、そもそも多くの方に知ってほしいと思って書かれているので、連絡をして嫌がられることはないと思います。

コミュニティという意味では、BAMBOO INCUBATORというスタートアップの士業のコミュニティがあって、そこも生成AIの本を出されていますし、本としては出ていませんが、法務互助会という法務部の集まりのSlackのコミュニティがあったりします。私も1つ関わっている「弁護士のための生成AI実践コミュニティ」など、いくつかそういうものがあるんです。

これ以外にも法務のコミュニティはいっぱいあって、どのコミュニティでも大体、複数のコミュニティに所属している方がいらっしゃいます。自分と話が合うなと思う人と1人知り合えば、そこからつないでいただけるので、とにかく1人見つけることが大事です。

1人を見つけるための動きはした方がよい、ということですね。

金子 自分が入った法律事務所にそういう方がいれば、そんなラッキーなことはありません。ただ、その1人がいない場合は、いないところで探しても仕方がないので、そこで無理をしないで、自分の1人を探しに外に出る。しかも、ものすごく外に出る必要はなくて、自分の専門領域の中で会う、ちょっとだけずらして会う、という感じです。急に「よし、AIの最先端の専門家に会いに行こう」となると、「なんで来たの?」となるじゃないですか。だから、手前から手前から1人に会いに行くのが大事です。

「自分と話が合うなと思う人と1人知り合えば、そこからつないでいただける」。AIの情報収集は、まず身近な1人を見つけることから始めればいいと金子様は勧める。

AIツールは「スーパーの棚」を見る感覚で

他に、AIに漠然と不安を持っている人がやっておくとよいことはありますか。

金子 お気に入りのAIツールを見つけることです。

今はたくさんありますが、どうやって見つけるのがよいのでしょうか。

金子 …

続きは、メルマガ会員限定のフル版動画でご視聴いただけます。メルマガでは、非公開求人や新着求人情報もお送りしています。
▶メールマガジンに登録する(無料)
法律事務所Verse 代表弁護士
62期弁護士。モリソン・フォースター法律事務所(旧伊藤 見富法律事務所)で9年間、外資系企業の日本での事業展開や日本企業の海外展開、スタートアップの支援などに携わる。その後、アクセンチュア株式会社の法務を経て、レシピ動画サービス「クラシル」を運営するdely株式会社(現 クラシル株式会社)に入社し、コーポレート担当執行役員を務める。2024年1月、法律事務所Verseを設立。テクノロジー領域を専門に、スタートアップや外資系企業を支援するほか、AI活用のコンサルティングを手がける。

※所属・役職等は取材当時のものです。
取材依頼はこちら

Recommend

おすすめ記事