外資系インハウスローヤーのリアル、英語・裁量・カルチャー
更新日:2026年9月14日
外資系企業の法務と聞くと、まず英語のことを思い浮かべる方もいるかもしれません。会議はすべて英語なのか、契約書は英文が中心なのか、自分の語学力で通用するのか。加えて、意思決定の進め方もカルチャーも日系企業とは違うと言われれば、興味はあっても踏み出しづらくなります。もちろん会社によって実情はさまざまですが、実際に働いている方の話をまとめて聞く機会は、そう多くありません。
アガルートキャリアジャーナルでは、これまで外資系企業で働く法務の方々に直接お話を伺ってきました。日本IBM、日本HP、Airbnb Japan、Tesla Japan、アクセンチュア。5社9人。役職も、法務部門のトップや取締役から、実務の中心を担う方まで幅があります。経歴も、海外のロースクールや現地事務所での研修を経た方、日系企業の法務部から移った方、コンサルタント職から社内で法務に移った方と、それぞれです。
本記事では、9人のインタビューを「英語」「裁量」「カルチャー」という3つの視点で編み直しました。英語はどこまで求められるのか。どこまで任されるのか。カルチャーは会社によってどう違うのか。外資系という選択肢を考えている方の参考になれば幸いです。
| 企業名 | 取材で語られた法務の特徴 | 登場者 |
|---|---|---|
| 日本アイ・ビー・エム株式会社 | 経営層との距離が近く、1年ごとのローテーションで担当領域が入れ替わる。JILAインハウスリーガルアワードを2年連続受賞 | 大内 麻子 様(弁護士) 田中 聡美 様(弁護士) |
| 株式会社日本HP | 法令遵守とアジリティを両立させる「スマートなリスクテイク」。生産拠点を持つメーカーとしての法務も担う | 野口 京子 様(法務・コンプライアンス本部 本部長/ニューヨーク州弁護士) |
| Airbnb Japan株式会社 | 外資系法律事務所からインハウスへ転じ、取締役として日本法務を統括 | 渡部 友一郎 様(取締役・日本法務本部長/弁護士) |
| Tesla Japan合同会社 | 四大法律事務所、コンサルティングファームを経てインハウスへ。法律事務所との兼務 | 稲井 宏紀 様(弁護士) |
| アクセンチュア株式会社 | 営業法務・労働法務・コントラクトマネジメントに分かれた法務本部。柔軟な勤務制度と複数名担当のチーム設計 | 佐藤 弘太郎 様(営業法務部 シニア・マネージャー) 小口 明子 様(労働法務部 シニア・マネージャー) 伊中 英輔 様(コントラクトマネジメント部 シニア・マネージャー) 田上 愛華 様(コントラクトマネジメント部 シニア・マネージャー) |
※所属・役職等は、それぞれの取材当時のものです。
INDEX
「米国系組織のカルチャーに強く惹かれました」──9人が外資系にたどり着くまで
外資系インハウスというと、帰国子女や海外ロースクール出身者の世界というイメージを持たれるかもしれません。今回の9人にも留学や海外研修を経た方はいますが、それが唯一のルートというわけではありませんでした。まずは、それぞれがどこから来たのかを見ていきます。
日本IBMの田中様は、アメリカ留学と現地事務所での研修を通じて、外資系という選択肢を意識するようになったと振り返ります。
田中 アメリカ留学後、ニューヨークの法律事務所で1年間研修を行った際に、米国系組織のカルチャーに強く惹かれました。現地では上下関係がフラットで、同僚同士が家族やプライベートの話も自然に共有しながら、仕事と生活の両方を大切にしています。
滞在中に参加したイベントで米国IBMの女性エンジニアが登壇し、ブロックチェーン技術を用いた産業のトレーサビリティの活用事例を紹介していました。その発表を聞いて、「ITは今後ますます成長し、法律家として深めるに値する分野だ」と強く実感しました。
同じく日本IBMの大内様は、事務所勤務のなかで海外を経験し、出向をきっかけにインハウスへ進んだ方です。キャリアの節目が、必ずしも自分の計画どおりに訪れたわけではないことが分かります。
大内 5年目にはイギリスの法律事務所での研修を経験し、国際的な案件にも関わる機会を得ました。その後、夫の海外赴任に伴い上海オフィスで勤務し、帰国後は製薬会社に出向したことをきっかけにインハウスローヤーとしてのキャリアを歩み始めました。
日本HPの野口様は、法学部の出身ではありません。経済学部からロースクールへ進み、ニューヨーク州弁護士の資格を取得したという経歴です。
野口 法学部の出身ではないのですが、当時の周囲は公認会計士を目指す優秀な学生ばかりで、あえて別の道を追求したいという、いわばあまのじゃくな気持ちから法律の世界を志すことになったのです。
その後、国内の法科大学院を経て、カリフォルニア大学のロースクールへ進学しました。サンフランシスコのロースクールではカリフォルニア州法を学んでいましたが、当初からニューヨーク州の試験を受けるつもりでした。というのも、私にとってニューヨークは子供の頃に過ごした「心の故郷」のような場所であり、いつかまたその地に関わりたいという強い思いがあったからです。
アクセンチュアのコントラクトマネジメント部(契約締結後の履行管理を担う部署)の伊中様は、政府系金融機関から資格取得を機に転じています。
伊中 前職は政府系の金融機関で海外向けのプロジェクトファイナンスの契約交渉を担当していました。ニューヨーク州の弁護士資格を取得したことをきっかけに、アクセンチュアの法務本部に入社しました。
一方、同じアクセンチュアの田上様は、コンサルタント職として新卒入社し、社内で法務部門へ移った方です。外資系企業の法務が、法律職としての採用だけで構成されているわけではないことが分かります。労働法務部をリードする小口様は、外資系法律事務所から複数のインハウスを経ての入社でした。
小口 労働法務部という、人事労務を専門に取り扱うチームのリードをしている小口です。アクセンチュアには2024年に入社しました。キャリアとしては、外資系法律事務所で6年勤務した後、インハウスに移り、消費財メーカー、製薬企業を経て現職に至ります。
今回の取材では、海外経験から入った方、日系企業の法務や事業部門から移った方、事務所を経て入った方と、入口が一つではないという事例が並びました。
アドバイザーの視点|属性ではなく、求人ごとの要件で決まります
外資系インハウスというと、帰国子女や留学経験者の方に限られる世界だと思われがちですが、実際にご支援していて、そこまで偏った属性の集まりだと感じることはありません。
求められる経験や語学スキルは、求人ごとに異なります。その要件を満たせていれば、特定の属性でなければ通らない、ということは基本的にありません。逆に言えば、「外資系だから自分には縁がない」と全体で判断してしまうと、要件が合っていた求人を見落とすことになります。
気になる企業がある場合は、その求人が何を求めているのかを個別に確認するところから始めていただくのが確実です。
「必ずしもそうではない」──英語はどこまで求められるのか
外資系を検討するときに、最初にぶつかるのが英語の壁です。求人票に「ビジネスレベルの英語力」と書かれていても、それが日々どの程度使われるのかは、外からは分かりません。今回の取材では、この点について踏み込んだ話が聞かれました。
Tesla Japanの稲井様は、アクセンチュアに入社した当時をこう振り返ります。
稲井 外資系企業って「英語バリバリ使ってます」という方でないと難しいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではないと。企業にもよると思うのですが、少なくとも私は全然できませんでした(笑)。できないまま気合で飛び込んだのが正直なところですね。入ってしまえばあとはもう自分次第だから、と自分に発破をかけました。
ただし、飛び込んだ後がすんなりだったわけではありません。稲井様は当時の実感も率直に語っています。
稲井 辛かったですね。日常的に英語を使って業務を行うので厳しかったですが、頑張って読み書きしてなんとか食らいついていました。
それでも稲井様は、その後も英語を使う環境を選び続けています。もともと外資系を中心に検討していたことに加え、それまでの業務で英語を使っていたため、インハウスになった途端に使わなくなるのは寂しいという気持ちもあった、と振り返っています。
語学の苦労は、若手の時期に限った話でもありません。日本IBMの大内様は、若い頃の苦労を振り返るなかで、英語での会議に触れています。いま法務の第一線にいる方の言葉である点に、意味があるように思います。
大内 若手の頃は本当に苦労の連続でした。業務に慣れず、どの方向に進めばいいのか分からない。会議でも発言できず、英語の電話会議では内容を理解することすら難しい時期もありました。でも、そうした試練を乗り越える過程で、確実に力がついていったと感じています。
英語を「使えるようになってから挑む」のではなく、キャリアを組み立てる要素の一つとして扱う考え方もあります。Airbnb Japanの渡部様は、英語を専門性と掛け合わせるものとして捉えていました。
渡部 「自分の持ち味を掛け合わせた時に、どこが一番役に立てるか」を常に意識していました。「弁護士」という大きな括りでは大勢いらっしゃいますが、そこに「IT」や「英語」、さらにもう一つの要素を掛け合わせていくと、自分ならではの貢献ができる場所が見えてきます。
その姿勢は、転職の入口づくりにも表れています。
渡部 例えばDeNAからAirbnbに移る際も、特に予定はなかったものの、LinkedInのプロフィールを英語で丁寧に作り込み、常に最新の状態にしていました。実はAirbnbとのご縁も、リクルーターの方がそのプロフィールを見てメッセージをくださったことが始まりだったんです。
英語の必要度が、担当領域によって変わることもうかがえます。アクセンチュアの小口様は、人事労務の体制について次のように説明しています。
小口 アクセンチュアはグローバルで従業員の人事労務マターを非常に重要視しています。人が財産の会社ですので、従業員がハッピーに過ごせる環境を整えたうえで規律も必要であるという考えから、人事労務に特化したチームを各国に配置しています。
そのため日本だけでなく、例えばアジアでは、フィリピン、オーストラリア、シンガポールなど、グローバルの各拠点で人事労務のみを担当するエキスパートがいます。
今回の取材では、「入社時点で英語に不安があった」という声と、「日常的に英語を使うので厳しかった」という声が、同じ方から語られました。英語が要らないという話ではなく、入る前に完成させておく必要は必ずしもない、という事例が見られたということだと思います。
アドバイザーの視点|英語は「必要になる」前提で考える
記事にあるとおり、入社時点で英語が完成している必要は必ずしもありません。ただ、外資系企業でインハウスローヤーとして働く場合、英語は多かれ少なかれ必要になります。
インタビューを拝見していても、入社時に準備ができていたかどうかを問わず、働き始めれば英語と向き合う必要性は出てくるようです。入社後に伸ばしていく方も実際にいらっしゃいますが、「使わずに済む」という前提で選ばれると、後で苦しくなります。
一方、転職活動の場面では話が変わります。選考では、客観的な試験のスコア、留学経験、実務での使用経験が問われます。現時点で何を提示できるのかは、応募前に整理しておいていただきたい部分です。
「取締役や社長に直接説明や助言を行う」──経営との距離
インハウスの魅力として「経営に近い」と語られることはよくありますが、その距離感は会社によって差があります。今回の取材では、経営層との関わり方について具体的な話が複数聞かれました。
日本IBMの田中様は、入社前に想像していたよりも距離が近かったと話します。
田中 想像していた以上に経営層との距離が近く、難易度の高い課題に日々向き合っていると感じます。これは大きなやりがいに繋がっています。法務部は経営の意思決定プロセスに深く関与しています。日々の業務においても、取締役や社長に直接説明や助言を行う機会が多く、経営層も重要な判断の際には必ず法務の意見を求め、真摯に受け止めてくれます。
田中様は、こうした信頼関係が組織として確立されているために、自身のキャリア年次でも、通常であればシニア層でなければ携われないような経営レベルの案件に関与できているとも話しています。
同じ組織を、大内様は法務部の姿勢という角度から説明しています。
大内 日本IBM法務部では「法務はビジネスのパートナーである」という考えが深く浸透しています。そのため、ビジネス理解を深める取り組みが活発です。
興味深いのは、別の会社の方からも、ほぼ同じ趣旨の言葉が出てくることです。日本HPの野口様は、法務のミッションを二つの柱で説明しています。
野口 私の役割は、日本HPの法令遵守を全うするための「最後の砦」として会社を守ることです。その上で、法務部に求められる最も重要なミッションとして2つの柱を掲げています。1つは当然ながら法令遵守ですが、もう1つ、私が非常に大切にしているのが「アジリティ(迅速さ)」です。
私たちは、ただ法令をチェックするだけの部門ではなく、ビジネスに参加する法務でありたいと考えています。リスクをどう特定し、どのようにそのリスクを取ってビジネスを前に進めるかに注力しています。ですから、私自身も部下も、法令遵守を理由に保守的な立場を優先して、「ノー」と言って仕事を終わらせるようなことはしません。
もっとも、そこに葛藤がないわけではありません。
野口 そこは日々悩み、模索している部分でもあります。法令遵守を極めて保守的に捉えれば安全性は高まりますが、それではスピード、つまりアジリティが失われてしまいます。一方で、アジリティを追求しすぎれば、今度は「本当に法令遵守は100パーセント大丈夫か」という不安が生じます。
アクセンチュアの佐藤様も、入社前後のギャップとして、法務がビジネスの側に立っていることを挙げています。
佐藤 入社前はクライアント向けに最新のテクノロジーを扱っていることを認識していたくらいでしたが、実際に中に入ってみると、法務もビジネスと一体となって新たな取り組みや案件を推進・リードしているという部分が想像以上でした。また、国内外問わず1つのプロジェクトに巻き込む人数の多さなど、規模感の大きさにも驚かされました。
「ビジネスのパートナー」「ビジネスに参加する法務」「ビジネスと一体となって」。別々の会社の方が、それぞれの言葉で近いことを語っていたのが、今回の取材で目立った点です。
アドバイザーの視点|経営との距離は、インハウスならではの部分
経営陣と社内でコミュニケーションを取りながら進めていく仕事は、クライアントワークでは体験しづらいものです。ここはインハウスならではの部分だと思います。
ポジションによっては、法的な観点だけでなく、経営全体を俯瞰した視点が求められることもあります。求められる役割の幅は、同じ法務職でも一様ではありません。
経営に近いキャリアを志向される方にとっては、良い機会がある領域です。ご関心があれば、どのポジションでそうした関与が期待されているのか、一度整理してお話しできます。
「この仕事は君が一人で担当してよ」──任される範囲と、その裏側
経営との距離とは別に、日々の案件をどこまで一人で担うのかという話があります。ここは「裁量が大きい」の一言で片づけられがちですが、今回の取材ではその中身と、それに伴う重さの両方が語られました。
Tesla Japanの稲井様は、事務所とインハウスの違いを、レビューの有無という観点から説明しています。
稲井 インハウスの方が、一人で一つの案件を担当させてもらえるケースがかなり多いとは感じました。やはり大規模な法律事務所だとパートナーがいて、シニアアソシエイトがいて、ジュニアアソシエイトがいて、と階層式になっていて複数人で案件を担当します。成果物が出る前にパートナーが見ることが多いので自分の仕事を誰かがレビューしてくれる状態になるわけですが、インハウスでは「この仕事は君が一人で担当してよ」という状況も多くなると思います。
これは大きなプレッシャーがあります。事業側と直接一人で会議をして、そこで私が「いいよ」と言えばそのまま会社の方向性が決まってしまうわけですからね。これでいいのかと悩むことも珍しくありません。
やりがいとプレッシャーは切り離せないものだといいます。
稲井 表裏一体だと思っています。自分でコントロールできるところの喜びというか、エキサイティングな部分もありながら、自分で決めたことなので最後は自分で責任を取るんだ、というところのプレッシャーと、両面合わせ持っていますね。
裁量は、案件の担当だけでなく、仕事の進め方そのものに及ぶこともあります。アクセンチュアの田上様は、コントラクトマネジメントの仕事についてこう話しています。
田上 いい意味で「決まった型」がないんですよね。ベストプラクティスはありますが、それをどう現場に適用するかはメンバーの裁量と力量にかかってきます。現場にどのように働きかけ、何を課題として見つけ、自分なりのアプローチでどう解決するか。仕事を自分でコーディネートしていく面白みがありますし、そういう力がつけられる環境があります。
今回の取材では、任される範囲の広さを語る言葉と、そこに伴う責任の重さを語る言葉が、同じ方から続けて出てきました。裁量の大きさを検討材料にするのであれば、この両面をセットで見ておく必要がありそうです。
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「月に一度も来ないこともあります」──働き方は同じ外資系でも違う
外資系は働き方が柔軟、というイメージもよく聞かれます。ただ、今回の5社を並べてみると、その中身はかなり違っていました。
アクセンチュアの小口様は、都外に居住しながら勤務しています。
小口 私は会社から承認を得て都外で働いています。オフィスに来るのは必要な時だけで、月に一度も来ないこともあります。
出社が難しい家庭の事情などがあり、かつ業務でもパフォーマンスを発揮していれば、こうした柔軟な働き方も認められる枠組みがあります。
同社の田上様も、制度を使って在宅を中心とした働き方をしています。
田上 「ロケーション・フレキシビリティ」という制度が導入されています。例外承認を受けることで自宅からの勤務が認められております。ちょうど私がその制度を活用しており、普段は自宅で勤務し、ちょっとしたことであればチャットでやり取りをしています。
一方、同じアクセンチュアの伊中様は出社派で、それも許容されているといいます。制度が一つの働き方を強制するものではないことがうかがえます。
伊中 私は出社するのが好きなので、出社できる時には出社しています。どんな形であれ、それぞれの環境できちんとアウトプットを出してくれることが重要と思っています。
これに対して、日本IBMの大内様が語る働き方は、また少し様子が違います。
大内 現在は、特に一般法務のメンバーは、週に数日、曜日を合わせて出社しており、対面でのコミュニケーションも大切にしています。対面でのやり取りはやはり相談がしやすく、チームの一体感も高まります。状況に応じて柔軟に働き方を進化させていく点にも、日本IBMらしい適応力を感じます。
「月に一度も来ないこともある」会社と、「曜日を合わせて出社する」会社が、どちらも外資系として並びます。柔軟さの方向が、リモートに寄っているのか、対面の質に寄っているのかは、会社によって異なるということだと思います。
もう一点、今回の取材で複数の会社から聞かれたのが、柔軟な働き方を支えるチーム設計の話です。制度だけでは休みは取りにくく、案件を複数名で持つ体制があってはじめて機能する、という趣旨の説明がありました。
佐藤 案件一つひとつにスピード感があるので忙しい印象を持たれるかもしれません。ただ、営業法務部では1つのプロジェクトに複数名で担当する体制をとっているため、誰かが休暇を取っても他のメンバーがバックアップでき、1人で業務を抱え込むことがないようにしています。また、将来の案件の見込み管理も日々行っており、負荷に偏りが出ないよう前もってアサインを工夫しています。
アドバイザーの視点|柔軟さを決めているのは、外資かどうかではありません
外資系は比較的、柔軟性のある働き方ができる傾向にはあります。この点は、実際にご支援していても感じるところです。
ただし、あくまでケースバイケースです。外資系かどうかよりも、業界や事業規模、事業のフェーズといった要素のほうが、働き方への影響は大きいというのが実感です。同じ外資系でも、伸ばしている事業を抱えている時期とそうでない時期とでは、当然様子が変わります。
働き方を重視して検討される場合は、外資系という括りで絞るよりも、その会社が今どういう状況にあるのかを見ていただくほうが、実態に近づけると思います。
「会社のカルチャーにかなり引っ張られる」──外資系だから、ではない
ここまで見てきた英語、裁量、働き方は、いずれも会社によって幅がありました。では、その違いはどこから来るのか。アクセンチュアとTesla Japanという2社の外資系を経験した稲井様の言葉が、今回の取材の中では最も端的でした。
稲井 会社のカルチャーにかなり引っ張られるかなと思いますね。会社の目指す方向性やアグレッシブさによって、法務のあり方やアドバイスの仕方がかなり変わります。これは外資か国内かは関係なく、会社によって違う部分です。
実際、各社が語るカルチャーは、それぞれ異なる言葉で表現されていました。日本IBMの田中様は、会社全体に根づいた考え方を挙げています。
田中 IBMの法務部は、常に「どうすればより良くできるか」を考え続ける組織です。前年よりも自分がどのように成長したか、どのように価値を提供できるようになったかが重視されます。これは法務部に限らず、会社全体に根付いている「Growth Mindset(成長志向)」という文化によるものです。
技術の進化に合わせて常に学び続ける姿勢が求められており、研修機会も非常に豊富です。昼休みに技術系メンバーによるオンライン講座が開かれたり、「学びウィーク」という集中学習期間が設けられたりと、継続的に成長できる環境が整っています。
同社の大内様は、それが法務としての判断のしやすさにつながっていると話します。
大内 法務部としても、どこまでリスクを取るべきか、どのように意思決定をすべきかという判断において、組織全体のビジョンが明確であることは非常に重要です。IBMで働くようになってから、自分の判断により確信を持てるようになりましたし、リーダーからの明確な方向性が法務としての自律性と成長を支える基盤になっていると感じています。
Airbnb Japanの渡部様が語ったのは、外資系法律事務所を選んだときの感覚です。制度や条件ではなく、その場の空気で決めたという話でした。
渡部 一番の理由は、その場の空気感が私自身の肌に合っていた、ということかもしれません。弁護士の皆さんが個室で集中して執務をされつつも、一歩部屋を出れば非常に和やかに、笑顔でコミュニケーションを取られている姿がとても印象的でした。
その渡部様は、インハウスに移ってから、肩書きの扱い方を変えたとも話しています。カルチャーになじむというのは、環境に合わせて自分の振る舞いを変えることでもあるようです。
渡部 これはお恥ずかしい話なのですが……入社したばかりの頃、社内を回る際に「弁護士の渡部です」と自己紹介していた時期があったんです。皆さん、「え、先生なんですか?」と少し距離を置かれてしまうような空気を感じました。でも、現場が求めているのは「先生」ではなく、同じ船に乗って一緒に汗をかいてくれる「仲間」なんですよね。
今回うかがった5社を並べてみると、「外資系だから英語漬け」「外資系だから自由」といったイメージだけでは捉えきれない側面が見えてきます。英語の使い方も、任される範囲も、出社の頻度も、会社ごとに違っていました。稲井様の言うとおり、その差を生んでいるのは外資か国内かという区分ではなく、その会社が何を大事にしているかなのかもしれません。
なお、ここで語られたのは5社9人の実例であり、外資系企業のすべてが同じ姿をしているわけではありません。関心を持たれた会社があれば、それぞれの記事で、より詳しいお話をご覧いただけます。
外資系の法務キャリアを考えている方へ
アガルートキャリアは、弁護士・法務・管理部門に特化した転職エージェントです。
外資系企業のインハウスポジションについても、公開されていない求人を含めてご紹介できる場合があります。法務組織の規模や、日本法人にどこまで判断が委ねられているかといった点は、求人票からは読み取りにくい部分です。
ご相談は、弁護士・法務のキャリアを専門に扱うアドバイザーが担当します。本記事のように、各社の法務トップや現場の方に直接お話を伺っていることが、ご提案の精度につながっていると考えています。組織の雰囲気や、実際にどのような方が活躍されているかといった、数字に表れない部分もお伝えできます。
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この記事の監修者
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