法務に向いている人とは。事業会社10社の法務部が語る適性と、仕事がきついと感じる場面

更新日:2026年9月15日

法務に向いている人とは。事業会社10社の法務部が語る適性と、仕事がきついと感じる場面

法務に向いているのはどんな人か。この問いに対する答えは、たいてい性格の話になります。几帳面な人、細かい作業が苦にならない人、慎重な人。間違いではないのでしょうが、実際に法務組織を率いている方や現場の担当者が同じ言葉を使うのかというと、そうとは限りません。

アガルートキャリアジャーナルでは、事業会社の法務部門にお話を伺う取材を続けてきました。キリンホールディングス、日本ペイントホールディングス、タニタ、PHCホールディングス、アクセンチュア、マクアケ、日本アイ・ビー・エム、ルネサス エレクトロニクス、JFEエンジニアリング、フォースタートアップス。今回はこの10社11名の方の言葉を、適性と大変さという2つのテーマで並べ直しました。弁護士資格を持つ方も、持たない方も含まれています。

この記事で扱うのは、次の問いです。現場では「向いている人」がどう語られているのか。会社によってその答えは変わるのか。未経験から入った人はいるのか。そして、法務の仕事はどこがきついのか。最後に、アガルートキャリアが公開している法務求人579件を集計し、条件面から確認できることも整理しています。

所属(取材当時) 登場者 担当・経歴
ルネサス エレクトロニクス 田子 晃様 アンダーソン・毛利・友常法律事務所などを経てインハウスへ
JFEエンジニアリング 吹屋 響子様
(法務部・弁護士)
弁護士登録以降、一貫してインハウスとして勤務
タニタ 増喜 泰典様
(法務・知的財産部 部長心得兼法務課長)
法務と知的財産を一つの部で担当する組織を率いる
PHCホールディングス 虎山 茂政様
(法務・コンプライアンス部 上席部長)
法務・知財領域で30年以上の経験。ニューヨーク州弁護士
マクアケ 千葉 大吾様
(執行役員 企業法務部長 兼 人事部長)
4名の企業法務部を率いる
キリンホールディングス 梶川 陽介様
八嶋 章博様
(法務部・弁護士)
M&A・ガバナンス・国際案件を担当
日本アイ・ビー・エム 大内 麻子様
(弁護士)
法律事務所から出向を経てインハウスへ
日本ペイントホールディングス 藤原 大輔様
(法務チームリーダー)
総勢11名の法務組織で、海外案件から国内サポートまで担当
アクセンチュア 田上 愛華様
(法務本部 コントラクトマネジメント部)
コンサルタント職として新卒入社後、法務本部へ
フォースタートアップス 菊池 烈様
(執行役員 コーポレート本部長)
監査法人を経てコーポレート部門を統括

※所属・役職はいずれも取材当時のものです。

法務に向いているのは、どんな人だと語られているか

取材で適性について尋ねると、法律知識の話から始める方はほとんどいませんでした。代わりに出てくるのは、事業部門との関わり方の話です。

ルネサス エレクトロニクスの田子様は、法律事務所を経てインハウスへ移った方です。どのような人が向いているかを問われて、こう答えています。

田子 やはり社内の依頼者と膝を突き合わせて議論し、課題に深く関わることを厭わず、それを楽しめる人はインハウスローヤーに向いていると思います。

ここで繰り返し使われているのが「楽しめる」という言葉です。同じ趣旨を、別の角度からも述べています。

田子 法律事務所ではなかなか経験できなかった非常に集中的な契約交渉や紛争に関する交渉が行われる中で、それを楽しみながら社内の依頼者と積極的に証拠集めや事実関係の調査を進めていける方が、インハウスに向いているのではないでしょうか。

JFEエンジニアリングの吹屋様は、弁護士登録以降ずっとインハウスで働いてきた方です。就職先を選んだ当時を、こう振り返っています。

吹屋 企業法務にもいろいろな働き方がある中で、自分は事業や経営に近いところで仕事をしてみたい、その方が面白いんじゃないかと。

それに加えて、チームの中で共通のゴールを目指して働くのが好きだろうという自覚もあったので、インハウスの働き方に憧れを持ち、最初からインハウスで就職しました。今でも続けられているので、向いていたのかなと思います。

「課題に深く関わることを厭わない」「チームの中で共通のゴールを目指して働くのが好き」。挙がっているのは、一人で完結させるより、人と一緒に進めることを楽しめるかどうかでした。几帳面さや慎重さより先に、この話が出てきます。

会社によって、求められる適性は違う

もっとも、「法務に向いている人」を一つの型で語れるわけでもなさそうです。タニタで法務と知的財産を一つの部として率いる増喜様は、よくある二分法についてこう述べています。

増喜 よく「ジェネラリストかスペシャリストか」という議論がありますが、法務はどちらの適性でも活躍できる職種です。ただ、タニタのような規模感の企業では、何でも対応できるジェネラリスト的な動きがより求められる傾向にあります。

会社の規模やフェーズによって、求められる動き方が変わるということです。フォースタートアップスの菊池様は、変化の速い環境で必要になる資質を挙げています。

菊池 当社の社内的にもマーケットの動向的にも変化が激しい環境ですから、一度決めたことがその後合わなくなってくることも珍しくありません。

そのため、変化に柔軟に対応できるマインドが重要です。

さらに、スタンスそのものが合うかどうかにも触れています。

菊池 事業部門と常にコミュニケーションを取りながら、新規事業の立ち上げ時には積極的にリスクを取り、一方で守るべきラインはしっかりと守るというスタンスです。このような価値観に共感できなければ、長く続けることは難しいかもしれません。

リスクの取り方に対する考え方は、会社によってかなり違います。問いは「法務に向いているか」ではなく、「どの法務に向いているか」に近いのかもしれません。

法務未経験、異分野から入った人たち

法務への適性を考えるとき、そもそも自分の経歴で通用するのかが気になる方も多いと思います。取材では、入口の幅が外から見えるより広いことを示す話がいくつか出てきました。

PHCホールディングスの虎山様は、法務・知財領域で30年以上の経験を持つ方です。中途入社者のバックグラウンドについて、こう説明しています。

虎山 中途で入ってくる方はさまざまで、医療・ヘルスケア業界のバックグラウンドを持っていない人の方が多いです。入社してから学んでもらえれば十分やっていけると考えています。

業界経験だけの話ではありません。

虎山 もともとこの会社にいるメンバーのキャリアもさまざまで、元技術者や貿易実務の経験者など多様です。例えば貿易実務の経験者は関税問題に詳しく、さまざまな事業部から相談が来るほど活躍しています。

マクアケの千葉様も、4名の企業法務部の構成を具体的に挙げています。

千葉 バックグラウンドは多種多様で、企業法務経験者が2名、中国の弁護士資格を持っている者が1名、そして証券会社で営業をしていた法務未経験者が1名という構成です。年齢は30代から40代前半が中心になっています。

4名のうち1名が法務未経験からの入社です。また、アクセンチュアの田上様はコンサルタント職として新卒入社し、その後に法務本部へ移った方でした。法務のキャリアが法学部と法務部の間だけで完結しているわけではない、ということです。ただし、求人票の上でどう見えるかは別の話で、この点は後ほど求人データの章で触れます。

法務の仕事は、どこがきついのか

ここからは、大変さとして語られた部分を見ていきます。今回の取材で出てきた話は、大きく4つに分かれました。

一つ目は、入ってからの立ち上がりの時期です。キリンホールディングスの梶川様は、前職からの移行をこう振り返っています。

梶川 前職では書類チェックなどはしていましたが、ガバナンスに関してはほぼ経験がありませんでした。そのため、最初の3ヶ月は業務内容と事業の両方の理解が不足しており、キャッチアップが大変でしたね。

日本アイ・ビー・エムの大内様も、若手時代を具体的に語っています。

大内 若手の頃は本当に苦労の連続でした。業務に慣れず、どの方向に進めばいいのか分からない。会議でも発言できず、英語の電話会議では内容を理解することすら難しい時期もありました。

二つ目は、相談してもらえる関係を作るまでの過程です。PHCホールディングスの虎山様は、事業部門との連携で難しい点を問われて、こう答えています。

虎山 難しいと感じる点は、事業部からいかにタイムリーに相談してもらうか、という点での信頼関係の構築です。

ルネサス エレクトロニクスの田子様も、入社直後に感じたこととして同じ方向の話をしています。

田子 的確なアドバイスをするだけでなく、社内の依頼部門の方と共同で、どのように案件を進めるか、交渉の着地点をどう探るか、どのように解決するかといったことを、もっと一緒になってやっていかなければならないという点は、入社してすぐに想像以上に大変だと感じました。

法律の問題に答えるところまでで仕事が終わらない。ここが事務所との違いとして語られる一方で、大変さの正体にもなっています。

三つ目は、事業の成長に処理が追いつかなくなる局面です。マクアケの千葉様は、法務組織を分けることになった経緯を説明する中でこう話しました。

千葉 しかし、成長に伴って案件数が数百件にまで増え、すべてを正しく処理するのが本当に難しくなってきたんです。このままでは会社が回らなくなるという危機感がありました。

キリンホールディングスの八嶋様は、M&A案件を担当した当時の状況をこう語っています。

八嶋 チームリーダーはマネジメントの役割なので、実際に手を動かすのは私と直属のリーダーです。マンパワーも本当に足りなくて、朝起きたら英語のメールがすごく溜まっていて、それをキャッチアップしていくだけでも大変でした。

四つ目は、少人数で広い範囲をカバーすることです。日本ペイントホールディングスの藤原様は、総勢11名という体制について説明しています。

藤原 これだけ大きなグループの法務組織を支える部門としては、かなり少数精鋭な組織だと思っています。少数でありながらグローバル案件から国内の現場サポートまで幅広くカバーするのは大変なところもあるのですが、メンバー間で密に連携を取り、風通しよくできているところが、今の法務組織の特徴でありメリットだと感じています。

「きつい」は労働時間の話とは限らない

ここまで挙げた4つを見返すと、あることに気づきます。労働時間の長さそのものを大変さとして挙げた方が、ほとんどいませんでした。語られていたのは、慣れるまでの時期、信頼を得るまでの過程、案件量に対する体制、そして担当範囲の広さです。

労働時間について直接語られた例もあります。アクセンチュアの田上様は、実際の働き方をこう説明しています。

田上 もちろん残業が必要な時もありますが、常に残業前提での仕事の配分になっているということはありません。子育て中の方や家族の事情がある方でも、気兼ねなくフレキシビリティを持って働けているなと感じます。

もちろん、これは一社の話です。ただ、今回聞かれた「大変さ」の中身は、時間の長さよりも、事業部門との関係を築くまでの過程に集中していました。そしてこれは、前半で見た適性の話とちょうど裏表の関係にあります。人と一緒に進めることを楽しめるかどうかが向き不向きを分けるのであれば、その過程が大変さとして表れるのも自然なことです。

アドバイザーの視点|「向いていない」と感じる原因は、環境側にあることもあります

法務のお仕事が向いていないのではないかというご相談は、少なくありません。ただ、詳しくお話を伺うと、業務の内容ではなく、法務がどう位置づけられているかに原因があるケースもあります。相談が来る前に決まってしまう、法務が確認する前に契約が進んでしまう、といった状況です。

この場合、同じ「法務」でも会社を変えると状況が変わることがあります。面談では、いまの大変さが業務そのものによるものなのか、組織における法務の立ち位置によるものなのかを一緒に整理するところから始めています。

求人情報から確認できること

ここまでは取材で語られた話でしたが、求人の側からも傾向が見えます。2026年9月14日時点で、アガルートキャリアが公開している法務求人579件を集計しました。以下の数字はいずれも当社が公開している求人に限ったもので、市場全体の統計ではありません。

まず働き方の条件です。

条件 件数(全579件中)
フレックス制 300件
リモートワーク可 286件
資格取得・学習支援 153件
英語力が活かせる 132件
フルリモートワーク 7件

フレックス制が300件、リモートワーク可が286件と、どちらも全体の半数前後にのぼります。働く時間と場所については、選択肢が広く用意されていると言えます。

ただし、前の章で挙がった大変さは、いずれもこの柔軟性で解消される種類のものではありませんでした。慣れるまでの時期、相談してもらえる関係を作るまでの過程、案件量に対する体制。制度で調整できるのは働く時間と場所までで、その先は会社ごとの事情によります。求人票の条件が整って見えることと、入ってからの手応えは別の話だということです。

次に、入り口の広さについてです。前の章では未経験から法務に入った方の例を紹介しましたが、求人票の上ではどう見えるのか。ここは数字で確かめるのが難しい領域です。

求人票に書かれる「未経験歓迎」は、意味の幅が大きい言葉だからです。業界は未経験でよいが法務の実務経験は必要という意味のこともあれば、法務という職種そのものが未経験でよいという意味のこともあります。同じ表記が別のことを指しているため、件数を数えても実態はつかめません。

虎山様が挙げていたのは「貿易実務の経験者が関税問題で活躍している」という話でした。法務経験そのものではなく、隣接する業務経験が評価された例です。こうした判断が求人票の条件欄に表れることはありません。自分の経歴が通用するかどうかは、求人票を読み比べて判断するより、個別に確認したほうが早い部分だと言えます。

関連して、先ほどの表にあった「資格取得・学習支援」153件という数字にも触れておきます。大内様が英語の電話会議で苦労したと語っていたように、入った時点で全部できていることが前提になっているわけではない、という姿勢が制度の側にも表れています。英語力が活かせる求人が132件ある一方で、学ぶための支援も同じくらいの規模で用意されている、という並びです。

最後に想定年収です。

項目 金額(579件の中央値)
想定年収の下限 600万円
想定年収の上限 1,000万円
レンジ幅 310万円

想定年収の上限が1,000万円以上の求人は294件で、全体のおよそ半数です。ただしこの数字は参考値としてご覧ください。当社がお預かりしている求人には非公開のものも多く、公開している求人だけを集計したこの表が、法務求人の年収の全体像を表しているわけではありません。

大変な時期を、どう捉えるか

若手時代の苦労を語っていた大内様は、その後の変化についても続けています。

大内 でも、そうした試練を乗り越える過程で、確実に力がついていったと感じています。あの頃の苦しさがあったからこそ、今の自分があると。

当時は先が見えず不安でしたが、頑張って踏ん張った先に必ず新しい景色が広がっています。今まさに大変な思いをしている方には、「その努力は間違っていない」「今の頑張りが必ず未来につながる」と伝えたいです。

ただし、すべての大変さが時間で解決するわけでもありません。菊池様が「このような価値観に共感できなければ、長く続けることは難しいかもしれません」と述べていたように、そもそも合わない環境というものもあります。立ち上がりの苦しさなのか、それとも合わないことのサインなのか。この2つを区別する必要があります。

合わないのは、仕事なのか、いまの環境なのか

タニタの増喜様は、法務としてのキャリアの広げ方について、次のように話しています。

増喜 もし現在の環境で業務の幅を広げることが難しいと感じているなら、「部署異動」くらいのライトな感覚で転職を検討してみるのも良い選択だと思います。

今回ご紹介したのは10社11名の方の実例です。ここで語られたことがすべての企業に当てはまるわけではありませんし、同じ判断が誰にとっても正解になるわけでもありません。ただ、会社によって求められる動き方も、法務の置かれ方も、これだけ違うということは共通して見えてきました。向いているかどうかを職種の単位で判断する前に、いまの環境の側に理由がないかを確かめてみる価値はありそうです。

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ご相談は無料です。すぐに転職する予定がなくても構いません。いまの環境を続けるべきかどうかを整理したい、他にどのような選択肢があるのかだけ知っておきたい、という段階でのご相談も歓迎しています。

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この記事の監修者

アガルートキャリア

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法務年収580〜1,100

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