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企業内弁護士の中途採用方法を徹底解説

企業内弁護士の中途採用は、そもそも募集機会が少ない上に、対象となる人材も希少のため、社内で知見・ノウハウを積むことが出来ず、苦労されている企業も少なくありません。

私は、多数の司法試験合格者を輩出するアガルートアカデミーのグループ企業で、弁護士専門の転職エージェント「アガルートキャリア」を運営しています。

多くの弁護士の中途採用をご支援しており、企業内弁護士(インハウスローヤー)の支援実績も多くございます。現在進行系でも採用支援を行っています。

この記事では、その私の経験・知見をもとに、なかなか外に出回らない、企業内弁護士の中途採用の方法について解説しています。

最後まで読んで頂くと、企業内弁護士の中途採用マーケットについて大まかな内容が理解出来、採用成功のためにすべきことが分かるようになっています。

関連記事:5大法律事務所出身の弁護士を採用するために必要なこと

企業内弁護士の中途採用マーケット

まずは、企業内弁護士の中途採用市場について解説します。

企業内弁護士は国内で約3,000名、年々増加中

企業内弁護士の人数は年々増えています。

日本組織内弁護士協会の「企業内弁護士数の推移」によると、2022年の企業内弁護士の数は2,965人となっており、直近4年で20%以上、500人以上増加しています。

2001年はわずか66人でした。この20年で3000人弱の企業内弁護士が増えたことになります。

こう見ると、一見企業内弁護士の採用難易度は高くないように感じるかもしれません。

企業内弁護士の需要は非常に高く、今後もトレンドは続く

しかし、企業内弁護士を採用しようという企業も年々増えています。

日本組織内弁護士協会の調査によると、2018年は1031社だった企業内弁護士の募集が、2022年には1371社に増えています。

企業活動のグローバル化、新しいテクノロジーへの対応(FinTech、AI等)、ガバナンスの強化など、多くの企業にとってリーガル部門の強化は重要な課題です。

こうした企業は弁護士事務所を活用するだけではなく、インハウスで弁護士組織を構成し、競争力を高めようとしています。

このような背景から企業内弁護士の採用ニーズは高い状態が続いています。そして、このトレンドはしばらくは続くでしょう。特に、一定の企業法務の経験をもつ弁護士の採用は、各社奪い合いが続いています

ジュリナビ「74期司法修習終了者の就職状況調査」:https://jurinavi.com/74th-legal-apprentices-career-survey/

企業内弁護士採用が難しい理由

前述したように、企業内弁護士の需要は高く、採用は簡単ではありません。

ただ、こうした競争率だけが企業内弁護士の採用を難しくしているわけではありません。その他にも弁護士特有の事情が、さらに難易度を高くしています。

その事情を解説しています。

企業内弁護士の年収相場が高水準である

採用においてまず重要となるのが、採用ターゲットの年収水準と提示年収の相場があっているかどうか、です。

日本組織内弁護士協会「企業内弁護士に関するアンケート集計結果」(2018~2022年)によると、企業内弁護士の年収は以下のような状況となっています。

企業内弁護士の年収分布

集計結果をみると、企業内弁護士の50%以上が年収1000万円以上となっており、またこの割合は年々増加しています。

上記を参考に、相場に合致する年収提示ができるのであれば、採用競争力の一定ある条件になるかと思われます。

しかしながら、既存の人事制度に照らし合わせると採用優位な報酬提示が難しいケースは多く存在します。

そのような場合、例えば総合職採用とは別のスペシャリスト採用枠の設定や、弁護士対象の新たな手当等の設計など、既存の人事制度自体を見直すことも、検討する必要があるかもしれません。

また、採用目的にもよりますが、報酬水準が合致しやすいターゲットに絞る事も一つです。

下記は日本組織内弁護士協会「企業内弁護士に関するアンケート集計結果」(2022年)の、弁護士経験年数と年収区分の回答者数です。

集計結果を見ると、経験5年未満の企業内弁護士は約半数が年収750万未満です。

高水準での提示が難しい場合は、自社の報酬水準と採用目的を加味して、若手弁護士にターゲットを絞り訴求するのも、一つの打ち手として考えられます。

報酬水準での訴求やターゲット変更が難しい場合は、働き方など別軸での動機づけが必要となります。

その為には弁護士という職種の理解促進が必要となりますが、そちらについては次項目で記載いたします。

※日本組織内弁護士協会「企業内弁護士に関するアンケート集計結果」(2018~2022年)

https://jila.jp/wp/wp-content/themes/jila/pdf/questionnaire202203.pdf

弁護士採用の経験不足

弁護士採用を恒常的に行っている企業は多くありません。ほとんどの企業では、数年に一度や、初めての採用というケースが一般的であると考えられます。

企業において稀少度の高い採用になる為、構造的に弁護士採用の経験を得る事が難しく、そこからさまざまな課題が見えてきます。

スキルを見極める事が難しい

採用頻度が少ないかつ専門職である事から、スキルセットの見極めが難しいと言う点が挙げられます。

例えば、コンプライアンスに強い人材を採用したい、といっても、どの法令に強い人材が望ましいのか、ルール作りから行うのか育成研修をメインとするのか等によって、求められるスキル・経験は異なってくるでしょう。

また、金融規制に詳しい人材が欲しい場合でも、健全な事業運営強化の為か新規事業を進めるにあったての採用なのかで、必要なスタンスなども異なってきます。

採用時には、ジョブディスクリプション作成において必要なスキルを法務部門とすり合わせておく、初回面接には法務部門のトップに入って貰うなどの対応が求められます。

採用担当者は法務の専門家ではありませんので、全てを理解している必要はありません。しかしながら、法務部と円滑なコミュニケーションを行える水準の業務理解があると、より良い採用活動に繋がると思われます。

弁護士特有の傾向に対する理解が薄い

弁護士はいわゆる企業でキャリアを歩んできた方と異なる部分が多く、その点を理解しているかいないかで、選考対応などが大きく異なってきます

例えば、弁護士は司法試験合格後、80%以上がファーストキャリアで法律事務所を選択しており、企業内弁護士(官公庁所属を含む)は全体のわずか3%台となっています。

法律事務所の選考を受けた経験はあっても、企業の選考を受けた事がある弁護士は少なく、企業面接に慣れていな方が多いと言えるでしょう。

法律事務所の採用では面談や会食を重ねて採否を決定するケースが多いため、一次面接で「志望動機は?」と聞いても、そこまでの準備・言語化をしていない場合があります。

志望動機を準備する事は当然と思われる採用担当の方も多くいらっしゃいますが、上記のような傾向を踏まえ、一次面接時点では「転職を考えている理由」、二次面接以降で「志望動機」のうように、質問項目を整理する事も肝要かと思われます。

また、事務所所属の弁護士は、業務委託で執務している事が殆どです。

その為、企業内弁護士として雇用される事で、保険負担や福利厚生まわりの条件が好転するケースが多く、事務所所属で得ている報酬額より下がったとしても、可処分所得が増える事があります。

また法律事務所所属の方が拘束時間が長いケースが多く、1時間あたりの報酬額に換算すると企業内弁護士の方が良いという事もあります。 

このように、弁護士特有の傾向などを把握する事で、選考の進め方や訴求ポイントの見直しが可能です。

とはいえ、弁護士採用の経験は所属企業の弁護士採用方針に起因するものであり、経験を増やしたいからと言って増やせるものではありません。

その為、弁護士採用においては、弁護士に精通したエージェントを頼っていただくと良いかと思います

 

企業内弁護士の採用方法

次に企業内弁護士の採用方法を解説します。

細分化することも可能ですが、ここでは大きく3つに分けて解説します。

自社採用

自社で採用を行う方法です。

ホームページで求人を出す方法、ダイレクトリクルーティングサービス(ビズリーチ、リクルートダイレクトスカウト等)を用いてスカウトを送る方法、社員の紹介などの手法があります。

ホームページや紹介は、費用は小さく行うことが可能ですが、タイミングやアプローチ出来る層が限定的になります。

ダイレクトリクルーティングは、適切に運用出来ればよいですが、工数を確保出来るか、前述したように、弁護士への理解度が低いと精度が上がりきらないという課題があります。

媒体採用

各種転職サイトや弁護士であればひまわり求人などの転職サイトも採用手法の選択肢になります。

職種を限定しない転職サイトは、世の中に広く募集する求人、対象の多い求人には相性が良いですが、企業内弁護士のようなニッチな専門性の高い募集にはあまり向かないでしょう。

一方でひまわり求人は、弁護士の転職顕在層には見られやすい媒体ではありますので、おすすめできます。ただし、能動的に求人を探しに来る方のみに広報出来る媒体ですので、アプローチ出来る層は限定的と言えるでしょう。

転職エージェント

転職エージェントは、初期費用がかからず(一部のリテイナーを除く)、求人が可能で、紹介された人材を採用した場合にのみ支払いが発生する、成果報酬で募集が可能です。総合型と言われる大手のエージェントと専門特化のエージェントがあります。

企業内弁護士の採用には、専門特化型のエージェントが向いているでしょう。弁護士やリーガルに強いエージェントをいくつか活用するのが良いのではないでしょうか。

企業内弁護士の採用におすすめの手法

前述したように企業内弁護士の採用は非常に難しいです。

そのため、出来ることは全てやったほうが良いというのがおすすめの手法にはなります。

しかし、現実的には採用にかけられるリソースも限られると思いますので、ひまわり求人+転職エージェントをおすすめします。(弊社は転職エージェントですので、ポジショントークになってしまいますが)

ではなぜ転職エージェントを活用すべきかを次に解説します。

企業内弁護士採用で専門エージェントを活用すべき理由

転職エージェントの一般的な特徴は前述の通りですが、ここでは専門領域に特化したエージェントを活用すべき理由について述べていきます。

転職潜在層にアプローチできる

採用においてまず重要な事はターゲットとなる人材にアプローチできるかどうか、です。

前項で記載した媒体採用などでは、能動的に求人を探している転職顕在層にアプローチできます。

一方、優秀な人材であればあるほど現職での待遇や条件に恵まれている事が多く、能動的に求人を探している方は少数派です。「キャリアの良い機会があれば検討する」という温度感であり、転職潜在層と言われ、転職サイトなどを活用してない方が多いです。

専門エージェントを活用するメリットは、上記のような転職潜在層にまでアプローチできる点が挙げられます。

エージェント独自のネットワークやコネクションを駆使し、転職サイトなどに登録していない弁護士人材に、個別に求人情報やポジションの魅力などを届け訴求する事が可能です。

豊富な企業内弁護士の採用事例がある

弁護士に強い専門エージェントであれば、企業内弁護士の豊富な採用事例を有しています。その為、様々なケースに応じた解決策の提示が可能です。

採用側の課題に合わせて、人材要件の定義、訴求ポイントの整理、選考フローの変更など、課題解決の為の打ち手を提案できます。

リスクが無い

上記のようなメリットがある一方、多くの専門エージェントは完全成果報酬型で運営をしている為、入社に至らない限り費用は発生しません

「費用は発生するのに採用できない」というリスクをゼロにする事ができます。

もちろん、エージェントとのコミュニケーションなどの人・時間のコストはかかりますが、仮に採用に至らなかったとしても、企業内弁護士採用のノウハウなどを得る事が可能です。

以上の点から、専門エージェントの活用する事で、リスク無くメリットを得る事が可能です。

1点補足をすると、専門エージェントを一つに絞る必要はありません。

専門エージェントとはいえ、世の中に存在するターゲット人材全てと繋がっているという事はありませんので、2-3の専門エージェントを併用する事をお勧めします。

まずは2-3の専門エージェントを活用し、余剰のリソースに応じて自社採用や媒体採用などを併用していく事が、企業内弁護士採用においては良いアプローチであると考えます。

弊社が運営するアガルートキャリアは弁護士に特化した専門エージェントです。

弁護士の紹介はもちろん、個々の課題に応じた解決策の提示は可能ですので、ご興味お持ちの方は是非ご相談ください。

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この記事を書いたコンサルタント

2016年創業期の株式会社ファンオブライフに参画し、人材紹介サービス立ち上げ・拡大に従事。現在はリーガル専門のエグゼクティブコンサルタントとして、弁護士・法務パーソンのキャリア支援を行う。国内外の法律事務所や、メーカー・商社・金融・IT業界等の企業法務部とのネットワークが強み。​

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