- 作成日:2023.03.20
- 更新日:2023.08.29
5大法律事務所出身の弁護士を採用するために必要なこと
弁護士事務所の中途採用のご支援をしていると、企業法務経験があり、優秀な弁護士を採用したいという要望を頂きます。
具体的にお話を伺うと、つまりそれは5大法律事務所出身の弁護士を採用したいということと、ほぼ同義であることも多いです。
この記事では、弁護士専門の転職エージェントのアガルートキャリアがその知見を活かし、弁護士事務所や企業が、5大法律事務所出身者を採用するために必要なことをまとめています。
最後まで読んでいただくと、5大法律事務所出身の弁護士の採用に何をすればよいのか理解出来るようになっています。
関連記事:企業内弁護士の中途採用方法を徹底解説
INDEX
5大法律事務所出身者の動向
いわゆる5大法律事務所(西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大野・常松法律事務、森・濱田松本法律事務所、TMI総合法律事務所)は、いずれも在籍弁護士数が500名を超えており、多数の弁護士を抱えています。
各事務所採用を積極的に行い、規模を拡大しています。
新人弁護士の約17%が5大法律事務所の弁護士に
ジュリナビの調査によると、74期の弁護士登録者は1226名です。さらに5大法律事務所の採用人数はそれぞれ、
- 西村あさひ法律事務所 :45名
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所:44名
- 長島・大野・常松法律事務:43名
- 森・濱田松本法律事務所:41名
- TMI総合法律事務所:38名
となっています。5大法律事務所合計で、211名の新人弁護士を採用しています。弁護士登録者のうち約17%が5大法律事務所で採用されていることになります。
この傾向は近年続いており、今後も大手の寡占化傾向は続く可能性が高いでしょう。
ジュリナビ:74期司法修了者の就職状況調査:https://jurinavi.com/74th-legal-apprentices-career-survey/
一方で退職者も多い
一方で5大法律事務所は、後述する働き方や将来性の観点で移籍する方が少なくないのも事実です。
在籍弁護士数を見ると、採用人数よりも増加ペースは多くないことがわかります、他の法律事務所やインハウスローヤー、近年ではベンチャー企業などへの移籍(転職)も見られます。
5大法律事務所出身者は引く手あまたで多くの事務所、企業が奪い合いをする人材です。そうした人材を採用するためには、どういった移籍理由の傾向があるのか、また何をやっておくのが良いのかを理解し、準備を行っておく必要があります。
5大法律事務所の弁護士が移籍・転職を検討する理由
5大法律事務所出身者が移籍・転職を検討する理由の代表的なものをまとめます。
キャリア形成の不安
5大法律事務所の若手弁護士の多くは、弁護士として今後のキャリア形成に不安を感じ移籍や転職を検討ていらっしゃいます。
具体的には、弁護士としての専門性(色付け・ポジショニング)をどの領域で深めていくのかについて悩み、他事務所・企業内弁護士を模索しています。
5大法律事務所の弁護士の多くは特定のプラクティスグループに属し、所属グループで扱うプラクティスにおいて専門性を深めていく傾向にあります。2-3年程度執務をするとある程度自身が担当する領域傾向が固まってきます。
この段階で「果してこの専門性を深めていく事が自身のキャリアに取って最良なのだろうか」と考える弁護士の方は相当数いらっしゃり、これが移籍検討の大きな契機となっています。
別のプラクティスにチャレンジしたいという弁護士の方もいれば、幅広いプラクティスを担当してスペシャリストではなくジェネラリストを目指したいという方もいらっしゃいます。
また、5大法律事務所の場合は非常に規模が大きく同期人数も多い為、パートナーに昇格できるのか、という点に不安を抱く弁護士の方は多いと感じています。
前述したように各修習期で多くの弁護士を採用しており、昇格競争が非常に激しい環境です。
仮に昇格できたとしても、大手事務所は既に先輩パートナーが多くの企業案件を有している事から、新規の案件獲得の余白が少なのではないか、案件獲得の営業難易度が非常に高いのではないか、と考える方も少なくないようです。
ワークライフバランス
移籍検討の契機として、ワークライフバランスを挙げられる方も多くいらっしゃいます。
5大法律事務所のアソシエイト弁護士は多忙な方が多く、個人差はあるものの、ビラブルで月250~300時間程度の方が多いと思われます。
日本における働き方改革の波は若手弁護士の価値観にも影響を与えており、報酬だけでなくワークラフバランスの改善を通じたQOLの良化を志向する弁護士の方は増えている印象です。
特に、30歳前後のアソシエイト弁護士は結婚・出産・子育て等のライフイベントが重なる時期であり、その点からもワークライフバランスを整えたいというニーズが生じやすくなっています。
5大法律事務所出身の弁護士の採用のためにやっておくべきこと
大きく移籍・転職理由がわかったところで、それでは採用をするために何を行っておくべきかをまとめます。
前提:採用競争は進み、縁故・紹介以外の採用も増えている
弁護士の採用は、クローズドな世界で、人的ネットワーク(縁故や紹介)によるものが他の一般的な転職マーケットに比べて影響が大きいです。
それでも、インターネットの普及、企業内弁護士の増加、中途採用の増加など、外的な要因によって縁故や紹介以外での採用の影響力が増しています。
こうした状況下では、情報を出来るだけ開示し、様々な採用手段を活用することで、関心を持って頂ける形にアピールする必要があります。
情報開示(採用広報)
縁故や紹介以外での採用が一般的になりつつある中で重要なのが、採用に関連する情報の開示です。
お話を伺う多くの事務所が詳細の仕事内容や報酬条件、働き方がブラックボックス(委細面談)になっていることが多く、具体的なイメージを持ちづらいです。
そうした状態だと、なかなか関心を持って頂きづらく、他の採用巧者に先んじて採用されてしまいます。条件面、働き方などを積極的に開示することで、興味を持って頂ける形や選考の土台に乗る可能性を増やすことが出来ます。
報酬
報酬に関しては、可能な限り具体的な数字を求人情報に明記する事をお勧めします。
5大法律事務所は報酬も国内トップクラス水準である事から「報酬を明示すると応募に至らないのではないか」とご相談いただく事も多いのですが、他情報と併せて記載をする事でカバーできるケースは多くあります。
例えば、標準的な稼働時間を報酬額と合わせて記載する事で、時間あたりの報酬は5大法律事務所と同等である、とアピールする事も可能です。
組織体制・評価制度
特定のパートナーに紐づき専門性を高めるのか、幅広いパートナーの案件にアサインされゼネラルに経験を積んでいくのか、この辺りが求人情報から見て取れない事は多々あります。
また、パートナー・アソシエイトの比率や、パートナー昇格への基準、評価制度なども公開可能な範囲で記載をする事で、入所後のイメージを抱きやすくなり、応募喚起へと繋がります。
企業であれば、法務組織の人数や社内弁護士の有無なども重要な情報となります。弁護士手当や住宅手当など、法律事務所では通常無いであろう福利厚生面も、訴求ポイントとなります。
個人受任
5大法律事務所から移籍を考える方の中には、一定数個人事件の受任可否を重視している方がいらっしゃいます。
受任の可否だけでなく、「経費分担割合」「事務所として推奨しているのかどうか」「実際に在籍弁護士が個人事件を受任しているかどうか」といった情報も添える事で、より解像度の高い情報開示となるでしょう。
前述の報酬とも絡みますが、個人事件の受任可かつ積極推奨・経費分担なし等であれば、基本報酬が高水準でなくとも、十分戦える条件になり得るかと思います。
企業においても、副業可であればその旨を求人情報に明記する等で、個人事件を受任したいと考える弁護士にはアピールができるかと思います。
採用方法の拡大
縁故や紹介だけでなく、様々な採用手段を用いることも必要です。
自社採用
自社採用の基本となるのがHPの充実です。
こちらでは前述したような、要素を出来るだけ開示し、興味を持って頂いた方に働くイメージを持って頂けるような内容を用意しておくのがよいでしょう。
媒体
転職・移籍に向けて積極的に動いている層に向けてであれば、弁護士向けの採用媒体もおすすめです。※転職市場全体向けの媒体はおすすめしません
転職エージェント
転職エージェントは採用に至るまで費用がかからないのでおすすめです。
また、転職潜在層へのアプローチが可能な点が前述した2つにない魅力です。特に5大法律事務所出身者の弁護士のような方は、今すぐに転職ではないが合う求人があれば教えてほしいという相談も多く、そうした方々とネットワークを持っている専門のエージェントはおすすめです。
5大法律事務所出身者の採用ならアガルートキャリアへ
弊社グループが運営するオンライン資格スクール「アガルートアカデミー」は、多くの予備試験合格者、司法試験合格者を輩出しています。
また、長年弁護士専門の転職エージェントとして運営していた株式会社エイパスを吸収合併しています。
上記をもとに、多くの5大法律事務所出身者(在籍者含む)とのコネクションを有しています。
5大法律事務所出身者のご紹介はもちろん、採用に向けたアドバイスも可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
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この記事を書いたコンサルタント

糸岡 樹慧
2016年創業期の株式会社ファンオブライフに参画し、人材紹介サービス立ち上げ・拡大に従事。現在はリーガル専門のエグゼクティブコンサルタントとして、弁護士・法務パーソンのキャリア支援を行う。国内外の法律事務所や、メーカー・商社・金融・IT業界等の企業法務部とのネットワークが強み。
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